WindowsからLinuxへの移行に失敗する人のリアル

WindowsからLinuxへの移行に失敗する人のリアル TECH
これは、業務のモダン化がどこまで進んでいるかのチェックリスト

序章:Windows 11に行けた人は、この記事の対象じゃない

まず最初に、はっきり線を引いておきたい。

Windows 11に無事アップグレードできた人は、この記事の対象ではない。
そのまま使い続けたほうがいい。少なくとも当面は、それが一番安全で、一番安く、一番トラブルが少ない選択だ。

問題は、Windows 10のサポート終了という現実を前にして、

  • 「まだ動いているから大丈夫だろう」と思っている人
  • 「新しいPCは買いたくないから、何とか延命したい」と考えている人
  • そして、「Linuxにすればワンチャンあるはず」と“希望”にすがろうとしている人

この層だ。

はっきり言うと、ここが一番事故りやすい

Windows 10は、サポートが切れた瞬間に「すぐ爆発する」わけじゃない。
普通に起動するし、Excelも開くし、ブラウザも動く。
だから人はこう思ってしまう。

「まだ使えるじゃないか」と。

でも、それは「動いている」と「使っていい」が別物だという話を、意図的に無視している状態でもある。
サポート切れOSは、節約でも合理化でもない。ただのリスクの先送りだ。

そこで次に出てくるのが、Linuxという選択肢だ。

  • 無料
  • 軽い
  • 古いPCでも動く
  • セキュリティも大丈夫そう

こう聞くと、どうしても“魔法の延命薬”に見えてしまう。
しかし、ここに一番大きな誤解がある。

Linuxは、業務の現実を帳消しにしてくれるOSではない
プリンタ依存も、Excelマクロも、Access業務も、Windows前提のツール群も、
何ひとつ「なかったこと」にはならない。

そして実際の現場では、準備不足のままLinuxに飛び込み、

  • 印刷が回らない
  • 業務アプリが動かない
  • 運用が崩れる
  • 結果、「Linuxは使い物にならない」という感想だけが残る

という光景が、ほぼ同じ形で何度も繰り返されている。

でも、それは本当にLinuxの問題なのか?
それとも、現実の見積もりを間違えた結果なのか?

この記事では、
「WindowsからLinuxへの移行に失敗する人たち」が、どこで、なぜ、どうやって転ぶのかを、できるだけ具体的に見ていく。

結論を先に言ってしまうと、
Linux移行の成否は、OSの性能や出来不出来で決まることはほとんどない。
決め手になるのは、業務の構造と、その現実を直視できているかどうかだ。

前回は、Linuxという選択肢を「やさしく」紹介した。
今回は、その選択肢に何も準備せずに飛び込むと、だいたいこうなるという話をする。

夢を見るな、とは言わない。
でも、夢を見る前に、足元を見よう
この先に出てくるのは、そのための“現実の地図”だ。

第1章:サポート切れWindowsを使い続けるという“静かな破滅”

Windows 10のサポートが切れたあとも、PCは普通に起動する。
Excelも開く。ブラウザも動く。印刷も、たぶんできる。

だから多くの人は、こう思う。

「まだ使えるじゃないか」と。

ここが最初で最大の勘違いだ。

サポート切れOSというのは、
「動かないから危険」なのではない。
「動いてしまうからこそ危険」なのだ。

セキュリティ更新が止まったOSは、

  • 新しい脆弱性が見つかっても修正されない
  • マルウェア対策は後追いになる
  • ブラウザや周辺ソフトの更新も、いずれ噛み合わなくなる
  • それでも見た目は“普通に動く”

つまり、地雷原の上を、何事もない顔で歩いている状態になる。

しかもこのリスクは、本人だけの問題で終わらない。

  • 取引先の情報を扱っていないか
  • 社内ネットワークにつながっていないか
  • クラウドサービスにログインしていないか
  • メールを受け取っていないか

どれか一つでも当てはまるなら、
そのPCは立派な侵入口になり得る。

「うちは小さい会社だから狙われない」
「個人利用だから関係ない」

残念だけど、今どき攻撃は“狙って”こない
自動化されたスキャンが、穴の空いたところを機械的に殴るだけだ。
古いOSは、その“穴が開いたまま放置されている的”に過ぎない。

それでもなお、

  • 新しいPCは買いたくない
  • Windows 11は動かない
  • でも仕事は続けたい

こういう事情があるのは分かる。
分かるが、それはリスクが消える理由にはならない

ここでよくある自己正当化が、

「とりあえず、そのまま使い続ける」

という選択だ。

これは節約でも、合理化でも、現実的対応でもない。
ただの“事故の先送り”だ。

しかも厄介なのは、
この“先送り”は、何も起きなければ「正解だったように見える」ことだ。
半年、1年、何も起きなければ、「ほら、問題なかったじゃないか」と思ってしまう。

でもそれは、
シートベルトなしで高速道路を走って、たまたま事故らなかったのと同じ話だ。

そして、ここで次に出てくるのが、だいたいこの発想。

「じゃあ、Linuxを入れればいいんじゃないか?」

確かに、サポートは続く。
確かに、無料だ。
確かに、古いPCでも動くことが多い。

だが、ここで一度立ち止まらないといけない。

サポート切れWindowsに居座るのも危険だが、
何も準備せずにLinuxに飛び込むのも、別の意味で危険
だ。

なぜなら、
問題の本質は「OSが古いこと」ではなく、
そのPCが背負っている“業務の構造”だからだ。

Linuxは、魔法の延命薬じゃない。
そこを勘違いした瞬間から、失敗ルートに片足を突っ込むことになる。


ここまで読んで、「ちょっとマズいかも」と思ったなら、
あなたはすでに平均よりだいぶITリテラシーが高い層にいる。

はっきり言っておくと、
この記事にたどり着いて、ここまで読めている時点で、あなたは少し幸運だ。

なぜなら、ほとんどの人は、自分が危険な道を歩いていることすら“知覚できていない”からだ。
「まだ動いている」「今まで大丈夫だった」「たぶん今回も大丈夫」
そうやって、何も起きていない“今”だけを見て、静かに地雷原に足を踏み入れていく。

危機は、音もなく近づく。
サポート切れOSは、ある日突然爆発する爆弾じゃない。
気づいたときには、もう逃げ場がないタイプのトラブルを連れてくる。

この記事を読んでいるあなたは、少なくとも「考えるタイミング」を手に入れている。
それだけでも、だいぶマシなスタートラインだ。

次の章では、
なぜ人はここで「Linuxなら何とかなるはずだ」という“夢”を見てしまうのか、
そしてその夢が、どこで現実と衝突するのかを、もう少し冷静に見ていこう。

第2章:なぜ人はLinuxに“夢”を見てしまうのか

Windows 10のサポート終了が迫り、
でもWindows 11には上げられない。
新しいPCを買う余裕も、今すぐにはない。

この状況に追い込まれたとき、多くの人の頭に浮かぶのがこういう言葉だ。

「Linuxなら、無料で、軽くて、古いPCでも動くらしい」

実際、これは事実だ。
多くのLinuxディストリビューションは無料で、軽量で、
10年前のPCでも普通に動くものが珍しくない。

さらに、ネットを見ればこんな言葉が並ぶ。

  • 安定している
  • セキュリティが高い
  • サーバーでも使われている
  • 企業利用の実績もある

ここまで聞くと、こう思ってしまうのも無理はない。

「じゃあ、Windowsの代わりにLinuxを入れれば全部解決するんじゃないか?」

ここに、最初の幻想がある。

Linuxが軽いのは、OSとして軽いからだ。
Linuxが安定しているのは、サーバー用途で鍛えられているからだ。
Linuxが無料なのは、ライセンスモデルがそういう設計だからだ。

でも、それはどれも、“業務が楽になる”ことを保証する話ではない

多くの人は、無意識のうちにこう考えている。

  • 今の業務はそのまま
  • PCだけ入れ替える
  • OSをWindowsからLinuxに変える
  • でも仕事の中身は変えない

つまり、「OSだけ差し替えれば、現実も一緒に差し替わる」と思ってしまう。

残念だけど、そんな都合のいい話はない。

プリンタ依存の業務も、
Excelマクロも、
Access業務アプリも、
Windows専用ツールも、
Linuxにした瞬間に“消えてくれる”わけじゃない。

むしろ多くの場合、問題はよりはっきり見える形で表に出る

それでも人がLinuxに希望を託してしまうのは、理由がある。

  • 無料だから、失敗してもダメージが小さく見える
  • 「軽い」という言葉が、「何でも軽くなる」と錯覚させる
  • ネット記事は成功例のほうが目につきやすい
  • そして何より、「何もしないよりはマシ」に見える

これは、技術的な判断というより、心理的な避難行動に近い。

本当はこう考えるべき場面だ。

「このPCは、どんな業務を背負っているのか?」
「その業務は、OSを変えるだけで成立する構造なのか?」

でも現実には、多くの人がそこを飛ばしてしまう。

  • とりあえずLinuxを入れる
  • うまくいけばラッキー
  • ダメなら元に戻すか、別の手を考える

この“とりあえず”が、後で一番高くつく。

なぜなら、Linux移行が失敗したとき、残る感想はだいたい決まっているからだ。

「やっぱりLinuxは使い物にならない」

でも、それは本当にLinuxの問題なのか?
それとも、最初から“勝てない条件”で勝負していただけなのか?

次の章からは、
実際によくある「失敗パターン」を一つずつ見ていく。

まず最初の関門は、ほぼ例外なくここだ。

プリンタ。

Linux移行で最初に現実を突きつけてくる“ラスボス”は、
たいてい、画面の中ではなく、オフィスの隅に置いてあるあの箱である。

第3章:失敗パターン① プリンタ地獄から抜けられない

Linux移行を考えたとき、多くの人はこう思っている。

「キーボードとマウスが動いて、ブラウザが使えれば、仕事はできるだろう」

だいたい合っている。
そして実際、そこまでは驚くほどあっさりうまくいくことが多い。

問題は、その次だ。

プリンタ。

オフィスの隅に鎮座している、あの複合機。
こいつが、Linux移行における最初で最大の現実チェックになる。

よくあるのは、こんなパターンだ。

  • とりあえずLinuxを入れた
  • ネットもつながった
  • ブラウザも動く
  • じゃあ試しに印刷してみよう
  • ……あれ? 出ない
  • 出たけど、設定が何も効かない
  • 両面にならない
  • トレイが選べない
  • 部署コードが入れられない
  • 認証印刷ができない

「印刷は“できる”けど、業務で必要な印刷ができない

これが一番イヤな状態だ。

家庭用のシンプルなプリンタなら、Linuxでも案外すんなり動くことが多い。
でも、業務で使っているのはたいてい、

  • 複合機
  • 認証印刷
  • 部署別課金
  • トレイ・用紙サイズ・製本指定
  • メーカー独自の管理機能

こういう“業務仕様てんこ盛り”の機種だ。

そして残念ながら、この手の機能はほぼ例外なくWindows前提で作られている。

Linux側にはCUPSという真面目で筋の良い印刷基盤がある。
HPのように、Linux対応にちゃんと投資してきたメーカーもある。
だから「印刷そのもの」は、意外とあっさり通ることも多い。

問題は、そのだ。

  • 業務で必要なオプションが指定できない
  • メーカー独自UIが使えない
  • 認証や課金の仕組みに乗れない
  • 結果、運用ルールが崩壊する

こうなると、現場の反応はだいたい決まっている。

「やっぱりLinuxはダメだ」

でも、ここで一度、冷静に考えてほしい。

本当に詰まっているのは、

  • LinuxというOSなのか?
  • それとも、紙と複合機を前提に組まれた業務フローなのか?

実際、多くの会社では、

  • 会議資料は本当はPDFで足りる
  • 承認も共有も、すでにクラウドでできる
  • 契約書も電子化が進んでいる
  • それでも「何となく」印刷する文化だけが残っている

という状態になっていることが多い。

つまり、プリンタが業務の“中心”に居座っているのは、
技術的な必然というより、運用の惰性であることがほとんどだ。

ここを切り離せていないままLinuxに移行すると、どうなるか。

  • 印刷が絡むたびにトラブル
  • 結局、誰かのWindows PCに回送
  • 「この作業だけは、あっちのPCで」
  • いつの間にか、Linux端末は“中途半端な端末”になる

そして最後に出てくる結論が、これだ。

「Linuxは業務では使えない」

違う。
“紙前提の業務”が、現代の端末運用と噛み合っていないだけだ。

逆に言うと、

  • 日常業務はPDFと共有リンクで回る
  • 印刷は例外対応
  • 本当に必要なときだけ、別手段で出す

ここまで割り切れている組織なら、
プリンタはLinux移行の障害にならない。

むしろ、プリンタにどれだけ依存しているかが、
その組織のITがどれくらい“昔の形のままか”を測る、分かりやすい指標になる。

次に出てくる地雷は、もう一つの定番だ。

プリンタが“物理の呪い”だとしたら、
次は“ソフトウェアの呪い”

ExcelとAccessである。


第4章:失敗パターン② Excel / Access 業務から降りられない

プリンタを何とかやり過ごせたとしても、
次にほぼ確実に立ちはだかるのが、ExcelとAccessだ。

正確に言うと、

  • Excelマクロで固められた業務
  • Accessで作られた社内システム
  • そして「これがないと仕事が回らない」ファイル群

このへんを抱えたままLinuxに移行しようとすると、だいたいここで詰まる。

よくある流れはこうだ。

  • Linuxを入れる
  • LibreOfficeや他の互換ソフトを入れる
  • Excelファイルを開く
  • 見た目はそれっぽく開く
  • でもマクロが動かない
  • レイアウトが崩れる
  • Accessファイルは、そもそも開けない
  • 「……あれ?」

ここで初めて気づく。

自分たちは“Excelを使っている”のではなく、
“Excelで作られた業務システムの上で仕事をしている”
のだ、と。

ExcelマクロやAccess業務アプリは、
もはや「表計算ソフトの使い方」の範疇を超えている。

  • 入力画面
  • チェックロジック
  • 帳票出力
  • データ管理
  • 場合によっては権限管理まで

これ、冷静に見れば立派な業務アプリケーションだ。
たまたま実装言語がVBAで、実行環境がWindowsなだけで。

つまり何が起きているかというと、

  • OSを変える
  • = 業務システムの実行環境を丸ごと変える

という、かなり大きな変更を、
「OS入れ替えるだけでしょ?」という感覚でやろうとしている。

そりゃ壊れる。

ここでよく聞くセリフがこれだ。

「LinuxでもExcel互換ソフトがあるって聞いたのに」

確かにある。
表計算として使う分には、かなりの部分は問題なく動く。

でも、業務で問題になるのは、たいていここだ。

  • マクロ
  • アドイン
  • 外部連携
  • 独自仕様の帳票
  • Access連携

このあたりは、互換性が“完全”になることはほぼ期待できない

そしてAccessに至っては、話はもっとシンプルだ。

Accessは、Windowsの上に作られたWindows専用の業務アプリ基盤だ。
Linuxに持っていって動くかどうか、という発想そのものがズレている。

ここで現場は、だいたい二択に追い込まれる。

  • 結局、その業務だけはWindows PCで続ける
  • 「Linuxは無理だった」という結論に戻る

どちらに転んでも、Linux移行は中途半端な失敗になる。

でも、ここでも問題はOSじゃない。

問題は、業務のロジックが、特定のOSとアプリにべったり貼り付いている設計のまま放置されていることだ。

本来やるべき順番は、こうだ。

  • 業務ロジックを切り出す
  • データをサーバー側に寄せる
  • UIをWebにする
  • クライアントはブラウザで使う

Excel / Access業務は、SupabaseのようなDB + Webアプリ構成に移してからクライアントを変えるのが筋だ。

この順番を飛ばして、

「とりあえずLinuxにしてみよう」

をやると、どうなるか。

  • 業務アプリが動かない
  • 仕事にならない
  • 「Linuxは業務向きじゃない」という評価が下る

でもそれは、
業務システムの移行に失敗しただけであって、
Linuxの評価ではない。

ExcelとAccessから降りられない限り、
クライアントOSの自由度は永遠に手に入らない。

次の章では、もう一つよく聞く言い訳、
「Linuxは学習コストが高い」という話の正体をはっきりさせよう。

実はこれも、OSの話ではない。

第5章:失敗パターン③「学習コストが高い」の正体

Linux移行がうまくいかなかった人から、ほぼ確実に出てくる言葉がある。

「Linuxは学習コストが高すぎる」

一見もっともらしい。
でも、少しだけ冷静に考えてみてほしい。

あなたは、本当にWindowsというOSを“使い込んで”いるだろうか?

多くの人の一日は、だいたいこうだ。

  • PCの電源を入れる
  • デスクトップが出る
  • Excelや業務アプリを開く
  • あとは一日、その中で仕事をする

エクスプローラの高度な使い方?
管理ツール?
レジストリ?
正直、ほとんど触っていないはずだ。

つまり、多くの人が慣れているのは、
WindowsというOSではなく、「その上で動いている業務アプリの操作」だ。

ここでLinuxに移行して何が起きるか。

  • スタートメニューの位置が違う
  • 設定画面の見た目が違う
  • ファイルマネージャの挙動が少し違う

この程度の違いで、仕事が止まるわけがない。

実際に止まっているのは、ほとんどの場合、

  • 業務アプリが動かない
  • Excelマクロが使えない
  • Accessが開けない
  • プリンタの設定が通らない

こういう“業務の中身”の部分だ。

でも、人はそれをこう言い換える。

「Linuxは難しい」
「覚えることが多すぎる」
「学習コストが高い」

違う。
難しいのは、OSじゃなくて“今までの業務の前提が崩れたこと”だ。

試しに想像してみてほしい。

もし、業務がすべてWebアプリで完結していたらどうなるか。

  • ブラウザを開く
  • URLにアクセスする
  • ログインする
  • 仕事をする

Windowsでも、Linuxでも、macOSでも、ほとんど何も変わらない。
この状態になっていれば、「学習コスト」という言葉はほぼ消える。

逆に言えば、

  • OSが変わった途端に仕事にならなくなる
  • 「覚えることが多すぎる」と感じる

この正体は、OS依存の業務に深く縛られているというサインだ。

もう一つ、よくある誤解がある。

「Windowsはみんな慣れているから、学習コストがゼロ」

そんなことはない。
Windowsだって、バージョンが変わるたびにUIは変わるし、設定画面も変わる。
それでも使えているのは、仕事の中心がOSの操作ではなく、アプリの操作だからだ。

Linuxで困る人の多くは、実はこういう状態にいる。

  • OSの違いに困っているのではない
  • 業務アプリが消えたことに困っている
  • それを「学習コスト」という言葉でごまかしている

ここを取り違えると、結論も取り違える。

「Linuxは学習コストが高いから無理」

ではなく、

「この業務は、まだOSから自由になれていない」

これが、正確な診断だ。

そして、ここまでの話をまとめると、
Linux移行で失敗する現場には、だいたい共通点が見えてくる。

  • 紙とプリンタから降りられていない
  • Excel / Access業務から降りられていない
  • OS依存の運用から降りられていない

逆に言えば、これらから降りられた組織では、
Linuxは「難しいOS」ではなく、ただの“ブラウザを起動する箱”になる。

次の章では、
実際にうまくいっている組織の共通点を整理して、
「じゃあ、どんな条件ならLinux移行は静かに成功するのか」をはっきりさせよう。


第6章:成功する組織の共通点は、驚くほど地味

ここまで、Linux移行でよくある失敗パターンを見てきた。

  • プリンタ地獄
  • Excel / Access 地獄
  • 「学習コスト」という名の誤診

逆に言えば、これらをすでに抜けている組織では、Linux移行はほとんど事件にならない。

実際、うまくいっているケースに共通しているのは、驚くほど地味な条件だ。

  • 業務の入口がWebになっている
  • データはサーバー側に集約されている
  • クライアントPCは、ブラウザを動かすための端末に近い
  • 印刷は日常業務の中心から外れている

この状態になっていると、クライアントのOSはほとんど意味を持たなくなる

Windowsでも、Linuxでも、macOSでも、
「ブラウザがちゃんと動くかどうか」くらいしか差が出ない。

ここで、話の芯になる条件をもう一度はっきりさせておこう。

Linux移行が“静かに”成功する組織には、だいたい次の2つが揃っている。

  • プリンタに依存しない業務の確立
  • Windowsに依存しないアプリへのシフト

これはLinuxの話というより、業務のモダン化がどこまで進んでいるかのチェックリストだ。

たとえば、

  • 会議資料はPDFやリンク共有で済む
  • 承認フローはクラウド上で完結する
  • 契約書は電子署名が前提
  • 基幹データはDBとWebアプリで管理している
  • ExcelやAccessは「個人作業の道具」に戻っている

この状態なら、Linuxにしても現場の反応はだいたいこうなる。

「……あれ? 別に何も変わらなくない?」

そう。
変わらないことこそが、成功のサインだ。

逆に言えば、Linuxにした瞬間に業務がガタガタになるなら、
それはOS選定の失敗ではなく、業務構造がまだ古い形のままだというサインでもある。

ここで大事なのは、順番だ。

  • 先に業務をWeb中心に作り直す
  • 先に紙とローカル依存から降りる
  • その“結果”として、クライアントOSの自由度が手に入る

この順序を飛ばして、

「Windows 10が終わるから、とりあえずLinuxにしよう」

とやると、これまで見てきた失敗パターンにほぼ確実に突っ込む。

Linuxは、業務を変えずに現実だけを変えてくれる魔法のOSではない。
業務がすでに変わっている組織にとって、静かにハマる“選択肢の一つ”に過ぎない。

そして、この視点で見ると、Linux移行の話は、
単なるOS選びではなく、こう言い換えられる。

「あなたの組織は、どこまで“OSから自由”になれているか?」

次の最終章では、ここまでの話をまとめて、
「結局、何をどう考えればいいのか」を、できるだけはっきりした言葉で締めよう。

最終章:Linux移行に失敗する人は、OSではなく“現実の見積もり”に失敗している

ここまで読んでくれたなら、もう結論は見えているはずだ。

Linux移行の成否は、
OSの出来や使い勝手で決まることは、ほとんどない。

決まるのは、たったこれだけだ。

  • そのPCが背負っている業務の構造は何か
  • その構造は、OSを変えるだけで成立する設計になっているか

この2つに「NO」が混じっているなら、
Linux移行は高確率で“失敗した体験”になる。

振り返ってみよう。

  • プリンタに深く依存した業務
  • ExcelマクロやAccessで組まれた業務システム
  • Windows前提のツールと運用
  • それをまとめて「学習コストが高い」と呼ぶ心理

どれも、Linuxの問題ではない。
業務が“特定の環境に貼り付いたまま”であることが問題だった。

一方で、うまくいく組織の条件も、もうはっきりしている。

  • 業務の入口はWeb
  • データはサーバー側
  • クライアントはブラウザを動かす箱
  • 印刷は例外対応
  • ExcelやAccessは、業務システムではなく“道具”の位置に戻っている

この状態なら、Linuxにしても現場はだいたいこう言う。

「別に、何も変わらないね」

それが、正しい成功の形だ。

ここで、もう一度はっきり書いておく。

  • Windows 11に素直に移行できるなら、それが一番安全だ
  • Windows 10のサポート切れを放置するのは、ただのリスク先送りだ
  • Linuxは“逃げ道”でも“魔法の延命薬”でもない
  • 業務を変えた結果として、選べる選択肢の一つに過ぎない

つまりこういうことだ。

Linux移行に失敗する人は、
OSの選択に失敗しているのではない。
現実の見積もりに失敗している。

業務がまだ紙と複合機に縛られているのか。
ローカルアプリに縛られているのか。
それとも、すでにWeb中心に切り替わっているのか。

OSを選ぶ前に、見るべきものはそこだ。

Linuxは、
業務を変えずに現実だけを変えてくれる都合のいい道具ではない。
業務がすでに変わった人たちにとって、静かにハマる現実的な選択肢に過ぎない。

夢を見るな、とは言わない。
でも、順番を間違えるな

それだけで、
「Linuxは使えなかった」という不毛な体験談の側に行かずに済む。

そしてそれは、
Linuxのためでも、Windowsのためでもなく、
自分たちの業務の未来のための話だ。