性能が足りないのではない。
電力が足りない。
◆ かつて:性能が正義だった
2000–2010年代、GPU の競争軸はひとつだった。
「フレームレートが上がるか?」
- コア数を増やせ
- クロックを上げろ
- パイプラインを太くしろ
消費電力は 付随的な問題 だった。
性能を上げるためなら、電力は犠牲にしてよい。
GPU業界の暗黙の了解だった。
◆ 2020年代:電力が支配する
突如として、競争軸が逆転する。
「電力が確保できるか?」
理由は3つある。
- 大規模データセンターが電力逼迫している
- AI 冷却コスト → 電力料金が GPU と同じ規模になった
- サーバー1台あたりのGPU搭載数が極端に増加
NVIDIA A100 / H100 は 1枚 350W〜700W
1ラックに 数十〜百枚 → 電力だけで数十 kW。
もはや、
GPU は電力インフラの制約下に置かれる。
◆ 性能(Perf)→ 消費電力(W)→ 性能/電力(Perf/W)
2020年代の GPU の KPI は変わった。
| 時代 | KPI | 主語 |
|---|---|---|
| 2010年まで | 性能(Perf) | GPU |
| 2020年〜 | 性能/電力(Perf/W) | データセンター |
「電力がなければ GPU を置けない」
つまり、性能より電力が優先される。
◆ ハイブリッド化 ─ GPUが“なんでも屋”をやめた
1つの巨大GPU にすべてを詰め込む戦略は終わった。
代わりに、用途ごとの 分業(ハイブリッド) が進む。
- GPU:汎用・高速・柔軟
- TPU / NPU / AI ASIC:特化・省電力
- FPGA:制御や専用処理、大規模ネットワーク
Google の TPU が象徴だ。
GPU が AI を生んだが、
AI は GPU に「効率」を求めた。
◆ GPU × CPU × 専用チップ ─ 混成構造にシフト
以前:1 GPU が全てを担った
現在:GPU は “AIの心臓” に専念する
代わりに周囲を:
- CPU が制御し
- NIC / Switch がクラスタ性能を上げ
- 専用AI ASIC が推論を担当する
GPU は 中心だが万能ではない。
◆ 2020年代の GPU 設計思想
| 時代 | 設計思想 |
|---|---|
| 〜2015 | 計算ユニットを増やせ |
| 2016〜2019 | AI向けに最適化(Tensor Core) |
| 2020〜 | 効率とスケール。電力と冷却が制約になる |
問題は性能ではない。
「回せる電力が足りない」 のである。
◆ 土地と電力を求めて動くデータセンター
2023〜2025年、世界で異常な現象が起きた。
- hyperscaler(AWS / Azure / Google)が土地を買い始めた
- データセンター立地の条件が**「電力が取れるか」** に変わった
「土地」 → 「GPU」 → 「電力」が制約に
◆ 第8章の結論
GPUは進化したのではなく、変質した。
速さではなく、持続可能性へ。
性能ではなく、効率へ。
単体ではなく、ハイブリッドへ。
GPUは文明のインフラであり、
インフラは “効率” が支配する。
そして次のステージへ続く。

