画像モデルの強さと、知識の危うさ ─ Vision推論の落とし穴
1. はじめに
Qwen 3-VL は、驚異的な画像認識能力を持っている。
立体物の質感、光の反射、構造的な形状の特徴を捉える力は、4B のサイズとは思えない。
だが──
「見えている」ことと「理解している」ことは、まったく別の話だ。
この違いが最も顕著に現れた例がある。
2. 三叉星をめぐる事件
写真には、白い車のフロントにクロームメッキの三叉星ロゴが写っていた。
Qwen の認識はこうだ。
「これはメルセデス・ベンツ。三叉星は“ドイツの技術”を象徴しています」
半分正しい。半分は誤り。
ロゴはベンツで合っている。
だが、意味は違う。
正しくはこうだ:
三叉星(スリーポインテッドスター)は
「陸・海・空すべての領域でモビリティを実現する」
という理念を表す。
ダイムラー公式の資料にも残っている。
Qwen は ロゴを「見えている」 が、
その 意味が「分かっていない」。
3. なぜこうなるのか?
画像モデルは、以下の順序で推論をする。
- 視覚的特徴を抽出する(形・光沢・配置)
- それに紐づく言語を想起する(ベンツのロゴ)
- “理由付け”を補完する(それっぽい説明を作る)
問題は 3。
知識を裏取りしない。
GPT のように 「確証がなければ保留する」 機構が弱く、
Claude のように 「慎重に推測する」 こともない。
Qwen は “自信満々に言い切る”。
これが危ない。
4. モデルサイズ(4B → 8B)は解決になるか?
部分的に Yes。
根本的には No。
| モデル | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| Qwen 4B-VL | 視覚→言語がとにかく速い | 知識の裏取りが甘い |
| Qwen 8B-VL | 知識の精度が上がる | それでも“推測で語る”性質は残る |
モデルサイズは「データ量」ではなく「繋ぎ方」に関係する。
Vision 系LLMは「画像→説明文」を作れれば目的達成なため、
「歴史」「由来」「意味」は必須ではない。
だから、
見えているが、理解していない。
5. Vision推論を安全に使うための鉄則
「推論結果」ではなく「観察結果」だけ信用する。
✅ 写っているもの
✅ 色、形、構造
✅ 文字(OCR)
❌ 歴史
❌ 由来
❌ 意味の説明(とくにロゴ・ブランド)
6. まとめ
| 結論 | 内容 |
|---|---|
| Qwen の画像認識能力は 本物 | 4Bとは思えない見えている力 |
| しかし 知識補完が危険 | “もっともらしい嘘”を自信満々に言う |
| 8Bでも根本は変わらない | 「推測で埋める」性質は構造的 |
Qwen は万能ではない。
「見えているが、分かっていない」AI だ。
Vision推論を使うなら、
画像 → テキスト化 までは任せてよい。
意味づけ・理由づけ → 絶対に任せるな。





