Man is a thinking reed – AI流行のいまこそ、自分の頭で考えろ!

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AIに自分の意思を代弁させるな

 ChatGPT の登場から堰を切ったようにAIが持てはやされています。一般の人にも利用の道が開かれ、チャットボット(大規模言語モデル)の精緻な回答に驚かされた人も多いことでしょう。すでに数多の企業が業務の改善にこれを活用しはじめて成果を上げているという声が聞こえてくる一方、AIを何に活用していいのかが判然とせずに苦悩する企業も多いことでしょう。

役立つ道具としてAIを認知する能力

 基本的に、道具というのは自ずと正しい使い道があり、ある使命を全うするために存在するものです。だから、「自転車を活用したワンランク上の料理術」などというおかしな思考に陥ることはありません。それは、あなたが自転車という道具を「エネルギー効率の高い移動のためのツール」と正しく認識しているからに他なりません。もし、道具の使い方に頭を悩ませる暇があるならば、他にやるべきことが山ほどあるでしょう。

 ChatGPT は確かに役立つ道具足り得る十分な資質を備えています。そのことに異を唱えることが論旨ではありません。ChatGPT がなぜ、これほどまでに人々の興味を引くことになったのか?それはミステリアスな存在であるからでしょう。からくり人形も仕掛けがわかってしまえば興醒めするように、ChatGPT の本質を理解することができれば、得体のしれない何か、ではなくあなたの目にも役立つ道具として認識することができるようになるかもしれません。

ChatGPTなにするものぞ

 では、ChatGPT がどのようなものであるのかを簡単に解説してみましょう。

LLM(Large Language Models)

 日本語では、大規模言語と訳されます。膨大な言語学習によって、より自然な会話を成立させるまでに精度を高めた言語解釈エンジンと言えます。専門領域の難解な単語や流行り言葉の類を除けば、ChatGTP の言語理解能力は完成の領域に達していると言っても差し支えないでしょう。そのことは、ChatGPT を使ってみれば理解できます。もはや、ChatGPT がおかしな日本語を発するのを見ることはできません。

 しかし、言葉の意味を解釈できるだけでは、答えを出すことはできません。問いに対する回答となる情報を何処からかかき集めて、LLM にのせて質問者に返事をすることが必要になります。そのソースとなるのは、インターネット上に点在する膨大な情報なのです。これらすべてをリアルタイムに保持することは技術的に不可能ですから、ある種のアルゴリズムに則って取捨選択を行い、有力と目した情報をデータベース化したものに問い合わせを行っているものと推測されます。その規模は、人間の脳の5,000分の1程度と言われています(現在もそしてこれからも、この規模が拡大していくことに疑いはない)。それでも、質問の類によってはかなり精度が高く、満足度の高い回答が得られるレベルにまでに ChatGPT は到達しているということでしょう。

問題となるのは情報の正確性

 この世に絶対の正義というものは存在しえません。こんな当たり前のことが理解できないとすると、あなたは所謂情報弱者というグループに属する人間で、今後の人生において詐欺事件に巻き込まれないよう細心の注意が必要です。

 Web上には、ありとあらゆる情報が錯綜しています。しかし、それらが正しい情報であると断ずるに足る理由をあなたは持ち合わせていません。もしかすると、その情報が嘘であるという確信するに足る情報をたまたま持ち合わせている可能性はありますが、十中八九は鵜吞みにするしかないのが現実です。

 ChatGPT が悪いのではありません。しかし、ChatGPT が学習のに使用する情報は、そのような危うさを持ち合わせたものである以上、ChatGPT の回答もまた、その種の怪しさを含んだものであることに常に留意せねばなりません。

 ここまでくれば、情報の真贋を見極める能力をあなた自身が養うことの重要性にお気づきでしょう。ChatGPT を使いこなす以前に、あなたに求められるスキルがあるのです。

AIは嘘をつくのか?

 例えば、「現在の日本の首相は?」と問えば、すでに退任していた「菅 義偉」とChatGPTが答えたという話があります。これは、2023年7月現在においては明らかな嘘ですが、過去のある時点においては正しい情報でした。この一事をもって、AIのことを嘘つき呼ばわりするのは、良識ある大人としての品位を疑われます。これが嘘だというならば、過去の文献の相当数が嘘を書いているということになります。要は、時間は常に前に進んでおり、真実もまた移ろいゆくものであるということで、ChatGPT に限らず、バックエンドのデータベースのアップデートが”いま”に追いついてゆかないことに原因があります。この場合、正誤の彼岸は、たとえそれが秒単位であっても、単に時間軸における立ち位置の違いによるものということになります。

 別の嘘の類では、ChatGPT が学習した情報そのものが虚偽のものであったことも十二分にあり得ることです。もし、ChatGPT の回答が完全に虚偽であった場合、嘘つきはChatGPTではなく、その虚偽情報を流布した人間ということになりますから。

 結論を言えば、ChatGPT は嘘をつきます。しかし、上記のケースの主体を人間に置き換えてみてください。人間も嘘をつく。同じことなのです、AIが嘘つきかどうかを問う意味はありません。要するに、ChatGPT には本質的に正しい情報を求めることはできないことを理解し、強くそれを意識しておくべきです。

ChatGPT の美点は流暢な言葉を話すこと

 フォン・ノイマン型コンピューターの登場から数十年。人類はコンピューターとの対話にコマンドという記号の羅列を用いてきました。それが、ここにきて、一見すると手塚治虫の鉄腕アトムと会話している如き感覚を味わうことができるようになり、人類は感動しているのです。

 既述の通り、ChatGPT の回答には問題がありますが、言語によるコミュニケーション能力という観点においては素晴らしい成果を得られた訳です。ユーザーサポートにおけるChatGPTの活用などは顕著な例で、これまでのBotとは次元の異なるCX(カスタマーエクスペリエンス)を確かに実現しているのです。発語エンジンの進化も目覚ましく、これらの組み合わせでは、まるで人間と会話しているような錯覚に囚われてしまうこともあるでしょう。

優秀なチャットボットに育て上げよ

 この才能を伸ばすために必要なのは、自分たちのビジネスシーンで必要とされる知識を絶えず学習させ続けることです。ある特化した分野で使用する限り、ChatGPT が嘘つきになることはまずないでしょう。要は程度問題です。そして、ChatGPT にはその途が用意されています。

 労働組合からは苦情の一つも出るでしょうが、このような優秀なユーザーサポート用AIボットがいれば、現在消費している多くの人員やオフィス資源、教育コストなど大幅な予算の削減につなげることができ、経営改革と言って差し支えない果実を得ることができるかもしれません。

 レディメイドのツールでは、革新と呼ばれる成果は望めないことを覚えておいてください。

ChatGPT はパーソナルユースでも役に立つ

 使い手によっては、捗々しい成果を得られることもあるかもしれませんが、一般的にChatGPTは優秀な秘書といった感じです。あるテーマに対する調査などはお手のものです。といっても、Webから情報を集めてまとめる程度のことですが、あなたにその情報の真贋を見極め、新たな価値を生み出す能力が備わっているのであれば、確かに情報収集のための時間を節約することができるという点で大変に有用であることに間違いはありません。

 ただし、そこで得られた情報はWeb上にすでに存在する真偽の不確かなものであったことを忘れてはなりません。誤解を恐れずに言えば、その情報そのものには何らの価値もないのです。これをそのまま世に出すことは、ただの出典を伴わない転載であり、恥ずべき行為であることを覚えておくべきです。

AIのさらなる進化には「自ら問いかける」ことが必要

 人の子の親ならば、子供が「どうして?」を連発するころから、一気に知性を備えた人格に成長する過程を見てきたことでしょう。人間は未知のものに疑問を抱き、既知たらしめるために自ら行動を起こし、自ら学習することができます。

 現在までのAIの学習は人間に与えられたデータに沿って行われてきました。情報量の多寡はともかくとして、ChatGPT において、それは単なる文字列です。コミュニケーションの9割はボディランゲージであるという人がいます。いくら流暢になったとはいっても、それはコミュニケーションの表層10%程度のものでしかないとすると、AIが鉄腕アトムのように自らの判断で人々を助けるようになるまでには、あと数千年の時の流れが必要に思われます。 

 このような話の流れになると、不思議に「AI人類滅亡論」がどこからともなく湧き上がってきます。悪意を持った人間がAIを操れば、ともすればそのような悲劇が幕を開ける可能性はあるでしょう。しかし、それがAIが人類を滅すると言えるのでしょうか?戦争を起こすのは、いつの時代も人間の業です。人の悪行をコンピュータのせいにするのはやめにしましょう。人がAIに銃握を握らせることなくして、殺戮が起きることはないのです。鉄腕アトムを作った天馬博士は善意の人であったのです。ただ、現代の兵器にもAIの搭載が進んでおり、その意味では人類はすでに自ら滅亡の道を突き進んでいるのかもしれません。

 AIが『2001年宇宙の旅』に登場するHAL9000のような万能の存在となる日は来るのか?私は懐疑的です。人間は人生を通して経験を積んで学習を重ね、個々の価値観を得るようになります。その価値観は千差万別であり、人生の数だけ存在するのです。AIも同様に、AIの数だけ異なる経験を積み、異なる価値観を得て、まったく異なる判断をするようになるに違いありません。

 ChatGPTというのは、AIのひとつのパーソナリティの具現化というべき存在です。これを善事に使うか、悪事に使うか、それはあなた次第です。

「人間は考える葦である」

 フランスの著名な科学者であり思想家、ブレーズ・パスカルの言葉です。人間は草木の如くか弱き存在であるけれど、自ら考えて答えを出すことができるという点において偉大な存在であるといった意味合いです。

 AIが賢くなったからといって、それに唯唯諾諾に従うだけでは、あなたの存在意義がありません。コンピューターはどこまでいっても、あくまで人の道具。世に意思を表示するのは、自分自身であることを忘れないようにしたいものです。

 ここまでは、AI万能論に対するアンチテーゼのようなものでした。

検索エンジン不要論の怪しさ

 最近、「ChatGPT が何でも答えてくれるから、検索エンジンは不要になる」とか、「検索エンジンの利用者が減るので、キーワードマッチング広告は減少する」とかいった議論を目にすることが増えました。そんなことがあるのでしょうか?

 先に述べた通り、AIが可能な限り正確な情報を提供しつづけるためには、”今”起こっているすべての情報に対して可能な限りキャッチアップし続けることが必要になります。このテーマはGoogleなどの検索エンジンにも同様に言えることです。そのフィールドをWeb上だけに限定したとしても、その労力たるや、想像を絶するものであるはずです。これを世界最高レベルで実行し続けているGoogleは、原発数十基分のパワーを消費して数多くのサーバーを世界中に配し、常にスパイダーを世界中に走らせ、日夜、情報収集に動いています。それでも、リアルタイムに近い情報アップデートが可能なのは、オーソリティサイトに分類される数少ない信頼性が高いとされるサイトに限られているのです。

 ChatGPT がGoogle以上の情報収集能力を発揮することができるのであれば、あるいはGoogleに取って代わる存在になれる可能性があります。しかし、現在はそのような状況にはないはずです。ChatGPT はオープンソースではないため、真偽は藪の中ですが、客観的な事実に照らせば、これは妥当と判断してもいいはずです。そうとなれば、最新の情報を貪欲に欲する人類の欲望に、より確かな情報を提供できる可能性が高いのはGoogleであると言えます。

 Googleはキーワード検索エンジンであるため、質問を投げかけても答えは返してはくれません。キーワードに関連する最新の情報が掲載されているサイトをロケートしてくれるだけです。Googleを有効に活用するためには、使い手も相応の判断能力と労力が求められますが、それらの判断材料たる情報は世界で最も新しいものであるとの期待は持てます。

 一方のChatGPTには、その高い言語理解能力を駆使して、文章を要約する技能があります。最近では、会議のテキスト起こしを使って議事録を生成するといったこともやってのけるというのですから驚きです。このような卓越した能力を駆使すれば、ある質問に対して、それに近い議論を展開するサイトの情報を見つけ出し、これを要約して答えを返しているようなことは容易なのでしょう。肝心なのが、この際にサイトの情報を見つけ出すというプロセスを伴うことです。既述の通り、世界最高レベルのサイトインデックスを構築しているのがGoogleだとすれば、ChatGPT が Google の検索結果を引用することで、擬似的には世界最高レベルの要約結果をユーザーに返すことができる可能性はあります。ChatGPT が最高の能力を発揮するためには、最高レベルの検索インデックスが必要不可欠なのです。

 Googleは、情報収集のための莫大な資金を主に広告収入で得ています。一方、ChatGPT は利用者から従量的に課金を行っています。利用者の視点から見れば、大きな違いです。なにせ、無料と有料の差なわけですから。あなたならどちらを選びますか?その答えが検索エンジン不要論に対する回答です。

中立公正のサービスなど存在しない

 もし、仮にChatGPTが利用者の規模を拡大し続けて、ある有効な広告収入ビジネスモデルを獲得する世界を想像してみてください。質問の回答は、彼らのスポンサーによるバイアスに毒され、さながらユーザーの志向にターゲティングされたテレビショッピングの様相を呈しているに違いありません。世界企業であるGoogleも、各国の政治情勢や宗教、民族対立や経済的な折り合いなどの影響を常に受けており、ある視点に立っては、とても中立公正とは言い難い回答を世に示して非難を受けているのです。この現実は世界中に存在する対立の構図がそこにある限り変わり様がありません。そして、それは企業が自らを守るための方策でもあるため、他人が気安くとやかく口出しできる話でもありません。

 本質的に私達は一企業のポリシーに文句を言える立場にはありません。それは、どのようなネットサービスの利用においても同様です。試しに利用約款を読んでみてください。使用をはじめた段階で、あなたはそのことに対してすでに承諾してしまっているのです。そのような当然の事実を理解していないとすると、知らず知らずのうちに、情報弱者への道々へと落ちてしまう危険があるのです。

いますぐあなたが享受できるAIパワー

 ここまでの話は随分とAIに対するネガティブなイメージが色濃いものでしたが、AIの有用性を否定したものでは全くありません。ここからは、先端分野で活躍するAIについて論じたいと思います。

 当然のことながら、何もChatGPTだけがAIではありません。ChatGPT があまりに強烈な能力を世に示したことから、一気にAIの代表選手のような存在になっただけのことで、ここ数年、AIブームの牽引役は機械学習(ディープラーンニング)の分野でした。ChatGPTが、遍く人々の欲求に答えることを志向した、謂わば、汎用性の権化のような存在であったのに対し、機械学習(マシンラーンニング)は、例えば画像認識の精度を高めて、製品の不良品の検出を自動化するなど、極めて特化した分野において大きな成果を残してきました。自社で何らかのサービスを提供している会社は、AIに自社サービスについての学習機会を与えることができるため、AIを育てるチャンスです。

 そう言われても、何からはじめたらいいか…という方に、今日からはじめられるのが、Googleのリスティング広告です。コンバージョンやインプレッションに最適化したいとの意思表示をすれば、あとはGoogleのAIが単価調整や関連キーワードのエクスプロールを自動で行ってくれるのです。

 今年5月、Google Marketing Live 2023 において、 automatically created assets (ACA) というテクノロジーについての機能拡張の発表を行いました。

Introducing a new era of AI-powered ads with Google
We’re using generative AI in ads to help advertisers manage complexity and improve performance.

 これまでも、検索リクエストのクエリとスポンサーのランディングページのコンテンツを元にして、広告のクリエイティブを自動生成してくれましたが、今後はAIにる高度な解析とLLMを駆使して、より洗練されたクリエイティブを生成してくれるようになるでしょう。クリエイティブの良し悪しでクリック率が桁違いとなることは珍しいことではありませんが、AIはそのあたりを加味して、自動的にどんどん最適なクリエイティブに改善していってくれるものと思います。

 中小零細企業がAI革命のメリットを享受できるフィールドは、実はこんな身近な場所にもあるのです。

人類はまだ、AIを本格的に活用するための準備ができていない

 データを学習して賢くなるという ChatGPT タイプのAIの本性は、人類の叡智の結晶たるWeb上のデータに大きく依存しています。現実問題として、著作権をはじめとする法解釈は各国で異なっており、すぐにこれが解決される見込みも立っていません。大きな利権を孕んだ問題なので、間違いなく長い時間を要することになります。しばらくの間は、権利者による訴訟などの手段を用いた局地戦が展開されることでしょう。

 すぐにこれを活用したければ、他者の権利を侵すことのない分野での展開を優先的に模索する必要がありそうです。