ガートナージャパンが10月15日に発表した最新調査によると、国内のソフトウェア開発従事者のうち、約半数がAIを日常的に業務へ活用しているという。
もはや「試しに使う」段階を越え、AIが開発組織の生産性と品質を左右する中核技術となりつつある。
本稿では、この調査結果をもとに、企業経営にとっての示唆を読み解く。
第1章 AIは“開発現場の標準装備”へ
調査では、要件定義からプロジェクト管理まで9工程すべてでAIが利用されており、使用率は31.8~49.0%に達した。
中でもコード生成(49%)、コードレビュー(40%)、要件定義(39.8%)と、開発サイクルの核心部分への浸透が進む。
わずか1年前、同調査での利用率は20%前後だったことを考えると、まさに“爆発的普及”と言っていい。
この1年で急速にAI活用が進んだ背景には、GitHub Copilot、Claude Code、Gemini Code Assistなど、企業導入を前提とした安全性・管理性重視のツールが整ってきたことがある。
結果、個人の好奇心ではなく、組織的な生産性向上施策としてAIが導入され始めた。

第2章 経営課題としての「AI開発マネジメント」
注目すべきは、開発者の9割近くがAI活用に肯定的である一方、課題としてセキュリティ(31.3%)、ライセンスリスク(26.4%)、**保守性(25.6%)**を挙げている点だ。
つまり、AI活用は「やらない理由」よりも「どう管理するか」というフェーズに移った。
ここで問われるのは、
- 生成コードのセキュリティ監査体制
- 知的財産(ライセンス、著作権)リスクへの備え
- 継続的改善を可能にする教育と評価指標の設計
といった経営ガバナンスの再設計である。
AIが開発を高速化しても、品質と法的リスクをコントロールできなければ、企業価値を毀損する可能性すらある。
第3章 “要件定義AI”が変える組織構造
要件定義フェーズでのAI利用が、前回14.4%→今回39.8%と急増している。
これは、エンジニアだけでなく企画・営業・経営層がAIと対話しながら仕様を詰める時代の到来を意味する。
自然言語入力で仕様書を生成し、コード設計やテスト項目まで自動展開する──
この構造は、開発と経営の距離を劇的に縮める。
AIが「翻訳者」として、経営意図を技術仕様へ変換するハブの役割を担い始めているのだ。
第4章 「AIを使う組織」から「AIで設計する組織」へ
Gartnerのデータが示すのは単なる技術トレンドではない。
AI開発の浸透は、組織の意思決定構造・教育体制・法務戦略にまで波及する。
これからの企業に求められるのは、
- AI活用を中心に据えた開発プロセス再設計
- AIリスク管理を含む開発ポリシーの明文化
- 社員教育と評価制度の更新
という“経営としてのAI対応”だ。
AIを使うことが目的ではなく、AIを組織文化に内包できるかが競争力の分かれ目になる。
まとめ
AIがソフトウェア開発の現場を変えた。
次に変わるのは、経営そのものだ。
AI導入はもはやIT部門の専権事項ではなく、経営戦略とガバナンスの議題である。
ガートナー調査は、その現実を静かに突きつけている。

