Liquid AIの爆速・低燃費の親顔 ── LFM2-2.6B-Exp が「ローカルLLM+LM Studio」に持ち込んだもの

爆速・低燃費という新しい正義── LFM2-2.6B-Exp が「ローカルLLM+LM Studio」に持ち込んだもの TECH
爆速・低燃費という新しい正義── LFM2-2.6B-Exp が「ローカルLLM+LM Studio」に持ち込んだもの

なぜ今、また「小さいLLM」なのか

ローカルLLMの世界は、ここ1年ほどで急激に風景が変わった。
少し前までは「より大きく、より賢く」が正義だった。VRAMを食い尽くす巨大モデルをどう回すか、何GB積めるか、量子化をどこまで削れるか。話題の中心は常に“サイズ”だった。

しかし、実運用の現場──特に LM Studio を使った日常的なローカル運用 では、別の価値観が静かに浮上してきている。

それは、

  • 毎回そこまで賢くなくていい
  • でも、すぐ返してほしい
  • 電気もVRAMも、できれば食わないでほしい

という、ごく現実的な要求だ。

文章の下書き、要約、構成案の生成、RAGの後段整形。こうした作業の多くは、哲学的思考や高度な推論を必要としない。必要なのは「破綻せず、素直に、速く出てくること」だ。

ここで初めて、小さいLLMが再評価され始める

小さいモデルは、賢さでは大型モデルに勝てない。だが、

  • 応答が速い
  • 消費トークンが少ない
  • マシンへの負担が軽い

という、運用面での強みを持つ。

これまでは「小さい=妥協」と見なされがちだった。しかし、役割を限定した瞬間、それは妥協ではなく最適化になる。

LFM2-2.6B-Exp は、まさにこの文脈で現れたモデルだ。

“全部を一人でやるAI”ではない。
“仕事を前に進めるためのAI”。

ここから先は、その正体を一つずつ見ていこう。

LFM2-2.6B-Exp という新顔

LFM2-2.6B-Exp は、Hugging Face 上ではじめて名前を見たとき、それは正直、かなり地味な存在だ。LLaMA 系のようなブランド力もなければ、Qwen や Gemma のような話題性もない。モデルサイズも 2.6B。数字だけ見れば、いまや珍しくもない中型以下のクラスである。

LiquidAI/LFM2-2.6B-Exp · Hugging Face
We’re on a journey to advance and democratize artificial intelligence through open source and open science.

しかし、細部を眺めると、このモデルは最初から「主役」を狙っていないことが分かる。

LFM2 シリーズは Liquid AI によって設計されたモデル群で、いずれも共通した思想を持っている。万能型ではなく、役割特化型。その中でも 2.6B-Exp は、実運用を強く意識したポジションに置かれている。

仕様を整理すると、次のようになる。

  • パラメータ数:約 2.6B
  • コンテキスト長:32K トークン
  • 多言語対応:8か国語
  • 精度:bfloat16

ここまでは特別ではない。

注目すべきなのは内部構成だ。LFM2-2.6B-Exp は、一般的な Transformer 系モデルとは異なり、畳み込み(Conv)層を主体にした構造を採用している。Attention に全面依存しない設計は、文脈処理を“思考”というより“処理”に近づける。

その結果、

  • 初回トークンが異様に速い
  • 長文でも速度が落ちにくい
  • KV キャッシュの負担が軽い

という、ローカル運用に直結する特性が生まれている。

さらに “Exp” の名が示す通り、このモデルは内部でエキスパート的な振る舞いを行う。すべてのパラメータを毎回全力で使うのではなく、必要な部分だけを動かす。その判断は派手ではないが、確実に効いている。

Liquid AI 自身も、このモデルの使いどころについてはかなり率直だ。

知識集約タスクや高度なプログラミングには向かない。一方で、エージェント的なタスク、データ抽出、RAG、文章生成、マルチターン対話には適している。

つまり、LFM2-2.6B-Exp は最初から「賢さ」で競う土俵に立っていない。

速さ、軽さ、安定性。

それを武器に、ローカルLLMという現場に投入された、新しいタイプの実務モデルだ。


なぜ、「英語と日本語に特化してチューニング」なのか?

ちなみに、公式サイトには、次のように書かれている。

また、英語と日本語に特化してチューニングされつつ、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語、中国語、韓国語においても強力な性能を維持しており、グローバル用途に真に多用途なモデル です。

Liquid AI が英語と日本語を中核に据えたのは偶然ではない。
日本語は、LLMにとって最も“効率の悪い言語”の一つだ。
だからこそ、日本語を小さなモデルで扱えるなら、
その設計は本物だと証明できる。

触った瞬間に分かる「異常な速さ」

LFM2-2.6B-Exp を LM Studio 上で動かすと、多くの人が最初に口にするのは、品質でも多言語対応でもない。

「速い」。

それも、数値を確認する前に体感で分かるレベルの速さだ。

プロンプトを投げて、少し待つ──という“間”がほとんど存在しない。思考中の沈黙がなく、文章がすぐに流れ始める。体感としては、キーを打ち終えた瞬間に返事が返ってくる感覚に近い。

実測値を見ても、この印象は裏切られない。

  • 最初のトークンまで:約 0.2 秒台
  • 生成速度:100 トークン/秒超
  • 長文生成時も速度低下が少ない

2.6B クラスで、この挙動は明らかに速い。

もちろん、小さいモデルほど速くなるのは自然な話だ。しかし LFM2-2.6B-Exp の速さは、単なるサイズ由来のものではない。生成が進んでも息切れせず、トークン消費も抑えられる。この「最後まで速い」感覚は、設計の差としてはっきり現れる。

特に長文生成では差が出る。

10,000字級の文章を指示しても、途中でだれることがない。構成を保ったまま、一定の速度で書き切る。これは Attention 依存型モデルでありがちな、後半の減速や不自然な間が起きにくいことを意味する。

LM Studio を日常的に使っていると、この速さは単なる快適さ以上の価値を持つ。

  • 下書きを何本も作る
  • 試しに投げて、すぐ捨てる
  • プロンプトを微調整して再実行する

こうした「雑に回す」作業では、応答の速さが思考のテンポを決める。待たされないというだけで、作業全体のリズムが変わる。

ここで重要なのは、速さと引き換えに文章が壊れていない点だ。

意味不明な連結や、文脈の破綻、途中で話題が飛ぶようなことは少ない。内容は無難だが、安定している。この“壊れない速さ”こそが、LFM2-2.6B-Exp の最大の特徴と言っていい。

速いモデルは他にも存在する。しかし、速さと安定性がここまで両立している例は多くない。

このモデルを触ったあとだと、「少し待つのが当たり前」だったこれまでのローカルLLM体験が、急に古く感じられる。

速さは、もはや贅沢ではない。
実務においては、正義になり得る。

Qwen3-VL-4B と並べて見えた「役割の違い」

LFM2-2.6B-Exp の性格を理解するには、単体評価よりも、別のモデルと並べて使ってみるのが早い。ここでは、同じくローカル環境でよく使われる Qwen3-VL-4B を例に取る。

同一条件で、約 10,000 字規模の文章生成を指示した場合、挙動の違いははっきり分かれる。

まず、LFM2-2.6B-Exp。

  • 入力は比較的短くても素直に展開する
  • 出力は要点を押さえた無難な構成
  • 生成開始が非常に速い
  • トークン消費が少ない

一方の Qwen3-VL-4B は、

  • 構成がより丁寧
  • 見出し設計や論点整理が上手い
  • 情報の粒度が細かい
  • そのぶん生成速度は落ちる

結果として、文章の完成度そのものは Qwen のほうが高い。これは素直に認めていい。読み物として整っており、そのまま公開できる品質に近い。

しかし、ここで重要なのは「どちらが上か」ではない。

役割が違う、という点だ。

LFM2-2.6B-Exp は、文章を“考えながら書く”というより、“決められた方向に素早く広げる”。構成を大きく崩さず、短時間で量を出すことに長けている。言い換えれば、一次ドラフト製造機として非常に優秀だ。

Qwen3-VL-4B は、その逆だ。速度よりも整理と完成度を重視する。文章に厚みを持たせ、読み手を意識した構成に仕上げる力がある。

この差は、実運用ではむしろ好都合になる。

  • LFM2 で下書きを一気に作る
  • Qwen で構成を磨く、肉付けする

こうした分業を前提にすると、どちらの強みも失われない。

ローカルLLMを「一発で完璧な文章を出す道具」と考えると、比較は対立になりがちだ。しかし、「工程の一部を担う道具」と捉え直せば、モデル同士は競合ではなくなる。

LFM2-2.6B-Exp は、Qwen3-VL-4B の代替ではない。

その前に立ち、仕事を前に進めるためのエンジンだ。

小さいのに、意外と賢い

LFM2-2.6B-Exp は、そのサイズから想像される以上に「素直」だ。

ここで言う賢さとは、知識量や難問への強さではない。プロンプトをどう受け取り、どう展開するかという、作業上の理解力の話である。

指示を与えると、余計な自己主張をせず、そのまま受け取る。章立てを指定すれば従い、トーンを指定すれば守る。途中で話題を勝手に変えたり、謎の持論を差し込んだりすることが少ない。

この性質は、実務ではかなり重要だ。

ローカルLLMを使っていると、モデル側の“やる気”が邪魔になる瞬間がある。聞いていない説明を始めたり、別の論点に飛んだり、良かれと思って構成を組み替えたりする。賢さの副作用だ。

LFM2-2.6B-Exp には、その癖があまりない。

結果として、

  • プロンプト追従性が高い
  • 構成を壊しにくい
  • 再生成してもブレが少ない

という挙動になる。

また、多言語対応も見逃せない。英語だけでなく、日本語を含む複数言語で、文法的に破綻しにくい文章を安定して出力する。表現はやや平坦だが、意味が通らないことは少ない。

もちろん、万能ではない。

知識を深く掘り下げるタスクや、事実関係の厳密さが求められる場面では、上位モデルに及ばない。数字や制度の細部では、人間側のチェックが前提になる。

それでも、「文章を形にする」という一点に絞れば、このサイズとしては十分すぎる性能だ。

LFM2-2.6B-Exp の賢さは、前に出ない。

だからこそ、使いやすい。

向いている用途、向いていない用途

LFM2-2.6B-Exp を使っていて感じるのは、このモデルが「何でも屋」ではないという点だ。できることと、やらせるべきでないことの境界が比較的はっきりしている。

まず、向いている用途から整理しよう。

文章の一次生成、いわゆる下書き作り。この用途では非常に強い。構成を与えれば素直に広げ、量を要求すれば黙々と書き切る。ブログ記事、解説文、報告書の叩き台など、形を先に作りたい場面で真価を発揮する。

RAG の後段処理も得意分野だ。検索結果や要点を渡して「読みやすく整形する」「章立てに直す」といった作業は、速さと安定性がそのまま効く。情報を“理解して再構成する”というより、“受け取った材料を並べ直す”工程に向いている。

エージェント的な用途、つまり「次に何をするか」を決める軽い判断役としても使いやすい。重い推論は任せず、フロー制御や分岐判断を担当させると、全体の応答性が大きく改善する。

一方で、向いていない用途も明確だ。

厳密な知識検証が必要なタスク。制度や歴史、数値を正確に扱う場面では、誤りが混じる可能性を常に考慮する必要がある。これはモデルサイズというより、設計思想の問題だ。

プログラミングや数理処理も同様で、複雑なロジックや正確性が求められる作業には適さない。コード生成やデバッグを任せると、見た目はそれらしくても中身が危うい結果になりがちだ。

つまり、このモデルは「考える係」ではない。

考えるのは人間か、上位モデルの役割。LFM2-2.6B-Exp は、その前後で仕事を軽くするための存在だ。

この線引きを意識できるかどうかで、評価は大きく変わる。適材適所で使えば、これほど扱いやすいローカルLLMはそう多くない。

「速さ」は思想を変える

LLMの評価軸として、これまで最も重視されてきたのは「どれだけ賢いか」だった。難しい質問に答えられるか、深い推論ができるか、専門知識をどこまで正確に扱えるか。そうした能力は、今もなお重要だ。

しかし、LFM2-2.6B-Exp を使っていると、別の軸がはっきりと浮かび上がってくる。

それが「速さ」だ。

ここで言う速さは、単なるベンチマーク上の数字ではない。人間の作業テンポに追いつき、邪魔をしないという意味での速さである。

思考型のLLMは、しばしば人間を待たせる。応答を待つ間、人は別のことを始めるか、あるいは思考を中断する。その数秒の空白は小さく見えて、積み重なると大きな摩擦になる。

LFM2-2.6B-Exp には、その摩擦がほとんどない。問いを投げると、すぐ返ってくる。この即応性は、LLMを「相談相手」ではなく「作業道具」に変える。

すると、人間側の役割も変わる。

すべてを一から考えて書かせるのではなく、まず形を作らせる。その形を見て、直し、判断し、思想を入れる。LLMは思考の代替ではなく、思考を進めるための下地になる。

この使い方では、速さが正義になる。

多少無難でもいい。多少平坦でもいい。重要なのは、すぐに叩ける素材が手元にあることだ。修正は人間がやればいいし、必要なら上位モデルを呼べばいい。

速いモデルは、賢いモデルを不要にするわけではない。

速いモデルは、賢いモデルの出番を正しい場所に押し戻す。

LFM2-2.6B-Exp が示しているのは、LLMの未来像の一つだ。

すべてを一つで完結させるのではなく、役割を分け、速度で工程を分断する。その中で、人間の判断が最後に残る。

ローカルLLMが本当に実用になるのは、この構図が成立したときなのかもしれない。

LM Studio ユーザーへの結論

LFM2-2.6B-Exp は、ローカルLLMの主役になるモデルではない。だが、脇役としては異様に優秀だ。

LM Studio を日常的に使っている人ほど、このモデルの価値は分かりやすい。大きなモデルを回すほどでもないが、毎回ゼロから文章を組み立てるのは面倒。そんな隙間の作業を、驚くほど軽くしてくれる。

導入するかどうかで迷うポイントは、賢さではない。

速さと燃費だ。

  • 応答が速く、待たされない
  • 消費トークンが少なく、回しやすい
  • 長文でも破綻しにくい

これらは、スペック表よりも体感で効いてくる。作業回数が増えるほど、「戻れなくなる」タイプの快適さだ。

もちろん、これ一つで完結させるべきではない。思想を練る、事実を詰める、表現を磨く。その役割は、人間か、より賢いモデルに任せたほうがいい。

だが、

  • 下書きを素早く作る
  • 形を先に見る
  • 試行錯誤の回転数を上げる

この工程を担う存在として、LFM2-2.6B-Exp は非常に相性がいい。
ローカルLLM環境に、もし一本だけモデルを追加するとしたら。

「賢いモデル」ではなく、「速いモデル」を選ぶ。

LFM2-2.6B-Exp は、その選択肢として十分に説得力がある。
爆速・低燃費という新しい正義は、すでに始まっている。

Liquid AI という会社について

Liquid AI:あらゆるスケールで効率的な汎用AIを構築
当社の超高効率なマルチモーダルモデルは、AIによって支えられる世界の可能性を現実のものにしています。CPU、GPU、NPU向けに最適化されており、クラウドに限らず、あらゆる場所でプライバシー重視・低遅延・高いセキュリティ要件を満たすアプリケ...

Liquid AI は、いわゆる「巨大LLM競争」の文脈にいる企業ではない。
彼らの関心は、モデルをどこまで大きくできるかではなく、どこまで賢さを小さく保てるかにある。

創業メンバーの多くは、MIT の研究コミュニティ出身で、計算神経科学や連続時間モデルといった、やや異色のバックグラウンドを持つ。
Transformer を前提としたスケール競争とは距離を置き、計算効率・状態保持・推論コストといった、実装寄りの課題に正面から取り組んできたチームだ。

その思想は、LFM2 の設計にも表れている。
畳み込み層とアテンションを組み合わせた構成は、単なる軽量化ではなく、「必要な文脈だけを、必要な分だけ保持する」という方向性を明確に示している。

英語と日本語を中核に据えたチューニングも、その延長線上にある。
日本語という高コストな言語を、小さなモデルで扱えるかどうかは、設計の良し悪しが如実に出る試金石だ。
Liquid AI は、そこを避けなかった。

Liquid は、現在の覇権を取りに行く会社ではない。
ローカル実行、エッジ推論、小規模GPU環境といった、次の現実的な利用シーンに向けて、静かに布石を打っている。

LFM2 の異様な速さは、その副産物ではなく、狙った結果だ。


Liquid AI は世界経済フォーラム(WEF)のメンバー企業として登録されており、
この分野における技術的・社会的な注目度が高いこともうかがわせる。

Liquid AI | 世界経済フォーラム


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