いまや「AIを導入しなきゃ」と焦る声があちこちから聞こえます。
でも実際の現場で本当に役立つのは、もっと小さくて地に足のついたDX化かもしれません。
そこで今回は、TrueNASのAppsからわずか5分でインストールできるオープンソース自動化ツール n8n を試してみました。
本来は月額20ユーロ(約3,500円)以上かかるPro機能が、セルフホストだと無料で使えるのです。
そして実際に作ったのが、美容室やサロンでおなじみの 「Happy Birthdayメール」自動送信フロー。
ちょっとした工夫で、これだけでも立派なCRMの入口になります。
n8nとは?そしてTrueNASで動かす意味
n8n(エヌ・エイト・エヌ)は、ドイツ発のオープンソース自動化ツールです。
一言でいえば 「ZapierやIFTTTのセルフホスト版」。
プログラミングが分からなくても、
- 「このデータを取り込んで」
- 「条件が合えばメールを送って」
といった流れを ノードをつなぐだけで作れる のが特徴です。
外部サービスとの接続はとても豊富で、GoogleやMicrosoftはもちろん、Slack、GitHub、Stripeなどの有名どころはほぼカバー。
さらにWeb APIを直接呼び出せるので、拡張性は無限大です。
本来は有料(20ユーロ/月〜)
n8n の公式クラウド版を使うと 最低20ユーロ/月(約3,500円) ※2025年9月1日現在 が必要です。
「Zapierの安い代替」とはいえ、ビジネスで使えば月額課金は避けられません。
ところが──。
自分でインストールすれば無料でPro機能が解放されます。
ただし「自分で入れる」のはハードル高め
DockerやNode.jsを自分で環境構築するとなると、どうしても玄人向け。
「無料だからやってみよう!」と誰でも飛びつけるものではありません。
TrueNASなら5分でスタート
ここで光るのがTrueNASのApps Charts。
画面からn8nを選んで数クリックするだけで、5分後にはブラウザでn8nが立ち上がります。
「自分で入れたらタダ、でも大変。TrueNASなら一瞬」──この差は大きいです。
もし、あなたがアプリ追加に対応するSynologyやQNAPのような専用NAS機器を運用中なら、そこから n8n が見つかるかも知れません。ご興味があれば探してみて下さい。
コストは電気代くらい
「無料」とはいえ、サーバーを回す電気代くらいは必要です。
TrueNASを動かすサーバーとなると、結構電気代も掛かりますからね。
最近のCPUは、スタンバイ時の電力がデスクトップ版でも5Wくらいと信じられないくらい省消費電力になってますし、ノートPCに入れればもっと電気を節約できますね。
n8n をローカルで本格運用するなら、NAS本来の機能は封印して、 n8n の運用基盤と割り切ってしまうのもアリだと感じています。おそらく、月数百円の世界で収まるでしょう。
次章では、実際にn8nを使って「Happy Birthdayメール」を自動で送るワークフローを組んでいきます。
n8nの料金プラン比較
| プラン | 提供形態 | 月額料金 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
| Free (クラウド) | n8n公式クラウド | 無料(ただし制限あり) | ワークフロー数制限、実行数制限、チーム利用不可 |
| Pro (クラウド) | n8n公式クラウド | 20ユーロ/月〜(約3,500円〜) | 無制限ワークフロー、拡張ノード、チームコラボ、優先サポート |
| Self-host (コミュニティ版) | 自分でサーバーにインストール | 無料(電気代程度) | Pro相当の機能がほぼすべて解放。制約なしで使える |
ポイント
- クラウドでProを契約すれば3,500円/月〜かかる
- でも自分で立てれば無料
- TrueNASのApps経由なら5分で環境が用意できる
n8nで何ができる?―実演「Happy Birthdayメール」
n8nは「ワークフローオートメーションツール」と説明されても、まだピンと来ない方も多いでしょう。
そこで実際に、誰もがイメージしやすいユースケースで試してみました。
それが、美容室やエステ、ショップなどでよく送られてくる 「Happy Birthdayメール」。
誕生日の顧客に自動でメールを送る仕組みを、n8nで構築してみます。

顧客リストをデータ化する
まず必要なのは「誰がいつ誕生日か」を分かるリストです。
ここでは単純に、CSVファイルをFTPに置いて読み込む形にしました。
例: client.csv
name,email,birthday,last_sent
山田太郎,taro@example.com,1975-09-01,2024-09-01
佐藤花子,hanako@example.com,1980-11-20,
birthday: 誕生日(年は適当でもOK)last_sent: 最後にお祝いメールを送った日
ワークフローの全体像
今回作ったフローはこの通りです。

- Schedule Trigger
毎日9時に実行。 - FTP (Download)
client.csvを取得。 - Spreadsheet File (Extract)
CSVを1行ごとのJSONデータに変換。 - IFノード
- 今日が誕生日かどうか
- かつ
last_sentが今日ではないか
- Send Email
条件を満たす顧客にメールを送信。
条件分岐のポイント
n8nのIFノードに少し工夫を加えました。
CSVから読み込んだ日付は文字列なので、比較前に trim() や formatDate() を使って正規化しています。
例:
{{ formatDate(new Date((($json.birthday || '') + '').trim()), 'MM-dd') }}
で誕生日の月日を抽出し、今日の日付と比較。
この工夫を入れることで、CSVの書式ゆらぎに強いフローになります。
実際に届いたメール
テスト用に taro@example.com を今日の日付に設定したところ、
見事に 「Happy Birthdayメール」 が受信できました。
件名例:
山田太郎 様、お誕生日おめでとうございます!
本文例:
山田太郎 様
お誕生日おめでとうございます!
このメールご提示でバースデー割引を適用いたします。
このように、ほんの数ノードを組み合わせるだけで「実際に役立つ仕組み」をNASの中で回せます。
次章では、このワークフローの改善ポイントや「CRM的な使い方」について掘り下げます。
発展編:簡易CRMとしての可能性
今回の検証では、顧客リストをCSVで管理し、Happy Birthdayメールを自動送信する仕組みを再現しました。
ただ、このままでは「送信した/していない」の記録が手作業のままです。
そこで、少し工夫することで「簡易CRM」としても十分役立つ形にできます。
last_sent を自動で更新する
n8nには「データを書き換えて再保存する」ノードも用意されています。
たとえばメールを送った直後に、対象行の last_sent を今日の日付で上書きすれば、翌年まで二重送信を防げます。
イメージフロー:
FTP (Download) → Extract (CSV→JSON) → Function (last_sent更新)
→ Spreadsheet (JSON→CSV) → FTP (Upload 上書き)
この手順を加えるだけで「毎年ちゃんと誕生日にメールが届く」立派なCRMの入口になります。
バックアップやID列で信頼性を高める
さらに実運用を考えると、
- 上書き保存前に自動バックアップを取る
- 顧客ごとにID列を追加して一意に管理する
といった工夫を加えると安心です。
Beauty業界との親和性
美容室やエステなど、カルテや会員カードがすでにデジタル化されている業種では「誕生日メール」はほぼ必須の販促メソッド。
n8nなら、この定番施策を大掛かりなCRMシステムを導入せずとも再現できます。
「Excelに顧客リストがある」程度でも十分スタート可能。
“普通の人にも役立つDX化” の好例といえるでしょう。
実運用コスト
ここまでやっても「ソフトは無料」。
必要なのはサーバーを回す電気代くらいです。
「高額なCRMをクラウドで借りる」よりずっと現実的な選択肢になります。
次章では、この検証全体を振り返りながら、TrueNAS × n8n の組み合わせがどんな可能性を開くのかをまとめます。
TrueNASでのインストール手順:5分でn8nを起動
5分でインストール完了とは言っても、その前提は手元にTrueNASサーバーが動いていることです。まだの方はこちらの記事を参考にしながら、がんばってみて下さい。
では、簡単に n8n のインストール方法を解説しておきます。
n8n を TrueNAS にインストールする
[ Apps ] – [ Avaiable Applications ] で、”n8n“と検索してください。

この画面の通り、表示されたら”インストール”を押すだけです。

インストールを押すと、設定画面が出てきますが、テストならすべてデフォルトで問題ないでしょう。

しばらくすると、[ Installed Applications ] に表示されるようになります。
”ACTIVATE”が付いていたら、n8n はもう稼働しています。
[ Web Portal ] から管理画面に入ってみましょう。

n8n のアカウント作成画面が開きますので、順に進めて下さい。
アンケートらしきにいくつか回答していくと、フリーライセンスキー取得画面に。

ここで、メールアドレスを登録すれば、Pro版相当の機能が永遠に付与される模様です。

メールで届いたライセンスキーはアクティベートして、大切に保管しておきましょう。

登録が完了すれば、めでたくダッシュボード画面とご対面です!
まとめ:TrueNAS × n8n が切り拓く“小さなDX”
今回、TrueNASのAppsから n8n を立ち上げて、Happy Birthdayメールを自動送信するワークフローを実際に作ってみました。
- 本来は有料(20ユーロ/月〜)のPro機能が無料で使えた
- 顧客リスト(CSV)から誕生日判定 → メール送信がわずか数ノードで実現できた
- 少しの工夫で「送信履歴を残す簡易CRM」にも発展可能
結果として、「Zapier風の自動化がNASの中でタダで回せる」という強力な体験が得られました。
誰に役立つか?
- 顧客リストがすでにExcelやCSVで存在している小規模店舗
- クラウドCRMを導入するにはコストが合わないけれど、ちょっとした自動化をしたい人
こうした場面で、TrueNAS + n8n は「普通の人にも役立つDX化」の強い味方になります。
AI時代にこそ“小さなDX”を
いま世の中はAIブームで、「AIを活用できないと取り残されるのでは」と焦りを感じている人も多いはずです。
でも実際には、AI以前にこうした 小さなDX化 を積み重ねることが、自分のビジネスを見直す一番の近道になります。
「大掛かりなシステム投資やAI導入はまだ難しい…」という方も、まずは お誕生日メールを自動化するところから 始めてみてはいかがでしょうか。
もし「これ、自分のお店でも使いたい」と思った方は、構築のお手伝いもできます。
(ちょっとクセのあるツールなので、誰でもすぐ再現できるとは限りません)
参考リンク



