GPUの歴史 ─ 第8章:サステナビリティとハイブリッド化 ─ 電力を制する者がGPUを制する

GPUの歴史 ─ 第8章:サステナビリティとハイブリッド化 ─ 電力を制する者がGPUを制する TECH

性能が足りないのではない。
電力が足りない。


◆ かつて:性能が正義だった

2000–2010年代、GPU の競争軸はひとつだった。

「フレームレートが上がるか?」

  • コア数を増やせ
  • クロックを上げろ
  • パイプラインを太くしろ

消費電力は 付随的な問題 だった。

性能を上げるためなら、電力は犠牲にしてよい。

GPU業界の暗黙の了解だった。


◆ 2020年代:電力が支配する

突如として、競争軸が逆転する。

「電力が確保できるか?」

理由は3つある。

  1. 大規模データセンターが電力逼迫している
  2. AI 冷却コスト → 電力料金が GPU と同じ規模になった
  3. サーバー1台あたりのGPU搭載数が極端に増加

NVIDIA A100 / H100 は 1枚 350W〜700W
1ラックに 数十〜百枚 → 電力だけで数十 kW

もはや、

GPU は電力インフラの制約下に置かれる。


◆ 性能(Perf)→ 消費電力(W)→ 性能/電力(Perf/W)

2020年代の GPU の KPI は変わった。

時代KPI主語
2010年まで性能(Perf)GPU
2020年〜性能/電力(Perf/W)データセンター

「電力がなければ GPU を置けない」
つまり、性能より電力が優先される。


◆ ハイブリッド化 ─ GPUが“なんでも屋”をやめた

1つの巨大GPU にすべてを詰め込む戦略は終わった。

代わりに、用途ごとの 分業(ハイブリッド) が進む。

  • GPU:汎用・高速・柔軟
  • TPU / NPU / AI ASIC:特化・省電力
  • FPGA:制御や専用処理、大規模ネットワーク

Google の TPU が象徴だ。

GPU が AI を生んだが、
AI は GPU に「効率」を求めた。


◆ GPU × CPU × 専用チップ ─ 混成構造にシフト

以前:1 GPU が全てを担った
現在:GPU は “AIの心臓” に専念する

代わりに周囲を:

  • CPU が制御し
  • NIC / Switch がクラスタ性能を上げ
  • 専用AI ASIC が推論を担当する

GPU は 中心だが万能ではない


◆ 2020年代の GPU 設計思想

時代設計思想
〜2015計算ユニットを増やせ
2016〜2019AI向けに最適化(Tensor Core)
2020〜効率とスケール。電力と冷却が制約になる

問題は性能ではない。
「回せる電力が足りない」 のである。


◆ 土地と電力を求めて動くデータセンター

2023〜2025年、世界で異常な現象が起きた。

  • hyperscaler(AWS / Azure / Google)が土地を買い始めた
  • データセンター立地の条件が**「電力が取れるか」** に変わった

「土地」 → 「GPU」 → 「電力」が制約に


◆ 第8章の結論

GPUは進化したのではなく、変質した。

速さではなく、持続可能性へ。
性能ではなく、効率へ。
単体ではなく、ハイブリッドへ。

GPUは文明のインフラであり、
インフラは “効率” が支配する。

そして次のステージへ続く。


▶ 次の章へ進む: 第9章:次世代GPU(光学 / 量子 / エッジ) ─ 計算の未来はGPUの外側にある