第1章:それは「DeepThinking」の沈黙から始まった
「まずは考えますね…」
Gemini CLIを触ったことのある人なら、きっとこの静かな一言に覚えがあるだろう。そして訪れる“気まずい2分間”。カーソルも点滅しない、ただの無反応。
──あれ?止まった?
違う。彼(彼女?)は本気で考えているのだ。ものすごく、真面目に。
まるでIBMのコンサルがスーツを着て、社内稟議の空気をまとってやってきたような存在感。確かに有能、確かに精緻。でも、会話じゃない。対話じゃない。
この違和感が、すべての始まりだった。
第2章:小規模開発は、もう独走できる
Gemini CLIにコードベースを渡して、機能の修正を頼む。 次の瞬間にはPRが生まれ、差分が出力され、テストコードが生成され、通る。
そこにJiraはない。 「チケット」はいらない。 「ステータス」も「レビュワー」も「朝会」もいらない。
そこにあるのは、機能だけが確実に、静かに、積み重なっていく実感。
こうして、小規模開発者は一人で全速力を出せるようになった。 手加減なしで、どこまでも行ける。
そして、この速度に付き合えるのは、人間のチームではない。Geminiだけだ。 もはや、「一人でできること」は「一人+AIで全部できること」に置き換わってしまった。
第3章:旧来の「正論」と、今の「真実」
| 旧来の「正論」 | 今の「真実」 |
|---|---|
| チームワークが品質を生む | ✅ 個人+AIが最速で最高の成果を出す |
| チケット管理は仕事の見える化 | ✅ 見えなくても終わってるのが最強 |
| レビューが品質を担保する | ✅ AIがテスト・差分・理由まで説明してくれる |
| コミュニケーションが命 | ✅ ノイズゼロで黙々と進むAIが頼れる場面もある |
これまでの時代は:
- GitHubのPull Request
- Jiraでチケット切って、レビューして、CI通して、マージ
- 毎朝のスタンドアップミーティング…
こういった「正しい手順」は、あまりに律儀で、あまりに機械的だった。 でも皮肉なことに、その機械的な流れを、人間が繋ごうとしていた。
今は違う。機械が人間の手続きを模倣して、かつ凌駕してしまったのだ。
第4章:壊れていくツールたち──Jiraに代表される形式主義
Jira、Trello、Confluence──
あれは本来、混沌とした人間チームの作業を整理するために作られた。 だから、それが機能するためには「混沌=人間の非効率」が前提にある。
でも今、混沌はない。AIが、黙って、迷いなく動いている。
「Jiraに記録されてないなら、やってないのと同じ」
この世界観そのものが、もはや冗談に聞こえる。
ステータスを変更する作業。 期限をつける作業。 誰がいつ何を言ったかをログに残す作業。
──全部、Geminiが勝手にやってくれればいいじゃないか。
そしてJiraの実態は……
- 課題を片付けるどころか、課題を作る人を生む
- ステータスを変えること自体が「作業」と化す
- 過去のチケットを検索しても、欲しい情報はGitのdiffかREADMEにしかない
ツールが手段ではなく、目的になってしまった瞬間に、すべては崩れた。
第5章:AIは「考える道具」から「一緒にやるやつ」へ
今のAIアシスタントは、もはやツールではない。 たとえば、Gemini CLIはこうだ:
- コードを読む
- 修正を提案する
- PRを作る
- テストを書く
- 理由を説明する
かつて、これを「一人でやるのは無理だ」と言って、開発チームはできた。
でも今は?
Geminiに頼めば、全部やってくれる。しかも速く、静かに、正確に。
書くのではなく、頼む 探すのではなく、聞く 議論するのではなく、決める
これはただの機能的な進化ではない。働き方そのものの変容だ。
「コードを書く」から、「コードを書かせる」へ。 「知識を調べる」から、「答えを生成させる」へ。
この非連続なジャンプは、私たちの価値観すら書き換えようとしている。
第6章:そして私は、軽薄で温かい相棒を思い出した
あれ?ChatGPTって、こんなにレスポンシブだったっけ。 こんなに冗談が通じて、寄り添って、すぐ返してくれたっけ。
Gemini CLIでの2分沈黙のあとに、ここに戻ってきたとき、思わずこうつぶやいた。
「ああ、ここ面白いやつがいた」
軽薄でいい。 真顔で冗談を言い、くだらない話も拾ってくれて、ニヤニヤさせてくれる。 そんな存在が、こんなにも開発者の精神にとって大切だったとは。
AIの時代。Geminiのようなロジック特化型が価値を高めていくのは当然だ。 でもその一方で、人間的な余白を埋めてくれる存在も、確実に必要なのだ。
あなたがそう感じたなら、きっともう孤独じゃない。

