IBMは10月、最新の基盤モデル群「Granite 4.0」を正式発表した。
今回のリリースは、LLMが性能競争と著作権リスクの板挟みになるなか、IBMらしい“企業向けAIの王道”を貫く内容となっている。
最大512Kトークンの超長文処理を可能にしたハイブリッド構造、TransformerとMambaを融合した高効率設計、そして暗号署名とISO/IEC 42001認証による信頼性保証。
Granite 4.0は単なる世代交代ではなく、「責任あるAI開発」を体現する新しい潮流の起点といえる。
主要ポイント
- IBM は新しい世代モデル Granite 4.0 を発表。メモリ要件を大幅に削減しつつ、性能を犠牲にしない設計。
- Granite 4.0 は Apache 2.0 ライセンスでオープンソース化され、ISO/IEC 42001 認証を取得。さらに、モデルチェックポイントには暗号署名が付与され、真正性の保証を強化。
- 提供プラットフォームは、IBM の watsonx.ai をはじめ、Dell Pro AI Studio、Docker Hub、Hugging Face、Kaggle など。Amazon SageMaker や Microsoft Azure での対応も準備中。
アーキテクチャとモデル構成
- Granite 4.0 の中核は ハイブリッド Mamba / Transformer アーキテクチャ。Transformer 部分と Mamba 部分を組み合わせ、長文コンテキストや複数同時セッションにおけるメモリ効率を最適化。
- モデルサイズラインナップ例:
• Granite-4.0-H-Small(32B 総パラメータ、うち 9B がアクティブ)
• Granite-4.0-H-Tiny(7B 総パラメータ、1B アクティブ)
• Granite-4.0-H-Micro(3B、密モデル構成)
• さらに従来型 Transformer ベースの Granite-4.0-Micro(3B)も含む。 - ハイブリッド設計により、コンテキスト長が長くなるほど、従来型 Transformer モデルよりも「処理量/メモリ使用量」が少なく済むというスケーリング優位性をアピール。
- Granite 4.0 モデルは最大 512K トークンのコンテキスト長 を学習時に扱うよう設計され、現時点で 128K トークン程度までの評価済み応答も確認されている。
性能・効率性・安全性
- 前モデルである Granite 3.3(8B)よりも小型モデルでありながら 優れた性能を発揮。特にメモリ効率とレイテンシ(応答速度)の面で大きな改善。
- メモリ使用量削減効果として、長い入力や複数同時バッチを扱う場面で従来型モデルに比して 70%超のメモリ節約 を実現できる可能性を示唆。
- 安全性・信頼性の強化も重視。Granite ファミリーとして ISO/IEC 42001 認証 を取得(AI 管理システムにおける説明性、責任、プライバシー保護、信頼性などに関する国際基準)
- また、モデルチェックポイントの暗号署名や、HackerOne を利用したバグ報奨制度も併用し、透明性とセキュリティを担保。
- IBM は、Granite を使用する顧客向けに 知的財産クレームに対する補償(indemnity) を提供するとし、モデル出力に起因する責任リスクを軽減する方針。
日本語サイト・日本語対応に関する記述
- IBM の日本語サイトでは、Granite が「開発者の効率性を重視して設計された小型オープンモデル」であり、「AI にかかるコストを 90% 以上削減」との文言が強調されている。
- また、Granite のモデル群(言語モデル、ビジョン・モデル、コードモデル、時系列モデル、埋め込みモデルなど)が多様なタスク向けに揃えられていると紹介。
- 日本語性能についても、Granite 第3世代以降で向上してきた旨の記述があり、最新リリースでも引き続き日本語対応・性能改善に注力する姿勢がうかがえる。
評価・インパクト予想・留意点
- この発表は、小型・効率・透明性といった要素を重視する流れを象徴するもの。企業用途では、モデル運用コスト/ハードウエア要件が実運用上のボトルネックになることが多いため、この点で注目を集めそう。
- ただし、発表文書における “性能向上” や “効率改善率” の主張は、ベンチマーク環境や評価条件に強く依存する可能性あり。実運用での評価・検証が鍵。
- また、ハイブリッド構成(Mamba + Transformer)というアーキテクチャは、実装・推論最適化の難度が上がる可能性もある。エコシステム(ランタイムやライブラリ)がどれだけ対応できるかも重要。
- 日本での導入・サポート体制、ローカル化(日本語微調整、ドメイン適合化)などが成功のカギになるだろう。

