2段階認証は必須! お金を失わないための自衛術

2段階認証は必須! それでも未対応サービスに備える自衛術 HowTo

なぜ今「2段階認証」が必須なのか

ネット証券で相次ぐ不正アクセス事件を受け、補償のあり方が議論になっています。NHKの報道によれば、証券会社は「2段階認証を設定していなければ補償しない」と一律に決めているわけではなく、IDやパスワードの管理状況などを踏まえ、個別に補償可否を判断しているといいます。読売新聞の報道では、実際に「補償を半額に限定した」のは一部の会社にとどまるとされます。

一方で、対面型の証券会社の中には「一部または全額補償」をうたうケースもあり、同じ金融商品でもチャネルや事業者によって補償姿勢は異なります。必ずしも横並びではないという点は利用者が理解しておく必要があるでしょう。

銀行の不正送金対応を見ても、「重大な過失」があれば補償対象外とされる事例があります。金融庁の統計では、2019〜2022年度に発生した不正送金被害のうち、8.2%が補償対象外でした(日本経済新聞)。古いOSを使い続けるなどセキュリティを軽視すれば「過失」とみなされ、補償が制限されるリスクも否定できません

こうした状況を踏まえると、補償を当てにするのではなく、まずは自分自身の危機管理を強化することが欠かせません。本記事では、二段階認証の実態と、未対応サービスにどう備えるかを整理し、読者がすぐに実践できる自衛術をご紹介します。

二段階認証の基本と主流の組み合わせ

二段階認証(2FA)は、文字通り「2種類の異なる要素を組み合わせて本人確認を行う仕組み」です。セキュリティの世界では古くから 知識要素(パスワードなど)所持要素(スマホやトークン)生体要素(指紋や顔など) に大別されており、このうち2種類を同時に使うことで突破が格段に難しくなります。

実際に広く使われている組み合わせを整理すると、次のようになります。

  • パスワード+SMSコード
    もっとも古典的な方式です。ログイン時に送られてくるSMSの数字を入力するパターンですが、近年は「SIMスワップ」や転送攻撃が問題視され、徐々に廃れつつあります
  • パスワード+認証アプリ(TOTP)
    Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどに代表される方式です。30秒ごとに変わるワンタイムパスワードを入力するもので、現在の標準的な手法と言えます。
  • パスワード+プッシュ通知承認
    「このログインはあなたですか?」という通知をスマホに送り、ワンタップで承認する方式です。利便性が高く、MicrosoftやOktaなどが採用しています。
  • パスワード+ハードウェアキー
    YubiKeyなどの物理キーをUSBやNFCで接続して使うタイプです。フィッシングにも強く、政府機関や大企業で推奨される“ゴールドスタンダード”です。
  • パスワード+生体認証
    指紋や顔認証を利用する方式です。スマホやPC内のセキュアチップを利用するため安全性が高い一方で、「生体情報は一度漏れると変更できない」という特性に注意が必要です。

全体のトレンドとしては、かつて主流だったSMS認証から、アプリ型や物理キー型にシフトが進んでいます。特にハードウェアキーは、従来の「偽サイトに入力されて盗まれる」リスクをほぼ遮断できる点で注目を集めています。

まだまだ危ない二段階認証未対応サービス

二段階認証はもはや標準」というイメージが浸透していますが、現実にはいまだに対応していないサービスが数多く存在します。特に生活に密着したサービスや、古くから運用されているシステムでは「ユーザー名とパスワードだけ」でログインが完結してしまう例は枚挙に暇がありません。

  • 中小規模のECサイト・会員制サービス
    自社開発のショッピングサイトや予約システムなどは、コストや利便性を理由に二段階認証を導入していないケースが少なくありません。パスワードリスト攻撃の格好の標的になります。
  • 自治体や公共系の古いオンラインシステム
    図書館カード、自治体の電子申請、地域ポータルなど、古い基盤のまま運用されているサービスは意外と多く、二段階認証が未対応のまま残されています。
  • フリマ・駐車場予約・習い事アプリ
    日常で便利に使われる小規模アプリにも、パスワード認証だけで決済情報を扱うものがあります。もしID・パスワードが漏れれば、直接的な金銭被害につながりかねません。
  • X(旧Twitter)のSMS認証廃止
    大手サービスであっても油断はできません。Xは2023年以降、無料ユーザーのSMS認証を廃止しました。理由はコスト削減とSMS自体のセキュリティ問題とされていますが、結果的に無料ユーザーはアプリ認証や物理キーへ移行せざるを得なくなっています。

このように「大手サービス=安全」「中小サービス=危険」とは一概に言えません。むしろ利用者が意識すべきは「自分がよく使うサービスが二段階認証に対応しているかどうか」です。思い込みで安心せず、一つひとつ確認することが求められます。

二段階認証がなくてもできる自衛策

「このサービス、二段階認証が使えない…」そんな場面もまだまだ多いのが現実です。だからといって無防備に利用するのではなく、利用者側でも取れる自衛策があります。基本的な工夫だけでも被害の可能性を大きく減らすことができます。

  • 強力なパスワードを設定する
    12〜16桁以上のランダムな文字列にするだけで、総当たり攻撃の現実的な脅威はほぼゼロに近づきます。特にWordPressやメールなどの「攻撃を受けやすいアカウント」は長さ重視で守りましょう。
  • パスワードの使い回しを避ける
    どこか1つのサービスで漏洩すると、同じ組み合わせで他サービスにも突破されてしまいます。パスワードマネージャーを利用して、サービスごとに異なるパスワードを設定するのが現実的な解決策です。
  • 環境を最新に保つ
    サポート切れのOSや古いブラウザを使い続けると、金融機関によっては「過失」と見なされるリスクがあります。Windows 10も2025年10月にサポート終了が予定されており、アップデートを怠れば補償を受けられない可能性すら否定できません。
  • WAFやCDNを活用する
    自分でサイトを運営している場合は、Cloudflareなどの無料WAF/CDNを前段に置くだけでも、総当たり攻撃やボットアクセスをかなり減らせます。
  • 怪しいメールやSMSを開かない
    不正アクセスの入口は「フィッシング」が圧倒的に多いのが実情です。GoogleのGmailは迷惑メールの検知精度が高いため、自前ドメインのメールもGmailで受信すると防御力が上がります現状もっとも有効な対策のひとつです

二段階認証が利用できない場合でも、「強いパスワード」「最新の環境」「怪しいリンクを開かない」という基本を徹底することで、被害を最小限に抑えることは十分可能です。

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強力パスワード生成ツール
≈ — bits
推奨:16文字以上。生成は端末内で完結し、外部送信は行いません。

長くて複雑なパスワードを人が考えるのは困難ですが、このようなジェネレーターを活用すれば一瞬で作成できます。記号入り16桁のパスワードなんて..と思った方、生成したパスワードは必ずパスワードマネージャーに保存すれば、大した煩わしさもありませんよ。

まとめ:矜持としての自己防衛

ネット証券の不正アクセス事件や銀行での補償制限の動きは、利用者に「セキュリティは自己責任の時代」という現実を突きつけています。二段階認証が導入されているサービスでは必ず有効化し、未対応サービスにおいても強力なパスワードや環境の最新化など、自分でできる対策を徹底することが欠かせません。

金融業界は「過失があれば補償なし」というスタンスを強めています。つまり、怪しいメールを開いたり、古いOSを使い続けたりすれば、その行為自体が「重大な過失」と判断されかねません。補償を期待するのではなく、補償されなくても被害を受けない状態をつくることこそが、最善の危機管理です。

二段階認証と強力なパスワードの組み合わせは、自動車でいえばシートベルトとエアバッグにあたります。事故を完全にゼロにはできませんが、被害を最小限に抑える備えになります。利用者側の矜持として、今できる対策を怠らないことが、これからの時代の必須条件なのです。