──消費者が最初に学ぶべきマーケティング学
価格が上がっている。
理由は、需要増でも供給不足でもない。
多くの人はこう言うだろう。
「AI需要が爆発したから」
「在庫が足りないから」
「このタイミングで買わないともっと値上がりする」
だが、それは“説明”であって、“真実”ではない。
市場がいま動いている理由は、もっと単純だ。
人は、不足を前にすると理性より恐怖で動く。
Fear Driven Market──
この現象は、食料、燃料、医薬品、衛生用品、半導体、暗号通貨──
歴史の中で何度も繰り返されてきた。共通点はひとつ。
誰も本当に必要としていない段階で、
市場が勝手に“危機”を宣言する。
■ 人は「欲しいから買う」のではない
行動経済学では、購買の大半は次の感情で説明される。
- 取り残される恐怖
- 買えなくなる不安
- 他者が行動しているという同調圧力
- 未来の損失に対する予防行動
つまり人は、
欲しいから買うのではなく、
買わないことが“怖い”から買う。
これがFear Driven Marketの正体だ。
■ メーカーは煽らない。
煽らなくても消費者が勝手に踊るからだ。
面白いのは、
この種の市場では、売り手側は過度にプロモーションしない。
競合が煽り、SNSが拡散し、
消費者同士が正当化し、自ら火をつける。
売り手がやることは、ただひとつ。
笑顔で値札を書き換えるだけ。
■ 価格が壊れた瞬間、市場は心理戦に移行する
本来の価格体系が崩れた時点で、
需給バランスの議論には意味がない。
その瞬間から市場はこう変わる。
経済 → 心理
価格 → 雰囲気
需要 → 恐怖
価値 →「早く確保できたこと」へ
合理性はもはや存在しない。
あるのは、群衆心理が作った「焦りの空気」だけだ。
■ だから、最初に学ぶべきことはひとつ
買う理由を探す前に、
買わない理由を考えろ。
もしそれが言語化できないなら、
あなたが手を伸ばしているのは商品ではなく、
安心感という幻想だ。
■ Epilogue(あとがき)
市場は踊っている。
いや、踊らされていると言うべきか。
しばらくすれば価格は落ち着き、
今日慌てて買った人間は静かに目を背けるだろう。
そして私は、そのタイミングで
こう言うつもりだ。
「ほら、言っただろう?」

