Excelの時代は終わるのか? EU発のNextcloud OfficeとODFの静かな革命

Excelの時代は終わるのか? EU発のNextcloud OfficeとODFの静かな革命 TECH
EXCEL ERA IS CHANGING

Excelは30年以上、ビジネスの中心にあった。
表計算というソフトウェアの枠を超え、事実上「世界のデータフォーマット」と言ってもいい存在だった。

しかし最近、静かな変化が起きている。
欧州連合(EU)が公式文書フォーマットとして OpenDocument(ODF) を推進し始めたのだ。

EU forced to add open document option after criticism over Microsoft Excel template

これは単なるファイル形式の問題ではない。
Microsoft Office中心だった文書インフラに、別の選択肢が現れ始めている。

その中心にいるのが Nextcloud Office(Collabora) だ。


第1章 Excelはなぜ世界を支配したのか

まず前提として、Excelの成功は偶然ではない。

理由は3つある。

・圧倒的な普及率
・VBAによる業務自動化
・企業内データの事実上の標準

特に2000年代以降、多くの企業では

データ

Excel

レポート

という構造が当たり前になった。

Excelは単なる表計算ソフトではなく、
業務アプリケーションのプラットフォームだった。


第2章 しかし、Excel中心の世界は変わり始めた

ここ10年で、データの扱い方が変わった。

かつて

データ → Excel

だったものが、現在は

データ → API / DB / SaaS

へと移っている。

例えば

・BIツール
・データベース
・クラウドアプリ
・AI分析

こうしたツールが増えたことで、
Excelは「データの中心」ではなく

データの表示・交換ツール

に近い役割へ変化している。

実際、近年急速に増えているのは
Excelではなく Google Spreadsheet だ。

これは「ファイル」ではなく
共同編集データツールとして使われている。


第3章 EUがExcel依存を見直し始めた理由

2026年、EUはある出来事で議論を呼んだ。

政策意見募集のテンプレートが
Excel形式のみだったため批判を受けたのだ。

批判のポイントはこうだった。

公共文書なのに
特定企業のソフトに依存している。

結果としてEUは

・Excel形式
・OpenDocument形式

両方のテンプレートを公開した

これは小さな出来事に見えるが、
実はEUの長年の方針と一致している。

EUは以前から

デジタル主権
オープンソース
オープンフォーマット

を推進している。


第4章 ODFとは何か

OpenDocument Format(ODF)は
主にLibreOfficeなどで使われる文書形式だ。

特徴は

・仕様が完全公開
・特定企業に依存しない
・長期保存に向いている

政府機関にとって重要なのは
100年後も読めることだ。

企業フォーマットに依存すると
将来読めなくなるリスクがある。

このためEUでは

行政文書 → ODF

という流れが徐々に広がっている。

OpenDocument - Wikipedia

第5章 Nextcloud Officeという選択肢

ここで登場するのが Nextcloud Office

Nextcloud Officeは

Nextcloud

Collabora

LibreOffice

で構成されたオフィス環境だ。

特徴は

・ブラウザで編集可能
・共同編集
・完全オンプレミス運用

つまり

Google Workspace
Microsoft 365

と同じことが

自社サーバーでできる。

これはEUの「デジタル主権」と非常に相性が良い。

Nextcloud Office - Self-hosted online office suite
Nextcloud Office is a powerful online office suite with collaborative editing and supports all major document file forma...

第6章 Excelは本当に終わるのか

ここで誤解してはいけない。

Excelが消える可能性は低い。

特に

・金融
・製造
・会計

では依然として強い。

VBAやPowerQueryなど
Excel独自のエコシステムは巨大だ。

しかし役割は変わる可能性がある。

かつて

Excel = データ基盤

だったものが

Excel = レガシー互換ツール

になる可能性はある。


最終章 静かに進む文書インフラの変化

文書フォーマットは地味な技術だ。

しかし歴史を振り返ると
文明の基盤は常にフォーマットだった。

ASCII
Unicode
HTML

そして今

ODF

という選択肢が現れている。

Nextcloud Officeのようなツールは
この変化を象徴している。

Excelの時代が終わるかどうかはまだ分からない。
だが確かなことが一つある。

世界の文書インフラは
少しずつ、しかし確実に変わり始めている。

コラム─なぜ、Excelは「Open Format」なのに敬遠されるのか?

なぜ、Excelは「Open Format」なのに敬遠されるのか?

「Excelのファイル形式はオープン標準なのだから、問題ないのでは?」
そう思う人も多いだろう。

確かに現在のExcelファイル(.xlsx)は Office Open XML(OOXML) という形式で、2008年にISO標準として承認されている。形式だけ見れば、Excelはすでに「オープンフォーマット」だ。

しかし実務の世界では、政府や研究機関の一部がこの形式を避ける傾向がある。理由は単純な好き嫌いではなく、いくつかの技術的背景がある。

まず一つは、仕様の巨大さだ。

OOXMLの仕様書は数千ページに及び、歴代のMicrosoft Officeの挙動をそのまま取り込んでいる部分が多い。
そのため、仕様を読めば実装できるというよりは、

「Microsoft Officeの動作を再現する」

ことが前提になっている部分がある。

この構造のため、LibreOfficeなどの別ソフトで開いたときに

レイアウトが崩れる
関数が微妙に違う
マクロが動かない

といった互換問題が起きることがある。

つまり、形式は公開されていても

実質的にはMicrosoft Officeが基準になっている

という見方がされやすい。

もう一つの理由は、長期保存の問題だ。

政府や公的機関は、文書を数十年、場合によっては100年以上保存する必要がある。
このとき重要なのは

特定企業のソフトがなくても読めること

である。

そのためEUなどでは

企業フォーマット
ではなく
実装に依存しないフォーマット

が好まれる傾向がある。

その代表例が OpenDocument Format(ODF) だ。

ODFはLibreOfficeなどで使われる形式で、仕様が比較的シンプルで、特定ソフトへの依存が少ない設計になっている。

このため

Excelが使えないから避ける
のではなく

将来の互換性を重視して選ばない

という判断が行われることがある。

実際のところ、Excelは今でも圧倒的に普及している。
しかし政府や公共機関の世界では、少しずつ

Excel中心
から
フォーマット中立

へと軸が移り始めている。

それは、静かな変化ではあるが、確実に進んでいる。

Excelが嫌われているわけではない。
依存が嫌われているのだ。