Perplexity Patents ─ 特許検索を“AIの言葉”で問い直すとき、何が見えてくるか

Perplexity Patents ─ 特許検索を“AIの言葉”で問い直すとき、何が見えてくるか TECH

特許情報──それは本来、人類の知を共有するために開かれた公的資産のはずだった
だが現実の特許検索は、いまも専門家の閉じた世界にある。
コードを知り、分類体系を理解し、膨大な文献を読み解ける者だけがアクセスできる。
一般の発明家や研究者にとって、それは“ブラックボックス”のままだ。

そこに切り込んできたのが、Perplexity AIによる新サービス「Perplexity Patents」だ。
2025年10月、同社はベータ版を公開し、「自然言語で特許を検索できる世界」を提示した。
「AIによる質問応答型インターフェース」を掲げ、
キーワードや分類コードを知らなくても、
「量子コンピュータの主要な特許は?」や
「AI教育に関連する発明の動向を教えて」と尋ねるだけで、
関連する出願・文献を要約して返してくれるという。

Google Patentsのように世界中の特許データベースを機械的に検索するのではなく、
Perplexityは文脈理解をベースに、“質問の意図”から答えを組み立てる。
しかも対象は特許文献だけでなく、学術論文やオープンソースのコードリポジトリまで広がる
まさに「発明の発火点」を可視化する知のレーダーを目指している。

では、この挑戦に勝算はあるのか。
Googleが何十万件もの特許を保有し、検索インフラを独占してきた歴史を考えれば、
Perplexityがその牙城を崩すのは容易ではない。
実際、同社自身の特許保有数はごくわずかで、
“知財戦争”という視点では防壁を持たない。
だが、それこそが彼らの武器でもある。
巨人のように特許で囲い込むのではなく、
「特許をどう見せるか」「誰がアクセスできるか」というUXの戦場に立っているのだ。

Perplexity Patentsの狙いは、
Google Patentsが拾えない“文脈”を拾うこと
にある。
たとえば、特許の周縁にある研究動向、論文引用、ソフトウェア実装など、
断片的な知をAIがひとつの“答え”として結びつける。
それは、専門家ではなく一般ユーザーに「特許を自分の言葉で理解できる権利」を与える試みでもある。

とはいえ、リスクは小さくない。
自然言語による要約は、誤読や抜け落ちを生む可能性があり、
法的・実務的な判断には使えない

特許検索を「生成AIの要約」に頼ることは、
“間違った安心感”を与える危うさもはらむ
無料ベータの段階で注目を集めても、
信頼性と網羅性の両立は容易ではないだろう。

それでもなお、この試みには希望がある
なぜなら、特許検索という公的インフラが、
あまりに長く“企業の都合”に委ねられてきたからだ。

特許とは本来、税金で支えられ、国が管理し、
社会が共有すべき「知の公共財」である。
それがいま、検索エンジン企業や商業ツールの利益構造に組み込まれ、
国民の知る権利に応えるどころか、
アクセスの壁を高くする方向へと進んでいる

もしPerplexity Patentsが、その構造を少しでも揺さぶる存在になれるなら、
それは「AIが特許を語る」未来ではなく、
人間が知を取り戻すための第一歩として記憶されるべきだ。