Microsoft Teamsを悪用したフィッシング攻撃が増加している。
「最近はメールで騙されなくなったから、今度はTeamsを狙っているのだろう」
そう考える人も多いかもしれない。しかし、本質はもう少し深いところにある。
攻撃者が狙っているのはTeamsというソフトウェアの脆弱性ではない。
「Teamsは社内専用だから安全」という私たちの思い込みである。
Teamsは本当に「社内専用」なのか
多くの企業でTeamsは日常業務の中心になっている。
社内チャット、Web会議、ファイル共有、共同編集。
毎日使っているため、「社内LANの延長」のような感覚を持っている人も少なくない。
しかし実際には、Teamsはクラウドサービスだ。
管理者の設定によっては、外部組織とのチャットや通話も利用できる。
これは取引先との共同作業を円滑にするための便利な機能であり、それ自体が脆弱性というわけではない。
問題は、多くの利用者がその前提を知らないことである。
メールと同じ構造が生まれつつある
電子メールも、もともとは便利なコミュニケーション手段として設計された。
世界中の誰とでも連絡できることが最大のメリットだった。
しかし、その「誰とでもつながれる」という特徴は、迷惑メールやフィッシングという形で悪用されるようになった。
その結果、私たちは自然とこんな行動を身につけた。
- 差出人を確認する
- 怪しいリンクは開かない
- 添付ファイルを安易に実行しない
二十年以上かけて、メールには「疑う文化」が定着したのである。
一方、Teamsにはまだその文化が十分に根付いていない。
攻撃者は「信頼」を狙っている
最近報告されている攻撃では、
「ITサポートです」
「システム更新のお知らせです」
「設定変更が必要です」
といった内容でTeamsのチャットや通話を開始し、その後、リモート支援ツールの起動や認証操作へ誘導するケースが確認されている。
これはシステムを攻撃しているのではない。
人間の心理を攻撃しているのである。
メールなら警戒する人でも、
「Teamsで連絡が来た」
というだけで、業務の一環だと考えてしまう。
攻撃者はその心理を熟知している。
「社内ツールだから安全」はもう通用しない
クラウド時代になり、私たちが使う業務ツールの多くはインターネットの上にある。
Teams、Slack、Zoom、Google Meet。
もちろん、各サービスには外部ユーザーの表示やアクセス制御、管理者によるポリシー設定など、それぞれの安全対策が用意されている。
しかし、利用者がそれを理解せず、「この画面にいる人は社内の人間だろう」と考えてしまえば、その安全設計にも穴が開く。
むしろ、外部との通信が可能なコラボレーションツールは、感覚として「社内LAN」ではなく、社内とインターネットの境界にあるDMZのような場所として捉えた方がいい。
そこには社内の人間もいる。
取引先もいる。
そして、設定やサービスによっては、まったく知らない第三者が接触してくる可能性もある。
重要なのは、Teamsが危険だということではない。
「Teamsの中だから安全」という信頼を、セキュリティ境界として使ってはいけないということである。
企業が見直すべきこと
Teamsを利用している企業は、次の点を確認しておきたい。
- 外部アクセス(External Access)の設定は適切か
- 外部チャットを本当に必要としているか
- IT部門がTeamsだけで本人確認を行う運用になっていないか
- リモート支援を開始する際に、別経路で本人確認するルールがあるか
技術的な対策だけでは十分ではない。
運用ルールと利用者教育が、これまで以上に重要になってくる。
まとめ
メールは二十年以上かけて、「知らない送信者を疑う」という文化を身につけてきた。
TeamsやSlackなどのコラボレーションツールも、これから同じ道を歩むことになるだろう。
今回増加しているのは、Teamsの脆弱性を突く攻撃ではない。
「Teamsなら安心」という思い込みを利用したソーシャルエンジニアリングである。
社内ツールだから安全ではない。
クラウド時代に必要なのは、「どのツールで届いたか」ではなく、「その依頼は本当に正当なものか」を確認する習慣だ。
その意識こそが、これからのフィッシング対策で最も重要になる。
参考URL
- Microsoft Security Blog(Teamsを悪用したヘルプデスクなりすまし攻撃)
- Microsoft Support(Teamsの外部チャットにおけるスパム・フィッシング対策)
- Microsoft Learn(Microsoft Teamsの攻撃対象領域を減らす方法)


