フロントエンド戦記2025 ─ React覇権と三極構造の終焉

フロントエンド戦記2025 ─ React覇権と三極構造の終焉 TECH

序章:静かなる宣戦布告(2013)

React 静かなる宣戦布告

2013年、Facebookの開発部門でひとつの小さなライブラリが誕生した。
それは、世界のどの技術者もまだ知らない、
“UIを状態の関数として表現する”という異端の思想だった。

この瞬間、Web開発は宗教戦争の幕を開けたのである。


当時のWebは、jQueryの黄金期。
DOMを操作し、イベントを束ね、ページを書き換える。
それがフロントエンド開発の常識だった。
そこへ現れたReactは、まるで数学者が建築現場に現れたような違和感を放った。

「UI = f(state)」

その等式は、美しいが冷徹だった。
変化する世界をDOMで制御しようとしてきたエンジニアにとって、
Reactは“神を否定する哲学”のように映った。


Reactを世に放った男、Jordan Walke
彼はiOS版Facebookのパフォーマンスに苦しみ、
“UIの更新を手で管理する”という徒労に限界を感じていた。
そして彼が見出した答えが、
宣言的UI──「状態を宣言すれば、描画は勝手に整う」という思想。

この単純な発想が、10年後のWebの地形を根こそぎ塗り替えるとは、
当時の誰も予想していなかった。


Facebook内部で生まれたReactは、
まず社内SNSや広告管理ツールに静かに浸透していった。
Imperative(命令的)からDeclarative(宣言的)へ。
それはプログラミング史上でもっとも深いパラダイム転換の一つだった。

しかし、この思想は同時に敵を生む。
特に、Google帝国が誇るAngularJS──
双方向データバインディングを旗印にしていたその巨大フレームワークにとって、
Reactの登場は“存在理由の否定”に等しかった。

「我々のやり方は古いのか?」
「宣言的とは、怠惰の別名ではないか?」

Angular陣営に走った衝撃は、
やがて「フレームワーク戦争」と呼ばれる技術の覇権争いへと発展する。


Reactは宗教のように信者を増やしていった。
GitHubにリポジトリが公開された日、
そのコードは一夜にして世界中の開発者にforkされた。
「JSXは醜い」と嘲笑した者も、気づけばその構文を真似ていた。

Reactは思想だった。
そして思想は、いつの時代も戦争を呼ぶ。

覇権の胎動 ─ Angular王国の動揺

覇権の胎動 ─ Angular王国の動揺

2014年、Googleの砦で異変が起きた。
長らくフロントエンドの王座に君臨していた AngularJS王国 が、内部から崩れ始めていたのだ。

“万能”を謳った双方向バインディング。
HTMLにディレクティブを注入し、DOMを自在に操る魔法。
だが、魔法には代償があった。
データとUIの同期が複雑に絡み合い、やがて王国のコードベースは スパゲッティの塔 と化した。

その隙を突くように、北方のMeta帝国から届いたのが──Reactの宣戦布告である。

「UIは命令ではなく、状態の投影である。」

この一文が、Angular王国を震撼させた。


● 動揺する帝国

Googleの技術将校たちは混乱していた。
Reactは、たった数千行のコードで動く。
一方のAngularJSは、まるで中世の律令国家のように複雑だった。

「これほど小さな兵器で、どうしてあれほどの破壊力があるのか?」
Reactが掲げたVirtual DOM(仮想DOM)は、まさに「幻影の軍団」だった。
実DOMを直接攻撃せず、仮想層で計算してから最小限の更新だけを行う。
その戦略は、物量ではなく 知性による勝利 を意味していた。

AngularJSの将たちは焦り、再編を決断する。
「このままでは旧式兵器に成り下がる」──そうして生まれたのが、Angular 2.0


● 内部崩壊

しかし、再構築の決断は王国を二分した。
Angular 2はまったく別の設計思想を採用し、
既存のAngularJSコードとの互換性を切り捨てた。

旧信徒たちは絶望した。
長年の努力と資産を投げ捨てる改革に、離反者が続出。
彼らの一部は、新天地を求めて北へ──React陣営へと亡命していった。

「あれは軽い、だが速い」
「Angularはもはや神殿ではなく、迷宮だ」

こうしてReactは、思想戦から亡命受け入れ戦略へと舵を切る。
オープンソースという旗印の下に、自由を求める開発者たちが集まった。
Metaは彼らに“Facebook流の効率”を、
Reactは“宣言的UIという信仰”を与えた。


● Googleの報復

一方、Googleも黙ってはいなかった。
Angular 2では TypeScript を採用。
Microsoftとの同盟によって、型安全と大規模開発への対応を強化した。

さらに、Googleは長期戦略として「Web Components」という兵器を開発。
HTMLそのものにカスタム要素を埋め込むことで、
“ReactもAngularもいらない世界”を目指し始めた。

この動きは後に「標準主義(Standardism)」と呼ばれ、
フレームワーク覇権の外側からすべてを支配する、地殻帝国の構想の始まりだった。


● 戦場の様相

2015年のWebは、まるで冷戦のようだった。

  • Meta陣営:React(宣言的UIの理想)
  • Google陣営:Angular(構造化された官僚制)
  • Microsoft陣営:TypeScript(共通言語化政策)

三者が異なる哲学を掲げ、
フロントエンドは宗教戦争の様相を呈していく。

だが、この混沌の中に、ひとつの影が忍び寄っていた。
それはまだ無名の小国──Zeit(後のVercel)
彼らはReactを利用しながら、
その哲学を裏切る新たな兵器を開発していた。

次章、
第2章:Next.js商会の誕生 ─ 交易都市の興隆

フロントエンドを“思想”から“商品”へ変える、
静かな商業国家の登場です。

第2章:Next.js商会の誕生 ─ 交易都市の興隆

Next.js商会の誕生 ─ 交易都市の興隆

Web戦国の世。
思想で人々を導くMeta帝国と、標準で世界を縛るGoogle連邦。
そのどちらにも属さず、ただ“利益”を求めて動く者たちが現れた。

彼らの名は──Zeit
やがて世界は、その名を Vercel として知ることになる。


● 商人国家の誕生

2016年。
北欧の片隅で、若き開発者 Guillermo Rauch がひとつの構想を立ち上げた。
「Reactを使ってSSR(Server Side Rendering)を誰でも簡単に。」

Metaが唱えたReactは、クライアントサイドの純粋主義に立脚していた。
ブラウザ上ですべてを描画し、状態変化を再レンダリングする。
その哲学は美しいが、遅い
SEOにも不向きで、ビジネスの速度に合わなかった。

Rauchはそこに商機を見た。

「思想は美しい。しかし、商売は速さを求める。」

こうして誕生したのが、Next.js
Reactの聖典を手にしながら、その教義をひねり潰した、最初の“異端書”だった。


● 「SSRという逆流」

Next.jsは、Reactが否定してきた SSR(Server Side Rendering) を正面から再評価した。
ページを最初にサーバーで描画し、ブラウザに完成したHTMLを渡す──
それはかつて“古代の手法”と蔑まれたやり方だ。

だが、Next.jsはそれを近代化した。

  • ページ単位で静的 or 動的を選択できる柔軟性
  • URLに応じた自動ルーティング
  • そして、Reactの宣言的構文を崩さずSSRできる設計

結果として、Next.jsは“Reactの利便性を保ったまま、商用に耐える実用性”を得た。
言うなれば、宗教的なReactを、商業に堕としたアルケミスト(錬金術師) である。


● ZeitからVercelへ──黒衣の商会化

ZeitはNext.jsの成功を皮切りに、
ホスティングサービス、CDN、デプロイパイプラインを次々に掌握していった。
2020年、社名を Vercel に改め、
その本拠を“クラウドとEdgeの十字路”に築く。

彼らの理想は単純明快だった。

「開発者が vercel deploy と叩くだけで、世界中のEdgeに配備される」

もはやVercelは単なるホスティング企業ではなかった。
Reactを中核に据えたフロントエンド帝国の物流網 である。
VercelはMetaが築いた宗教(React)を、
クラウド商流という“経済圏”の中に組み込んでいった。


● React教団の動揺

Meta帝国は当初、Next.jsを「友軍」と見なしていた。
同じReact陣営の民であり、普及を促進する協力者。
だが、やがて気づく。

Next.jsが広がるほどに、Reactは“Vercelの部品”と化していく。
開発者たちはReactを学ぶのではなく、Next.jsを学び始めた。
そしてその思想の中心には、
「サーバーが真実を描き、クライアントは飾りに過ぎない」という
Metaの理念とは真逆の哲学が息づいていた。


● 「Reactの魂を売った商会」

Reactの魂を売った Vercel商会

Meta内部では、ある種の危機感が生まれていた。
Reactはオープンソースとして成功した。
しかし、それは“自由すぎる成功”でもあった。

思想を説く者は布教に時間がかかる。
だが商人は、成果を数値で示せる。
Vercelは圧倒的な開発体験(DX)で市場を制し、
Reactの理念を飲み込みながら、独自の経済圏を築いた。

やがて、世界の多くのReactプロジェクトはVercelの支配下に置かれた。
Metaが理念で築いた帝国は、
VercelのEdgeネットワークという鎖に繋がれたのである。


● 技術から商業へのパラダイム転換

この時期、フロントエンドの力学は根本から変わった。

  • React:思想(Declarative UI)
  • Angular:構造(Framework / Architecture)
  • Next.js:経済(Product / Hosting)

フロントエンドはもはや“ライブラリ”ではなく、産業になった。
そしてMetaが気づいた時には、
Reactの繁栄はすでに Vercel経済圏の一部 になっていたのだ。


● 不穏な予兆

だが、商業国家にも影があった。
Vercelの成長は、Reactの宿命を歪めていく。
“状態がUIを定義する”という純粋な理念は、
“サーバーが真実を描く”という合理主義に上書きされた。

この歪みの果てに現れるのが、RSC(React Server Components)
Reactの根幹を再設計する、この新兵器の登場こそが、
次なる思想戦の火種となる。

第3章:RSC戦役 ─ React哲学をめぐる聖戦

Reactにとって「宣言的UI」という教義は絶対だった。
UIとは状態の鏡であり、命令ではない。
DOMを手で操作するのは罪、
サーバーが描画を決めるのは異端。

――少なくとも、かつてはそう信じられていた。

だが2021年、Metaはその禁忌に手を伸ばした。
React Server Components(RSC)──
Reactが自らの哲学を問い直した、
最も危険な自己実験である。


● “純粋関数”に宿る矛盾

Reactは本来、クライアントで状態を管理する純粋関数の集まりだった。
しかしアプリケーションが巨大化し、ネットワーク遅延が増大する中で、
「すべてをクライアントに押し込む」思想は限界を迎える。

Reactチームは苦悩した。
CSRの美学と、現実的なパフォーマンス要求――
この二つを両立するために、
彼らが選んだのは“敵の技術を取り込む”という禁断の道だった。

「サーバーに処理を戻そう。
だが、我々の哲学は守る。」

こうして誕生したのがRSC。
表向きはSSRの進化形、
実際には「Reactを内部から再構築するためのリファクタリング兵器」だった。


● “二重の世界”を作る構造

RSCの構造は、異様に美しい。
コンポーネントを二種類に分ける。

  • Server Components:サーバー上でデータを取得し、UI断片を生成。
  • Client Components:ブラウザで動作し、インタラクションを担う。

サーバーはUIの“断片”をJSONストリームで送信し、
クライアントはそれを再構成して描画する。
結果、ページはまるでSSRのように速く、
Reactの再利用性も維持される。

だが――その構造は同時に、
「UIを状態の関数とする」というReactの最初の教義を破壊するものであった。

状態はもはや、クライアントだけに存在しない。
UIは、ネットワークをまたいで分割された。


● Vercelの介入

この新兵器に最初に飛びついたのが、
かつての“交易国家”Vercelだった。

彼らはReactチームよりも早く、
RSCをNext.jsに組み込み、
“App Router”として公開した。

世界中の開発者はRSCを「Next.jsの新機能」として受け入れた。
Metaが構想した哲学的改革は、
商業国家のパッチワークとして市場に拡散した。

それはまるで、核兵器の設計図を奪われた科学者のようだった。


● React内部の亀裂

RSCの思想は、Reactチームの内部にも亀裂を生んだ。

  • 「これはReactを救う再構築だ」と主張する派。
  • 「RSCはReactの純粋性を汚す」と嘆く派。

RSCはUIをサーバーに委ねるため、
フロントエンドの“主権”を部分的に放棄する。
それは、Reactが最も嫌った「外部依存」そのものだった。

結果、世界中のReact開発者は混乱した。

「これはもうReactなのか?」
「Next.jsなしでは動かないのか?」

宗教戦争は再び燃え上がった。


● Metaの反撃:React Compiler

2024年、Metaは反撃に出る。
React Compiler(コードネーム “React Forget”)
これは、開発者が明示的にメモ化せずとも、
自動的に依存関係を解析して最適化する“知能型コンパイラ”だった。

Metaはこれをもって、こう宣言する。

「我々はRSCを“Vercel依存の機能”ではなく、
React本体の一部として取り戻す。」

つまり、RSCを奪還し、
Next.js以外の環境でも動作可能にする“解放戦線”の始まりである。

この動きによって、Reactは再び独立を目指し始めた。


● 「思想の防衛線」としてのRSC

RSCは、Reactにとって単なる技術仕様ではない。
それは“自由主義”と“商業主義”のせめぎ合いだった。

Metaは哲学を守るためにRSCを設計し、
Vercelは市場を支配するためにRSCを利用した。
同じ技術を巡って、目的が正反対。

Reactはこの二重性の中で、
もはや単なるフレームワークではなく、
思想の象徴となった。


● Linux Foundationへの亡命

この戦役の果てに、Metaはついに決断する。
2025年──
ReactとReact NativeをLinux Foundation傘下のReact Foundationへ移管。

それは、Vercelからの独立宣言であり、
Google標準主義からの距離確保でもあった。

Metaは思想を守るために、
商業と標準の両帝国から距離を取った。
Reactは再び“中立地帯”に帰還したのである。


● 戦後の風景

RSC戦争のあと、世界は静かになった。
Next.jsは依然として市場を支配している。
Angularは官僚的な城塞を維持している。
だが、Reactはそのどちらにも属さない。

React Foundationは、
「思想を守るための避難所」として存在している。

そしてMetaは、
その青い炎を絶やさぬよう、
Linux Foundationという堅牢な城壁の中で、
再びUIの未来を描き始めた。

第4章:Linux Foundation布告 ─ 中立の旗の下で

2025年10月。
Metaは静かに、しかし確固たる意志をもって世界に布告した。

「ReactとReact Nativeを、Linux Foundationの傘下に移管する」

このニュースは、Web業界を震撼させた。
フロントエンド界隈で最も影響力を持つ技術が、
いまや一企業の私物ではなく、“国際的共同体の資産”へと変わろうとしていたのだ。


● 「国家」ではなく、「連邦」

Metaが選んだのは、OpenJSではなかった。
それはGoogleの影響が強すぎたからだ。
Reactはあくまで中立の象徴でありたい。

だからMetaは、より広い傘を持つLinux Foundationへと亡命した。
ここは、Kubernetesも、Nodeも、TensorFlowすらも庇護を受ける巨大な国際連邦。
思想も企業も超えて、ただ「テクノロジーを持続させる」ことを目的とする、
静かなる守護国家である。


● React Foundationの設計思想

Linux Foundationの中に新設された React Foundation は、
Metaが作り出した思想を守るための“制度的要塞”だった。

その構造は二重。

  1. 理事会(Board):Meta、Microsoft、Amazon、Vercel、Expo、Callstack、Software Mansion。
     → 財務・法務・商標・運営。金と政治の領域。
  2. 技術委員会(TSC):React Core Team(Meta中心)+OSS貢献者。
     → リリース、仕様、哲学の管理。コードと思想の領域。

理事会は資金を、TSCは魂を握る。
この分離こそが、Metaが求めた“中立化の保証装置”であった。


● 「敵を排除せず、檻に閉じ込める」

理事会には、あのVercelの名もあった。
かつてReactの魂を商業に売った“黒衣の商会”。
なぜ敵を追放しなかったのか?

理由は単純だ。
排除は敵意を増やす。だが、参加は拘束になる。

Linux Foundationという檻の中に、
MetaはVercelを「正式な関係者」として閉じ込めた。
法的に、財務的に、Reactの意思決定構造に縛り付けたのである。

それはまるで、戦場から敵将を捕らえ、
自国の宮廷に列席させるような政治的妙手だった。


● Google不在の理由

React Foundationの創設メンバーに、
もう一つ欠けていた名がある――Googleだ。

Webの支配者でありながら、Googleはこの理事会に姿を見せなかった。
それは、標準という“地殻”を支配する帝国が、
わざわざ一企業の哲学戦争に加担する理由がなかったからである。

GoogleはすでにWeb Components、V8、TypeScriptを通して
Webの下層を握っている。
Reactがどこで戦おうと、その地面はすでにGoogle製だ。

だから、React Foundationの布告は、
Metaが地殻の支配者に挑むための外交宣言でもあった。


● 「旗」は武器より強い

この移管は、単なる法務的な形式変更ではない。
それは「Reactは誰のものでもない」という哲学の可視化。
Metaは権力を手放すことで、思想を永続させることを選んだ。

Reactは、コードではなく理念だ。
理念に所有者はいらない。

この宣言により、Reactは一企業の製品から“文明”へと昇華した。
AngularがGoogle製品であり、Next.jsがVercel製品であるのに対し、
Reactは人類共通のUI構文として独立したのだ。


● 政治の中の思想

Linux Foundationという傘のもとで、Reactは安全保障を得た。
だがその代償として、戦場から一歩退いた。
Metaが剣を置いた瞬間、戦いは「思想」から「政治」へと変わった。

今後、Reactの運命を決めるのはコードではなく、票決と契約だ。
Reactは自由になった。
だが同時に、それは永久に管理される自由でもあった。


● 静かな勝利

こうして2025年秋、React Foundationは正式に発足した。
それは血を流さずして勝ち取られた、Metaの静かな勝利だった。

思想は滅びない。
それを守るための制度が、ようやく整ったのだ。

第5章:三極構造の完成 ─ フロントエンド地政図2025

三極構造の完成 ─ フロントエンド地政図2025

React Foundation布告ののち、
Webの戦場はついに三つの陣営に再編された。
もはや単なる技術競争ではない。
哲学・政治・経済が絡み合う、
冷戦構造そのものである。


● 第一勢力:Meta ─ 「思想の王国」

MetaはReact Foundationを通じて、
思想の火を絶やさぬ“宗教国家”へと変貌した。
もはや収益でもシェアでもない。
目的はただひとつ――Reactという言語体系の維持

ReactはMetaの広告ビジネスの副産物ではなく、
人間と機械の間に新たな「会話構文」を築くための哲学装置となった。
AIがUIを生成する時代、
“UIをどう記述するか”という設計思想こそが、
人間の表現領域を左右する。

Reactは、
「機械が理解できる美しい人間語」
としての使命を帯び始めたのだ。


● 第二勢力:Google ─ 「標準の帝国」

Googleは、戦争に加担しなかった。
なぜなら、戦場そのものが自分の庭だからだ。

V8が息づくChrome、
Web Componentsによるブラウザ標準、
TypeScriptの型システム――
それらすべてが、Web世界の基盤であり、
どの国もその上でしか呼吸できない。

Angularはかつての旗印を降ろし、
いまやGoogleの官僚機構の一部として静かに稼働している。
だが、それは敗北ではない。
Googleは戦わずして支配する。

Metaが思想を掲げ、
Vercelが市場を掴んでも、
そのどちらも“Chromeの上”で動いている。

それが、帝国の定義である。


● 第三勢力:Vercel ─ 「商業の同盟」

Vercelは思想を売り、
サーバーを支配し、
開発者の時間そのものを商品化した。

彼らの武器は、開発者体験(DX)
vercel deploy という呪文一つで、
全世界のEdgeにアプリが広がる。

Next.jsはReactの亜種として生まれたが、
今や「Web開発の実務言語」へと進化した。
企業はもはやフレームワークを選ばない。
プラットフォームを選ぶ。
その選択肢の筆頭が、Vercelだ。


● 三極バランスの“核抑止”

この三国は、互いに依存しながら牽制し合う。

  • Metaは、Vercelに技術を供給する。
  • Vercelは、Googleの基盤上で商業圏を広げる。
  • Googleは、Metaの思想を標準化の外壁で囲う。

それはまるで、
“核保有国同士の冷戦バランス”である。

MetaがRSCを握り、
VercelがEdgeを支配し、
GoogleがWeb標準を統制する。

この三つの力が一点で交わる場所こそ、
React Foundation――
つまり、フロントエンド世界の「国連」である。


● 「コードは国境を越える」

React Foundationの発足によって、
初めてWebフロントエンドは“政治的な秩序”を手に入れた。
それはもはや、単なるコードの集合ではない。

各国(企業)が異なる哲学を持ちながらも、
同じ構文で語り合える世界。

  • React:哲学と言語の統一。
  • Web Components:標準という共通基盤。
  • Edge:商業インフラの分散網。

この三者が均衡することで、
「Webは誰のものでもない」という理想が、
ようやく現実に近づいた。


● そして、次の戦争へ

だが、平和は長くは続かない。
AIがコードを書き、
AIがUIを構築する時代――
次の戦場は、
「誰が人間のインターフェースを設計するのか」という問いだ。

Reactはその入り口に立っている。
今度の敵は、他のフレームワークではない。
AIそのものだ。

AIが“UIを設計する権利”を奪う未来に、
Reactは人間の側に立てるのか?


終章:思想の残響 ─ フロントエンドはどこへ向かうのか

思想の残響 ─ フロントエンドはどこへ向かうのか

Reactはもはや、Metaの兵器ではない。
それは人間の創造性を代弁する構文、
人類がコードで「世界を描く」ための詩である。

思想、標準、商業――
どの帝国も、いずれは朽ちる。
だが、人が何かを「描こう」とした瞬間、
そこにUIが生まれる。

Reactとは、その永遠の衝動の記号なのだ。

Linux Foundation Announces Intent to Launch the React Foundation
Linux Foundation Announces Intent to Launch the React Foundation