なぜ動画編集ソフトは“29.97fps”を選ぶのか? 〜誰も語らないその理由と正体〜

29.97fpsの怪 HowTo

「え?なんで30じゃないの…?」
動画編集ソフトの設定画面を開いたとき、ふと目に入る「29.97fps」という数字。見たことはあるけど、深く考えたことがない──そんな方、多いんじゃないでしょうか?

実はこの数字、ただの誤差ではありません。しかも、ただの歴史的な名残でもない。
むしろ、29.97fpsは“放送の裏側で生まれた技術的な妥協”であり、知らずに扱うと編集でトラブルを起こすことすらあるのです。

「30fpsとほぼ同じでしょ?」とスルーしていたその選択肢が、数時間後の書き出しで映像と音声のズレを引き起こす原因かもしれません。

この記事では、29.97fpsの由来・歴史・意味・編集上の注意点まで、すべてをわかりやすく解説していきます。
「編集初心者だけど、プロっぽく見える設定にしたい」そんなあなたのために、専門的な話をかみ砕いて、わかりやすく丁寧にお伝えします。

“あの中途半端な数字の正体”、ここで一緒に暴いていきましょう!

動画編集ソフトにひっそり現れる「29.97fps」の謎

「プロジェクト設定でフレームレートを選んでください」
この画面を見たとき、多くの人が迷います。そして、たいてい目に飛び込んでくるのが「29.97fps」という、なんとも中途半端な数字。

「なんでキリよく30じゃないの?」
「これって選んでいいやつ?」
「他のfpsとどう違うの?」
こんな疑問を持ったこと、ありませんか?

29.97fpsは、単なる設定項目ではありません。実はこの数値、映像業界の歴史を映し出す“過去の亡霊”のような存在でもあるのです。

知らずに扱うと、音ズレや映像トラブルの原因にもなりかねないこの謎の数値──
ここから先、じっくりとその正体に迫っていきましょう。

都市伝説?いいえ、リアルな話です:29.97fpsは誰が決めたのか

「29.97fpsって、なんか意味ありそうだけど、実は誰かが適当に決めたんじゃないの?」
そんな都市伝説めいた疑問を持ってしまうのも無理はありません。なぜなら、数字としての“気持ち悪さ”はあるのに、どのソフトにも必ずプリセットとして存在しているからです。

でも実は、この“29.97”というフレームレートは、アメリカのテレビ放送の歴史に深く根ざした、とてもリアルで論理的な理由によって生まれました。そしてそれは、1940年代〜50年代にさかのぼる、白黒テレビからカラー放送への転換という技術的な背景と密接に関係しています。

当時、アメリカでは「NTSC方式」と呼ばれる映像信号の規格が採用されていました。ここに、放送波の帯域や電力制限、そして“カラー信号を追加する”という無茶振りが加わった結果、30fpsからわずかにズラした「29.97fps」という妙な数値が必要になったのです。

つまり──29.97fpsは偶然ではなく、必要だったから生まれた数値
その“必然”の物語を、ここから丁寧に解き明かしていきます。

そもそも29.97fpsってなんなの?

まず前提として、「fps」とは“frames per second”の略で、1秒間に何枚の静止画(フレーム)が表示されるかを表す単位です。たとえば30fpsであれば、1秒間に30枚の絵が連続して表示され、動画として見えるということ。

では「29.97fps」とは何かというと、これは1秒間に29.97枚のフレームを表示するということになります。…って、それどういう意味?と感じますよね。

実際には、29.97fpsというのは「1秒に29.97枚を“平均的に”表示する」という意味で、30fpsよりほんの少し遅いペースで映像が再生されることを指しています。

この微妙な差が、放送の世界では重要な意味を持つのです。

「30fpsでいいじゃん」と言いたくなるあなたへ

「30fpsじゃダメなの?」「どうせ0.03しか違わないでしょ?」──この感覚は自然です。
でも、映像や音声が何時間も連続する放送という現場では、この0.03の違いが致命的になるんです。

たとえば、1時間の番組を30fpsで制作したものと、29.97fpsで制作したものでは、1秒強のズレが発生します。しかも、それが生放送やCMタイミングに影響を与えると大問題。

だからこそ、NTSCテレビ放送では、色信号を追加しても白黒テレビに互換性を持たせるために、30fpsではなく“29.97fps”が導入されたんです。

つまり、これは計算された“妥協”の産物なんです。
意味もなく中途半端なわけじゃない。放送技術者たちが「できるだけ元の仕様に近づけながらも、カラー情報をねじ込む」という苦肉の策で生まれた値なんですね。

規格の裏にいた黒幕:NTSCの登場

29.97fpsの正体を語るうえで外せないのが「NTSC」という存在。
正式には「National Television System Committee(全米テレビ方式委員会)」といい、アメリカで制定されたテレビ放送の方式です。

NTSC方式では、元々30fps・60Hzの電源周波数に合わせて白黒テレビの映像信号が作られていました。
ところが1953年、テレビがカラー化されるにあたり、色信号を追加しても、既存の白黒テレビでそのまま視聴できる互換性が求められたのです。

この要件を満たすために、映像のフレームレートをわずかに落とし、音声や色信号が混線しないよう調整する必要がありました。その結果として、30fpsからわずかに遅い「29.97fps」が規格として採用されたのです。

つまりこの数値、何十年も前の放送機器の都合で生まれた“遺産”なんです。

カラー放送と引き換えに狂った時間軸:なぜ30じゃなくなった?

今では当たり前のカラー映像。でもその実現には、多くの“見えない犠牲”がありました。
29.97fpsという不思議な数字も、そのひとつです。

話は1950年代、アメリカのテレビ放送の転換期。
それまでのテレビは白黒が主流で、1秒あたり30フレームで映像を構成していました。ところが、カラー放送を導入するにあたり、白黒テレビにも互換性を保ちつつ色情報を付け足す必要があったのです。

そこで、音声・映像・カラー信号の干渉を防ぐための“精密な調整”が求められました。
その解決策が、「1秒あたりのフレーム数をほんの少し減らすこと」──具体的には30fpsから0.1%減の29.97fps
にする、というものでした。

このわずかな差が、カラー信号と映像信号の干渉を回避し、既存の白黒テレビでも映像が崩れないという画期的な妥協策だったのです。

ただしこの妥協は、時間軸に小さな歪みを生み出しました。
1時間番組を作れば、実時間よりも数秒ズレるという問題が必ずついてくることになります。
これは現代の動画編集にも影響し続けている、「ズレとの戦い」の始まりでもあったのです。


  • 白黒テレビ時代:30fpsで問題なし
  • カラー信号の追加:音と映像が干渉
  • 解決策:29.97fpsにわずかに減らすことで干渉回避
  • 結果:時間的なズレが発生するが、互換性は維持
  • 現代:この“ズレ”が編集現場の悩みにもつながる

黒→白→カラー:テレビ技術の進化と混乱

もともとテレビ放送は白黒が基本でした。白と黒の信号だけなら、処理も単純。30fpsで安定して運用できていました。

しかし、テレビの進化とともに「カラー映像」が求められるようになりました。色を映すには、輝度(明るさ)に加えて色差(赤と青の成分)信号を送る必要があります。

この色差信号を追加するときに問題になったのが、既存の白黒テレビです。
白黒テレビには色の概念がなく、色信号をうまく処理できません。
しかし全家庭に「買い替えてね」は非現実的。そこで生まれたのが、「カラー信号を混ぜつつ、白黒テレビでも正常に映るようにする」という無茶な要求でした。

その解決の一部が、フレームレートの微調整──つまり、29.97fpsです。

1秒に0.03フレーム足りないと何が起こるのか

「たった0.03フレームの違いで、何か変わるの?」
そう思うかもしれません。が、ここに落とし穴があります。

1秒あたり0.03フレーム少ないということは、1分で約1.8フレーム、1時間で約108フレームのズレが出てくるということ。これが蓄積されると、映像と音声のズレ、尺のズレとして現れるのです。

たとえばCMのタイミング、番組の切れ目、YouTubeの字幕やBGMのタイミング──
「うまく合わない…なんかズレてる?」という現象の多くは、このfpsの違いによるもの。

映像編集では、0.03の違いが「仕上がりの違和感」につながる。
それくらい繊細な世界で、私たちは編集をしているのです。

放送時間がズレる!?長時間番組のズレ問題

特に放送業界では、29.97fpsによるズレは“日常茶飯事”です。

たとえば1時間番組を制作する場合、本来なら60分 × 60秒 × 30fps = 108,000フレームで構成されるはず。
でも29.97fpsで計算すると、同じフレーム数でも尺は約3.6秒長くなってしまうのです。

この「ほんの数秒」の違いが、番組のエンディングの音楽がフェードアウトするタイミングを狂わせたり、CM枠がズレて広告主と揉める原因になることも。

そのためテレビ業界では、「ドロップフレームタイムコード」という特殊な方式で時間管理を行い、このズレを吸収しています。

つまり、放送では“29.97fpsありき”でスケジュールが組まれているというわけ。知らずに30fpsで編集して納品すると、思わぬ事故のもとになるのです。

編集者が覚えておくべき29.97fpsのリアルなリスクと活用法

29.97fpsという数値が歴史的背景から生まれたことは分かったとして──
では実際の編集作業で、私たちはこの数字とどう付き合っていけばいいのでしょうか?

結論から言えば、使うシーンを間違えると痛い目を見る可能性があります。
とくに初心者にありがちなのが、「素材は30fpsだけど、プロジェクト設定は29.97fpsのまま進行してしまう」というケースです。

一見すると「大丈夫そう」に見えます。でも実際には、音ズレ・尺ズレ・書き出しミスといった問題が起きやすくなります。
29.97fpsは、NTSC(アメリカのテレビ放送)規格に準拠する動画やDVD制作などに向いており、現代のネット動画(YouTubeやTikTokなど)では必ずしも必要ありません

また、YouTubeなどでは「30fps」と表記していても、実際は29.97fpsで再生されているケースが多く、ここもややこしいポイント。
知らずに編集し続けると、音楽やセリフのタイミングが徐々にズレていく現象に気づかないまま書き出しまで行ってしまうことも。

つまり──
29.97fpsは知っていれば怖くない。でも、知らずに扱うと事故る数字なんです。


  • 編集前に素材とプロジェクトのfpsを必ず確認
  • YouTubeやSNS用なら「30fps(実際は29.97)」で統一が無難
  • DVD制作や放送用動画は29.97fpsを選ぶ
  • 素材のfpsと異なるプロジェクト設定は避ける
  • 書き出し時にもfpsを明示的にチェックする
  • 特殊な場合(ドロップ/ノンドロップ)にも注意

よくあるミス:プロジェクト設定でのフレームレート不一致

初心者から中級者に上がるとき、誰もが一度は通る落とし穴が「フレームレート不一致」です。
たとえば、カメラで30fps(正確には29.97)で撮影した素材を、60fpsのプロジェクトに入れる。
または逆に、24fpsの映像に混ぜてしまう──これ、やりがちです。

見た目にはすぐ気づかなくても、音と映像が少しずつズレたり、カクつきが出たりします。
さらに、素材をタイムライン上でスローにしたりカットを多用すると、違和感がどんどん拡大します。

とくに29.97fpsは見慣れないだけに、「なんか変だな?」と思いながらもスルーしてしまうパターンが多いんです。
まずはプロジェクト設定を素材に合わせる──これだけで、トラブルの8割は防げます。

YouTubeやSNS用にはどのfpsを使えばいい?

SNSやYouTubeに投稿する動画では、「どのfpsが正解なのか」悩む方も多いですよね。

結論から言うと、29.97fps(=実質的な30fps)で統一するのが無難です。
YouTubeやTikTokなどの多くのプラットフォームは、アップロードされた動画を自動でエンコード(変換)し、その際に29.97fpsに変換されることも珍しくありません。

なので、素材・編集・書き出しをすべて29.97fpsに合わせておけば問題はほぼ起きません。

ただし注意点として、「本当に30.00fps」で撮影した素材もあります。
その場合、編集前にプロパティでfpsをしっかり確認し、設定を合わせることが重要です。

「どれを選んでいいかわからない…」というときは、素材に合わせて編集する。これが一番確実な方法です。

29.97を使うべきとき、使わなくていいとき

「そもそも、自分の動画は29.97fpsで作るべき?」
この疑問、動画編集者なら一度は感じます。

基本的には次のように考えるとわかりやすいです:

29.97fpsを“使うべき”ケース:

  • テレビ放送用コンテンツ(NTSC地域)
  • DVD制作(特にアメリカ向け)
  • 放送局への納品物

“使わなくていい”ケース:

  • SNS・YouTube用の短尺動画
  • Web広告やスライド動画
  • 動画講座や社内プレゼン資料

つまり、放送用 or ディスク納品があるときは29.97fps、それ以外は素材に合わせて選ぶというのがセオリー。

なんとなく「初期設定のままでいいか…」で進めるのではなく、「なぜこのfpsを使うのか?」を意識するだけで、仕上がりの信頼性がぐっと上がります。

もう怖くない!29.97fpsを味方にするための編集チェックリスト

29.97fpsが厄介なのは、「何も知らないまま使うとミスにつながる」こと。でも逆に、ポイントさえ押さえておけば、安心して使える設定でもあります。

むしろ、プロの現場では今でも日常的に使われており、29.97fpsを正しく扱えることで「お、この人わかってるな」と信頼されることも。

ここでは、動画編集初心者〜中級者が29.97fpsと上手く付き合うための実用的なチェックポイントを整理しました。
プロジェクトを始める前、書き出し前、素材を受け取ったとき──何をどう確認すべきか、このチェックリストでひと目で把握できます。

「ミスしたくない」「今さら人に聞けない」という方も、このリストを見ながら1つずつ確認すれば大丈夫。
29.97fpsを“怖い存在”から“信頼できる味方”に変えていきましょう。


  • 素材のfpsを必ず事前に確認する(プロパティ or メタデータ)
  • プロジェクト設定は素材fpsと一致させる
  • 素材のfpsが混在する場合は、変換して揃えるか高い方に合わせる
  • ドロップ/ノンドロップのタイムコード設定も確認(放送系素材の場合)
  • 書き出し設定でfpsが意図通りになっているか確認
  • YouTubeなどネット公開なら基本29.97で問題なし
  • 放送用・DVD納品なら必ず29.97fpsを選ぶ

fps確認のチェックポイント

動画編集でまずやるべきなのは、「素材のfpsを知ること」です。
撮影に使ったカメラやスマホ、もらった映像素材によって、fpsは意外とバラバラです。

確認方法は簡単。Windowsならファイルを右クリックして「プロパティ」→「詳細」、Macなら「⌘+i」で表示されるインフォメーションにfpsが載っています。
また、編集ソフト(Premiere ProやDaVinci Resolve)に素材を読み込めば、クリップ情報から確認可能です。

fpsを知らずに編集を始めると、タイムライン設定と食い違ってズレが生じる原因になります。
まずは“素材のfpsを知る”。これがすべてのスタートです。

素材とプロジェクトのfpsを合わせる意味

「素材が30fps、プロジェクトが29.97fps。まあ誤差でしょ?」と思っていませんか?
でも実は、それが音ズレや画面カクつきの原因になります。

素材とプロジェクトのfpsが違うと、編集ソフトは裏側で自動的に“補間”処理を行います。
この補間によって音が徐々にズレていく、映像がブレる、タイミングが狂うといった問題が発生するのです。

とくに音楽のタイミング、テロップの入れ方、映像のフェードなど、細かい調整をしているときに違和感が出やすくなります。

素材とプロジェクトのfpsは必ず一致させる
これが「後で困らないための編集者の鉄則」です。

書き出し設定で絶対に見るべきポイント

編集が終わって、いざ書き出し。
このとき、「fpsの設定を見落とす」というミスがかなり多いです。

特にPremiere ProやResolveなどの編集ソフトでは、プロジェクト設定とは別に書き出し設定にもfps指定項目があります。
ここで素材やプロジェクトと違うfpsを選んでしまうと、音ズレ・カクつき・再生の違和感が出てしまいます。

また、YouTubeなどのSNSに投稿する場合、書き出し時に“30fps”と表示されていても実際は29.97fpsになっていることもあるので、プレビューで確認することも大切です。

「どのfpsで書き出すか」を、最後に必ずチェックする。
このひと手間が、ミスを防ぎクオリティを守ってくれます。

まとめ:あなたが29.97fpsの謎に気づいた日

「なんで30じゃなくて、29.97なの?」──
その違和感から始まった今回の話。実はこの中途半端な数字には、テレビ放送の歴史、カラー信号の工夫、技術者たちの涙ぐましい努力が詰まっていました。

29.97fpsは、ただの数字ではありません。正しく理解し、場面に応じて使い分けることで、編集の安定感と信頼性がぐんと高まります。

知らなかったあなたは、今日ここで“映像編集者としてのレベル”が1つ上がったはずです。


✅今回の記事ではこんなことを書きました。以下に要点をまとめます。

  • 29.97fpsはNTSC方式による放送の都合で生まれた特殊な値
  • カラー信号との干渉を防ぐため、30fpsから微調整された歴史がある
  • 長時間動画では音ズレ・尺ズレなどのリスクを引き起こす
  • 編集時は素材とプロジェクトのfpsを必ず一致させることが大切
  • SNSやYouTube用動画でも、29.97fpsが基本になっていることが多い
  • 書き出し設定でのfpsチェックを怠らないようにしよう

fpsは“フレーム単位の約束事”。たった0.03の違いが、作品の仕上がりを大きく変えることがあります。
でもこの記事を読んだあなたなら、もう大丈夫。

次に編集ソフトを開いたとき、「29.97fps」の意味がちゃんとわかる自分が、ちょっと誇らしく感じるはずです。