なぜ今、クラウド依存は“経営リスク”として問われているのか

TECH

2025年10月、AWSに続きAzureでも大規模障害が発生した。

だが、いま問われているのは「どのクラウドが落ちたか」ではない。
“クラウドに依存する社会構造そのもの”が、どれほど脆いか──そこに焦点を当てるべきだ。


技術トラブルではなく「経営の盲点」

クラウド障害は技術的な偶発事故ではない。
それは、企業の意思決定がもたらした構造的リスクの表面化だ。

多くの企業がクラウドを「安全・拡張性・コスト削減」の三拍子で導入してきた。
だが現実には、SaaS、PaaS、IaaSのすべてが同一事業者の基盤上で集中運用されている。
つまり「マルチクラウド」の看板を掲げても、その裏でDNS、認証、CDNが一本化されていれば、
リスクの本質は“単一障害点”として残り続ける。


停止リスクを「技術部門の問題」と片づけるな

今回のような障害では、IT部門は迅速に対応しようと奔走する。
しかし、本質的な問いはこうだ。

「システムが止まった時、事業はどの程度の時間で復帰できる設計になっているのか?」

この問いに即答できない企業は多い。
それは、障害シナリオを“経営課題”として棚上げしてきたからだ。

BCP(事業継続計画)に「クラウド障害時の代替策」を明記している企業は少ない。
オンプレ時代には当たり前だった「二重化・代替ルート・バックアップ体制」を、
“クラウドだから大丈夫”の一言で削除してしまった企業も少なくない。


クラウドに「完全な可用性」は存在しない

クラウドは「止まらない」ことを売りにしてきた。
だが、分散の仕組みも、運用するのは結局“人間”だ。
構成変更、更新ミス、設定エラー──障害の多くは人為的だ。

マイクロソフトもAWSも、障害の根本原因として「構成不整合」「認証まわりのデグレード」「キャッシュの破損」など、
運用設計の一瞬の綻びを挙げている。
技術が高度化すればするほど、ひとつの設定変更が地球規模の影響を及ぼす。
つまり、“分散化が進むほど集中リスクが高まる”という逆説が生まれているのだ。


いま求められる「クラウドBCP」の発想転換

経営層が今すぐ考えるべきは、次の三点だ。

  1. 単一クラウド依存の棚卸し
     自社システムがどこまで特定ベンダーの上に乗っているかを可視化する。
  2. クラウド横断の復旧ルート確保
     DNS・認証・ストレージなど、“地盤”を分ける設計に改める。
  3. 経営層レベルでの障害訓練
     「社長が10分で意思決定できるか」が、BCPの成否を分ける。

クラウドを使うこと自体が悪いのではない。
だが、「止まらない」前提で経営計画を立てることは、もはや時代遅れだ。


経営が握るべき「クラウド主権」

AWSでもAzureでも、障害のたびに我々は同じことを学んでいる。
「クラウドの上に社会がある」──その構造自体がリスクなのだ。

システム設計の問題ではない。
経営の主権、つまり“どこまでを他社に委ね、どこまでを自社が握るか”という線引きを明文化しなければならない。
これを決められるのは、経営者だけだ。


結びに

クラウドの恩恵は計り知れない。
だが、その裏に潜む集中リスクは、いまや国家・企業・個人すべてに影響を及ぼすレベルに達した。

「クラウドをどう使うか」ではなく、「クラウドにどう依存しすぎないか」──
その問いを経営課題として再定義する時が来ている。