その顔認証、合法?アウト?──改正個人情報保護法が変える日常

その顔認証、合法?アウト?──改正個人情報保護法が変える日常 TECH

「その顔認証、合法?」改正個人情報保護法で変わる運用ルール

スマートロック、勤怠管理、マンションエントランス、防犯カメラ、そして空港や自治体サービスまで──
顔認証はすでに「一部の先端技術」ではなく、生活と業務に深く入り込んでいます。

しかし、この便利な仕組みが普及する一方で、法制度は急速に“追いかけはじめた”段階です。

2025年に向けて進む個人情報保護法の改正では、顔認証データが従来より明確に規制対象として定義され、企業や組織の運用・取得方法に影響が及びます。

つまりこれからは、

「使えるか」ではなく、「使っていいか」が問われる時代になります。

本記事では、法律の枠組みを整理しながら、企業・自治体・事業者が直面する判断ポイントと注意点をわかりやすく解説します。


第1章|顔認証データは法律上、何に分類されるのか

まず押さえるべき最初のポイントは、
顔写真・映像・認証データがすべて同じ扱いではないということです。
改正法では、顔認証データは段階的に分類され、扱い方が異なります。


■ ① 単なる画像(例:防犯カメラの通行映像)

📌 分類:個人情報の可能性あり

そこに写っている人物が「識別できるかどうか」が判断基準です。

  • 氏名表示がある
  • 顔が明確に映り、他情報と照合可能
  • 特定個人が継続監視される構造である

これらが揃う場合、個人情報として扱う必要があります。


■ ② 顔特徴量データ(AIが数値化した顔ベクトル)

📌 分類:個人識別符号(=特に厳格な扱い)

顔の特徴点を抽出し、本人照合に使用可能な形で保存・利用する場合、これは“単なる画像”ではなく加工された生体識別情報扱いになります。

例:

データ形態法律上の扱い保存例
JPEG/PNG画像個人情報(条件付き)監視カメラ映像
顔特徴量・テンプレート個人識別符号(保護対象強)勤怠・開錠システム
クラウド送信データ個人情報+越境移転規制中国系スマートカメラ

■ ③ 認証結果(例:OK/NGだけを記録)

📌 分類:ケースバイケース

「識別可能性が残っているか」が判断基準です。

  • “開錠ログ + 顔特徴のID紐付け” → 個人情報扱い
  • “成功/失敗 だけ” → 非個人情報になる可能性

ただし、他のログ(勤怠情報・氏名データベースなど)と紐づく場合はアウトです。


✔ まとめ:分類はこう整理できます

データ種別分類規制強度
映像のみ個人情報(条件付き)
顔特徴量/テンプレート個人識別符号
認証結果のみ場合による低〜中

📌 ここで重要なのは、企業側が「自社が扱う顔認証データがどの分類に該当するのか把握しているかどうか」です。

多くの企業は、「機能として導入」→「扱っているデータの法的性質を把握していない」状況にあります。



次章では、今回の改正で何が変わるのか
そしてどこからが“違法運用”になるのかを整理します。

第2章|2025年改正で何が変わるのか──義務化・禁止・例外の整理

今回の改正を理解するうえで重要なのは、
「顔認証データは、一般データではなく“特別扱いカテゴリー”に分類された」
という点です。

これにより、企業・組織が行うべき対応は次の3点に整理されます:


① 利用目的の明確化(曖昧な記載は禁止)

従来:

「安全のため、防犯目的で使用します」

改正後:

「本人確認・解錠・入退室管理のために、顔特徴量データを取得・保存し、◯年間保管します」

つまり、
「何に使うか」ではなく「どのデータを・どこまで・どう扱うか」を書かなければいけません。


② 本人同意の“取得方法”まで規定対象になる

重要なのは、単に同意が必要という話ではなく、

“本人に拒否権がある状態で取得しなければならない”

点です。

つまり、

  • 申込書に「同意済チェックがデフォルト」
  • 入館時に「カメラ前を通ると自動登録」
  • 退職者・解約者のデータを削除しない

などは、違法または違法に近い運用となります。


③ 利用期間・保存期間・削除義務が明確化

📌 改正法では、目的外利用の禁止が強調されます。

例:

行為適法性理由
入退室管理のため保存目的に沿う
退職後もデータ保持目的外・削除義務
マーケ分析に再利用同意事項を超えている
クラウドAIに送信要同意越境移転規制が発動

特に、クラウド型スマートロックや中国系監視カメラを導入している企業では、
ここが最大のリスク領域になります。


④ 越境移転規制が実質強化される

外資・中華系クラウド利用時の判断基準は次の通りです:

  • どの国に送られているか
  • その国の法律・監視制度
  • 第三者に提供される可能性

ここで、中国の「国家情報法」「データ安全法」が実務で問題になります。

“企業が収集したデータは、国が要求すれば提供義務がある”

これは、日本のコンプライアンス担当者が最も避けたい構造です。
つまり──

「データは国内管理できるか?」が導入判定の基準に変わる。

Matter、HomeKit Secure Video、Edge AI解析……
こうした技術トレンドが法制度と噛み合う瞬間が、まさに今です。


第3章|ケース別判定:合法/グレー/アウト

ここからは、実際の利用シーンで判断基準がどう変わるかを、表形式で整理します。

利用シーン判定理由
スマホ(Face ID / Pixel Face Unlock)本人専用・ローカル処理
企業の勤怠・入退室管理△→⭕(条件付き)同意・目的・削除・国内保管が前提
マンションのエントランス顔認証住民と来訪者の同意方法が違う
商業施設での顧客動線分析×顔認証マーケ利用は本人同意が必須
自治体の防犯AIカメラ⭕/△公共利益と透明性の両方が必要

企業側は、「便利だから導入」ではなく「合法的に扱えるか」を先に判断する必要があります。


第4章|企業が今すぐ整備すべきチェックリスト

最後に、導入済み・検討中の企業が確認すべき項目をまとめます。

項目チェック内容
🟩 目的用途が具体化されているか / 曖昧表現が残っていないか
🟩 同意拒否権・説明・再同意・撤回方法が設計されているか
🟩 保存保管期間・削除ポリシー・退職者データの扱い
🟩 管理クラウドかローカルか / 越境移転の有無
🟩 運用ログ・監査・再利用禁止・委託先契約の整備

結び──便利さの代償は、“ルールの理解”で支払う時代

顔認証は、もはや「未来の技術」ではありません。
すでに社会に浸透し、制度と倫理が追いつこうとしている段階です。

これから重要になるのは、技術ではなく判断です。

“できる”から使うのではなく、
“許される形で使えるか”を考える社会へ。

そしてその境界線を決めるのは、技術ではなく人間の合意とルールです。