かつてのLinux印刷は“地雷原”
1. かつてのLinux印刷は“地雷原”
「ドライバがない」「文字化けする」「スキャンが動かない」──Linux黎明期、印刷は最も厄介な領域のひとつでした。
CUPS(Common Unix Printing System)は当時“救世主”として登場したものの、設定の煩雑さやメーカー依存の壁は厚く、現場では「印刷だけはWindowsで」という声も多かったのです。
2. AppleからOpenPrintingへ──新しいCUPSの時代
現在のCUPSは、Appleによる開発を経て、Linux Foundation傘下のOpenPrintingプロジェクトが主導。
この移行により、長らく停滞していた更新が再始動し、IPP Everywhere対応が急速に進みました。
IPP(Internet Printing Protocol)対応機器であれば、ドライバレスでの印刷が可能に。
もはや「プリンタドライバを探す時代」は過去の話になりつつあります。
3. 主要メーカーのLinux対応が急速に進化
各社の対応状況をざっくり整理するとこうです。
| メーカー | 対応状況 | 備考 |
|---|---|---|
| HP | ◎ HPLIPによる強力サポート | GUI設定可能。スキャン対応も安定。 |
| Epson | ○ 公式ドライバを提供 | A4機中心にIPP対応が進行。 |
| Brother | ○ CUPS+独自ドライバで広範囲に対応 | 複合機でも動作報告多数。 |
| Canon | △ 機種依存あり | 新機種は比較的良好。Pixus系は要確認。 |
| Ricoh / FUJIFILM | △ 企業向け複合機でCUPS PPD提供 | 企業用途に現実的な選択肢。 |
数年前のように「Linuxでは印刷が動かない」という時代ではありません。
“9割動く、1割は少し工夫が必要”──その程度の距離感です。
4. GUIも整い、設定が驚くほど簡単に
UbuntuやFedoraなどの主要ディストリビューションでは、
プリンター設定が「設定 → プリンターを追加」で完結。
CUPSは裏で動作しているだけで、ユーザーが直接触れることはほとんどありません。
古くはターミナルで lpstat -t なんて叩いていた時代が嘘のようです。
5. CUPSは“標準インフラ”へ
CUPSはもはや特別な存在ではなく、Linuxの当たり前の一部となりました。
印刷は“できるかどうか”から“どれだけ快適にできるか”のフェーズへ。
企業でも、IPP対応機を選ぶことでWindowsに依存しない印刷環境が十分構築可能です。
6. まとめ:Linuxでも印刷はもう怖くない
CUPSは、Linux印刷の混沌を終わらせた標準技術です。
メーカー側の対応も整い、GUIも成熟し、今では“印刷できない”と言うほうが珍しい。
Linuxで印刷はもう怖くない──それが2025年の現実です。
【補足】CUPS・IPP・OpenPrinting 用語解説
・CUPS(Common Unix Printing System)
LinuxやmacOSで使われる印刷管理システム。プリンターの追加・印刷キュー管理・ジョブ監視を担う。もともとAppleが主導し、現在はLinux Foundation傘下のOpenPrintingがメンテナンス。
・IPP(Internet Printing Protocol)
ネットワーク経由で印刷ジョブを送受信するための標準プロトコル。双方向通信で用紙残量やエラー状態の取得も可能。TLSによる暗号化などのセキュリティ機能を備える。
・IPP Everywhere
ドライバレス印刷を実現するIPPの拡張規格。対応プリンターならOS標準機能だけで用紙サイズ・両面印刷・解像度などを扱える。近年のHP/Brother/Epson機で対応が進む。
・OpenPrinting
Linux Foundationが運営する印刷関連プロジェクト群の総称。CUPSやFoomatic、Ghostscriptなどの基盤技術の維持と普及を主導し、ドライバレス化(IPP Everywhere)の標準化も推進している。


