Nano Banana Proは日本語を克服した? GPT Imagesと「科学インフォグラフィック」3本勝負

Nano Banana Proは日本語を克服した? GPT Imagesと「科学インフォグラフィック」3本勝負 TECH

Google から「新しいAI機能のトライアル対象に選ばれました」というお便りが届いた。
また、少し遊ばせてくれるらしい。

せっかくなので試してみることにした。

Google Slides上でGeminiにテーマを与えれば、構成を考え、文章を書き、デザインまで含めてスライドを生成してくれる。

実際に使ってみると、生成されるスライドの品質はかなり高い。

レイアウトは整っている。
文章も単なる箇条書きではなく、テーマを理解したうえで論点を整理している。必要に応じて画像まで生成して配置する。

「もうプレゼン資料もAIに丸投げできるのでは?」

そう思った。

ところが、そう簡単ではなかった。

「8枚作って」が通じない

最初に8枚構成のプレゼンを依頼したところ、Geminiは構成案をきちんと提示した。

そこで「OKです。進めてください」と指示すると、返ってきたのはなぜか英語だった。

For now, I can only create and edit one slide at a time. You can ask to edit this slide or create a new one.

一度に作成・編集できるのは1枚だけだという。

ならば1枚ずつ作ればいい。

実際、最初のスライドを作らせ、続いて2枚目を指示すると問題なく生成された。

ところが「3枚目を作成してください」と頼むと、再び同じ英文が返ってくる。

しかもGemini自身に「全部で8枚作るにはどうすればいいのか」と尋ねると、

「1枚ずつ作成しますので、『次は3枚目』『次は4枚目』と指示してください」

と説明する。

そこで指示どおり、

「3枚目を作成してください」

と入力する。

すると、

For now, I can only create and edit one slide at a time.

なんやねん。

自分でそうしろと言ったではないか。

いろいろ試した結果、新しいプレゼンテーションを作り、そこから3枚目、4枚目、5枚目……と1枚ずつ追加すると生成できた。

最終的には8枚目まで作り、その後に1枚目、2枚目、タイトル、Indexを追加するという妙な順序ながら、一本のプレゼンテーションを完成させることができた。

Google Slideで生成したスライド「次世代グリーンデータセンター
戦略ロードマップ」。

どうやら「複数枚のプレゼンをまとめて作る」という要求に対する制御が、まだかなり強いようだ。

生成能力そのものが足りないわけではない。

構成を考える頭もある。1枚を作る能力もある。しかし、それを連続した作業として実行させようとすると妙なところで転ぶ。

いかにもベータ版らしい挙動である。

ところが「Infographics」が面白い

プレゼン自動生成については、まだ発展途上という印象だった。

しかしGoogle Slidesの生成機能を触っているうちに、別のものが気になり始めた。

Infographicsである。

Google Slideの新規画面

文章で説明する代わりに、テーマを一枚の図として生成できる。

ここで使われているのが、Googleの画像生成モデル「Nano Banana Pro」だ。

試しに「熱力学コンピューティング」を題材にしてみた。

これは画像生成AIにとって、なかなか意地の悪いテーマである。

CPUの写真を描けば済む話ではない。

熱、情報、確率、エネルギー、物理現象、計算。

そうした抽象的な概念を理解し、

「人間が見て分かる一枚の絵」に翻訳しなければならない。

そこで思った。

同じことをGPT Imagesにもやらせたら、どうなるのだろう。

少し前まで、日本語を大量に含む画像生成ではGPT Imagesが圧倒的に強かった。

画像生成AIに日本語を書かせれば、漢字のようで漢字ではない文字や、中国語とも日本語ともつかない文字列が混ざるのが当たり前だった。

ところが今回Nano Banana Proを使ってみると、その印象がかなり違う。

普通に日本語を読める。

しかも文字を書けるだけではない。

見出し、説明文、矢印、図、強調色まで組み合わせて「情報」としてレイアウトしてくる。

ならば比べてみよう。

ただし、「どちらが綺麗な絵を描けるか」では面白くない。

今回試すのは、もっと難しい。

難しい科学を、IT技術者に10秒で理解させられるか。

Nano Banana ProとGPT Imagesに、まったく同じテーマを与える。

第1戦は「ランダウアーの原理」。

第2戦は「熱ゆらぎを排除する従来型コンピューティングと、熱ゆらぎを利用する熱力学コンピューティング」。

第3戦は「組合せ最適化問題をエネルギー地形へ変換し、物理現象によって解を探索する仕組み」。

いずれも文章なら説明できる。

問題は、それを一枚の画像だけで伝えられるかである。

画像生成AIは、いつの間にか「絵を描くAI」から別のものへ変わり始めているのかもしれない。

その実力を見てみよう。

第1戦──ランダウアーの原理を「10秒」で説明できるか

最初のお題は、ランダウアーの原理である。

プロンプトはシンプルにした。

ランダウアーの原理を、数式を知らないIT技術者が10秒で理解できるインフォグラフィックにしてください。

ランダウアーの原理を乱暴に要約すれば、情報処理は物理現象であり、論理的に不可逆な情報の消去には最低限のエネルギー散逸が伴う、という話である。

コンピューターの世界では、つい「0」と「1」を抽象的な情報として考えてしまう。

しかし、その0と1を保持しているのは現実世界の物理デバイスだ。

情報を消去するという操作も、物理法則から逃れることはできない。

この話を文章で説明するなら、それほど難しくない。

問題は、

これを10秒で理解できる絵にしろ

という要求である。

Nano Banana Proは「情報が熱になる」を一枚で見せた

「ランダウアーの原理」をNano Banana Proが描いた

Nano Banana Proが生成した画像は、中央にプロセッサ/メモリらしき装置を置き、左側から大量の0と1を流し込んだ。

そして右側では、その情報が崩れるように描かれ、その先に大きな熱の波と温度計が置かれている。

構造は非常に単純だ。

情報 → 処理・消去 → 熱

である。

細かな説明を読まなくても、視線を左から右へ動かすだけで、

「情報を処理して消すことと、熱には関係があるらしい」

と理解できる。

これはインフォグラフィックとして強い。

文字量をかなり抑え、絵そのものに説明させているからだ。

デザインも落ち着いている。

白を基調に、情報処理側を青、熱をオレンジで表現することで、情報とエネルギーの変化を自然に区別している。

一方で、かなり抽象化されているため、ランダウアーの原理を知らない人が画像だけを見た場合、

「CPUは計算すると熱くなる」

という、ごく普通の話として受け取る可能性もある。

美しいが、見る側に少し解釈を要求する。

そんな一枚だった。

GPT Imagesは「1→0→熱」と手順に分解した

「ランダウアーの原理」を GPT Images 2.0 が描いた

GPT Imagesは、かなり違うアプローチを取った。

こちらは最初から、

「データを消す(0に戻す)とき、熱エネルギーが発生する」

という結論を大きく提示する。

その下を3つのステップに分けた。

  1. データを持つ
  2. データを消して0に戻す
  3. 熱が発生する

視線を左から右へ動かせば、

1 → 0 → 熱

という因果関係がそのまま入ってくる。

説明資料としては非常に分かりやすい。

「10秒で理解」という今回の条件にも素直に答えている。

その代わり、GPT Imagesは説明したがりである。

文章量が多い。

「身近な例」としてファイル削除やフォーマットまで持ち出している。

ここは注意が必要だ。

ランダウアーの原理で問題になる情報消去と、OS上でファイルを削除する操作をそのまま同一視することはできない。

「1を0に戻すと必ず熱が出る」という理解も、初心者向けには分かりやすいが、原理そのものを正確に表現したものではない。

つまりGPT Imagesは、

理解させるためなら、かなり大胆に単純化する。

この傾向は覚えておいた方がよさそうだ。

第1戦は勝敗より「説明の仕方」が面白い

どちらが優れているか。

ここで早くも判定が難しくなった。

Nano Banana Proは、絵を使って概念を象徴的に見せる。

GPT Imagesは、情報を分解して順番に説明する。

言い換えるなら、

Nano Banana Proはポスターに近く、GPT Imagesは教材に近い。

「10秒で意味を理解する」という今回の条件だけを見るなら、筆者はGPT Imagesをやや高く評価した。

「1→0→熱」という構造があまりにも明快だからだ。

しかし、プレゼンテーションの中に置く一枚として考えるなら、文字量を抑えたNano Banana Proにも大きな魅力がある。

そして、もっと驚いたのは別のところだった。

日本語が普通に書けている。

多少の表現上の問題はあっても、かつて画像生成AIで頻発した「日本語に似た謎の文字」はほとんど見当たらない。

長い見出しも書ける。

漢字も書ける。

専門用語も書ける。

さらに、それらを図の中へ意味のある位置に配置できる。

少し前まで、日本語入りの画像生成はGPT Imagesの独壇場という印象が強かった。

少なくとも今回のNano Banana Proを見る限り、その差はかなり縮まっている。

では、もう少し難しい問題を与えたらどうなるだろう。

次は単純な因果関係ではない。

同じ「熱ゆらぎ」を、一方は邪魔者として捨て、もう一方は計算資源として利用する。

この逆転した考え方を、一枚の絵で表現してもらおう。

第2戦──「ノイズを捨てる」から「ノイズを使う」へ

第2戦は、熱力学コンピューティングそのものの発想を比較する。

与えたプロンプトはこちらである。

「熱ゆらぎをノイズとして排除する従来型コンピューティング」と「熱ゆらぎそのものを計算資源として利用する熱力学コンピューティング」の違いを、IT技術者が10秒で理解できるインフォグラフィックにしてください。

第1戦より難しい。

今回は「情報を消すと熱が出る」という一方向の因果関係ではない。

同じ熱ゆらぎという物理現象に対して、コンピューターの設計思想そのものが逆転する。

従来型コンピューティングでは、熱ゆらぎは基本的に邪魔者である。

電子回路は0と1をできるだけ確実に区別したい。

そのため、ノイズマージンを確保し、電圧を安定させ、冷却し、エラーを抑える。

つまり、

熱ゆらぎ → ノイズ → 排除する

という発想になる。

ところが熱力学コンピューティングでは、その邪魔者を逆に利用する。

熱によって生じるランダムな状態変化を消そうとするのではなく、その確率的な振る舞いそのものを計算へ取り込む。

熱ゆらぎ → 確率的な探索 → 計算資源として使う

のである。

この発想の反転を、両者はどう描くのか。

Nano Banana Proは「熱の流れ」を描いた

「従来型コンピューティングと熱力学コンピューティング」というテーマでNano Banana Proが描いた

Nano Banana Proは、画面を左右に分割した。

左が従来型コンピューティング。

右が熱力学コンピューティングである。

左側では、演算ユニットの後ろにフィルターのような装置を配置し、赤い熱ゆらぎを外へ逃がしている。

上には、

「熱ゆらぎ=ノイズ(排除)」

とある。

一方、右側ではまったく逆だ。

赤い熱ゆらぎが複数の矢印となって、演算コアの中へ積極的に流れ込んでいる。

内部には波形や確率的な状態を思わせる図が描かれ、

「熱ゆらぎ=計算資源(利用)」

と明記されている。

これはうまい。

細かな説明を読まなくても、

左は熱を外へ捨てる。
右は熱を中へ入れる。

という対比だけで、発想の違いが分かる。

第1戦以上に、Nano Banana Proの「絵に説明させる」能力が効いた。

GPT Imagesは「なぜ違うのか」まで説明する

「従来型コンピューティングと熱力学コンピューティング」というテーマでGPT Images 2.0が描いた

GPT Imagesも同じく、青とオレンジの左右比較を選んだ。

ただし、こちらは相変わらず説明したがりである。

左には、

熱ゆらぎをノイズとして排除

右には、

熱ゆらぎそのものを計算資源として利用

と大きく書く。

ここまではNano Banana Proと同じだ。

しかしその下に「考え方」という項目を設け、

従来型では、

熱ゆらぎ(ランダムな揺らぎ)は誤動作の原因=ノイズ
→ できるだけ排除して、確実な0/1を作る

熱力学側では、

熱ゆらぎ(ランダムな揺らぎ)は情報の源=資源
→ 揺らぎの確率分布を使って計算する

と説明する。

さらにエネルギー、原理、用途・強み、具体例まで比較表として並べた。

もはやインフォグラフィックというより、

そのまま研修資料に使えそうな一枚物の教材

である。

今度はNano Banana Proが「10秒」に強い

第1戦では、GPT Imagesの「1→0→熱」という大胆な単純化が強かった。

しかし第2戦では印象が逆転した。

GPT Imagesは詳しい。

確率分布まで説明し、CPUやGPU、確率的ビット、イジングマシンといった具体例まで提示する。

情報量では圧倒的だ。

だが、

10秒で全部読むのは無理である。

一方のNano Banana Proは、

熱を捨てる装置 vs 熱を取り込む装置

という視覚的な対比に集中した。

この一枚については、細部を理解する前にメッセージが目へ飛び込んでくる。

「同じ熱ゆらぎなのに、扱いが真逆なのだ」

ということだけなら、数秒で分かる。

第2戦を「10秒で理解」という条件だけで判定するなら、筆者はNano Banana Proをやや高く評価したい。

ただし、これも優劣というより用途の違いだろう。

一瞬で概念を伝えたいならNano Banana Pro。
一枚を読ませて理解を深めたいならGPT Images。

そんな性格の違いが見えてきた。

日本語画像生成は、もう別の競争へ入った

そして2枚を並べて見ていると、別のことが気になってくる。

日本語である。

今回の画像には、

「従来型コンピューティング」
「熱力学コンピューティング」
「熱ゆらぎ」
「決定論的」
「エネルギー効率」
「確率的計算」

といった、画像生成AI泣かせの文字列が大量に入っている。

それが普通に読める。

もちろん、細部を探せば表現や内容について議論すべきところはある。

しかし、少なくとも、

「日本語を画像として正しく描けるか」

というレベルの勝負ではなくなっている。

これは大きな変化だ。

以前の画像生成AIでは、文字を含む画像を頼むこと自体が賭けだった。

英単語ならまだしも、日本語の長文となればなおさらである。

だから日本語入りの図解やポスターでは、GPT Imagesの文字描画能力が大きな武器になっていた。

今回試したNano Banana Proは、そこへ完全に入ってきた。

しかも単に文字を描くだけではない。

文章を読み、情報の階層を考え、どこを大きくし、どこを色で強調し、どの図と対応させるかまで処理している。

競争の焦点は、

「文字を書けるか」から「情報をどう見せるか」へ

移りつつあるように見える。

ならば最後は、さらに抽象度を上げてみよう。

第3戦は、熱力学コンピューティングの核心ともいえる「エネルギー地形」である。

組合せ最適化問題を物理系へ変換し、物理現象そのものに解を探させる。

文章だけでも少々ややこしいこの考え方を、

数式なし、一枚、10秒。

画像生成AIは、そこまで説明できるだろうか。

第3戦──「問題を地形に変えて、物理に解かせる」を描けるか

第3戦は、さらに難易度を上げた。

今回のプロンプトはこちらである。

「組合せ最適化問題をエネルギー地形に変換し、物理系が低エネルギー状態へ自然に落ちていくことで解を探索する」という熱力学コンピューティングの考え方を、初めて聞くIT技術者が10秒で理解できるインフォグラフィックにしてください。数式は使わないでください。

これは画像生成AIにとって、かなり意地の悪い注文だと思う。

まず「組合せ最適化問題」という抽象的な対象がある。

それを「エネルギー地形」という別の表現へ変換する。

さらに物理系をその地形の中で動かし、低エネルギー状態へ自然に落ち着く性質を利用して解を探索する。

つまり、

問題 → 物理系へ変換 → 自然現象による探索 → 解

という複数段階の概念を、一枚の静止画で表現しなければならない。

しかも数式は禁止。

これを10秒で理解させる。

今回の3本勝負では、最も「情報を絵へ翻訳する能力」が問われる課題である。

Nano Banana Proは「谷へ落ちる」を主役にした

「熱力学コンピューティングの仕組み」のインフォグラフィック。Gemini画。

Nano Banana Proが選んだのは、非常に直感的な表現だった。

左側に組合せ最適化問題を表すネットワーク状の図を置く。

そこから中央の巨大な地形へ変換する。

地形には複数の山と谷があり、粒子が斜面を下っていく。

そして最も低い谷底に「最適解」がある。

要するに、

難しい問題を山と谷へ変えてしまえば、あとは物理現象が低い場所を探してくれる。

この発想を、そのまま風景として描いた。

これは強い。

エネルギー地形という言葉を知らなくても、

「高いところに置いたボールは低いところへ転がる」

という物理的直感は誰でも持っている。

熱力学コンピューティングでは、その自然な振る舞いを計算へ利用する。

抽象的な計算理論を、日常的な物理感覚へ置き換えたわけだ。

GPT Imagesは「3ステップの処理」として描いた

「熱力学コンピューティングの考え方」のインフォグラフィック。GPT画。

GPT Imagesも、やはり山と谷を使った。

ただし見せ方は違う。

こちらは全体を3段階に分割する。

STEP 1:問題をエネルギー地形に変換する

組合せ最適化問題を、山と谷のある地形として表現する。

STEP 2:物理系を動かす

粒子が地形上を移動し、低い方向へ自然に進んでいく。

STEP 3:谷底が解になる

最も低いエネルギー状態へ到達したところを、求める解として取り出す。

第1戦、第2戦でも見えたGPT Imagesの特徴が、ここでも出た。

GPT Imagesはプロセスを説明したがる。

Nano Banana Proが「一枚の世界」として概念を見せるのに対して、GPT Imagesは「順番に理解してください」という構造を作る。

IT技術者には、この方法も非常に分かりやすい。

入力があり、変換処理があり、探索があり、出力がある。

一種の処理フローとして理解できるからだ。

画像モードでも同じプロンプトを試してみた

「熱力学コンピューティング。組み合わせ最適化問題をエネルギー地形で解く。Nano Banana Pro画。

ここで、もう一つ実験してみた。

Google Slidesには「Infographics」とは別に、通常の「Images」生成も用意されている。

そこで、まったく同じプロンプトをImages側にも与えてみた。

すると、生成されたものは明らかに性格が違った。

Infographicsでは、情報を整理し、各要素を分け、視線の流れまで設計した「説明資料」になる。

一方Imagesでは、巨大なエネルギー地形そのものが画面の主役になった。

山と谷が立体的に広がり、谷底に最適解を示す旗が立つ。

こちらは説明図というより、

「エネルギー地形とはこういうものだ」という概念イラスト

に近い。

同じモデル系列、同じプロンプトでも、生成する場所と目的を変えることで結果が変わる。

これはGoogle Slidesへ画像生成を組み込む意味を考えるうえでも興味深い。

単に「AI画像を作れます」というだけではない。

写真やイメージが欲しいのか、情報を整理した図解が欲しいのかを、制作中に選べる。

プレゼンテーション制作では、この違いはかなり大きい。

3本勝負、結局どちらが勝ったのか

ここまで3種類の課題を試した。

第1戦は「因果関係」。

情報消去 → エネルギー散逸

第2戦は「対立する概念」。

熱ゆらぎを排除する → 熱ゆらぎを利用する

第3戦は「抽象的な計算プロセス」。

問題 → エネルギー地形 → 物理的探索 → 解

かなり性格の違う問題を選んだつもりだ。

それでも、Nano Banana ProとGPT Imagesのどちらかが決定的に崩れることはなかった。

そして困ったことに、

甲乙つけがたい。

無理に勝敗をつけようと思えばできる。

第1戦はGPT Images。

第2戦はNano Banana Pro。

第3戦は用途次第。

そんな判定表を作ることもできる。

しかし、3本を実際に生成してみると、そんな採点にはあまり意味がないように思えてきた。

両者とも十分に説得力のある画像を生成できているからだ。

違うのは能力の有無ではなく、

「どう説明するか」という編集方針

である。

Nano Banana Proは、なるべく一枚のビジュアルとして成立させようとする。

GPT Imagesは、情報を分解し、読み手が順番に理解できる構造を作ろうとする傾向がある。

もちろん、たった3回の生成だけでモデル全体の性格を断定することはできない。

プロンプトや生成ごとの揺らぎもある。

それでも今回の比較では、かなり一貫した違いとして現れた。

そして、勝敗以上に重要なことがある。

どちらも日本語を大量に含んだインフォグラフィックを、普通に作ってしまった。

少し前なら、これだけでニュースだった。

次は、今回最も驚いたその変化について考えてみたい。

「日本語入り画像はGPT Images」の時代が終わりつつある

今回の比較で、筆者が最も驚いたのは画質ではない。

Nano Banana Proが、これだけ普通に日本語を扱えたことである。

画像生成AIにとって、文字は長い間弱点だった。

人物の顔や風景は驚くほどリアルに描けるのに、看板に文字を書かせると突然意味不明になる。

アルファベットですら怪しい。

まして日本語となれば、

漢字のようで漢字ではない。
ひらがなのようでひらがなではない。
なぜか中国語っぽい。

そんな画像が大量に生成された。

筆者も画像生成AIを使ってきたが、日本語を含む画像を作りたい場合、GPT Imagesの存在は大きかった。

日本語を単に「模様」として描くのではなく、文字列としてかなり正確に扱える。

そのため、ポスターや教材、インフォグラフィックのように画像内へ文章を入れたい用途では、GPT Imagesを選ぶ明確な理由があった。

ところが今回、Nano Banana Proで3種類のインフォグラフィックを生成してみると、その前提が崩れた。

「ランダウアーの原理」。

「熱ゆらぎ」。

「従来型コンピューティング」。

「熱力学コンピューティング」。

「組合せ最適化問題」。

「エネルギー地形」。

決して画像生成AIに優しい単語ではない。

それでも、ほぼ普通に読める。

長い文章も入る。

さらに重要なのは、正しく文字を書くだけではないことである。

見出しを大きくする。

補足説明を小さくする。

左右を比較する。

矢印で因果関係を示す。

重要な部分だけ色を変える。

図と文章を対応させる。

つまりNano Banana Proは、日本語を画像へ描画しているだけではない。

日本語で書かれた情報を、視覚的な構造へ変換している。

ここまで来ると、従来の「画像生成AI」という言葉では少し足りないように感じる。

次の競争は「何を描くべきか」

画像生成AIの進化では、これまで分かりやすい指標があった。

人物の指が正しく描けるか。

文字を書けるか。

複雑なプロンプトへ従えるか。

写真と区別できないほどリアルか。

もちろん、現在でもこれらは重要である。

しかし一定水準を超えてしまえば、別の能力が目立ち始める。

何を描けば、人間に伝わるのか。

今回の第2戦が分かりやすい。

「従来型コンピューティングは熱ゆらぎを排除し、熱力学コンピューティングは熱ゆらぎを利用する」

この文章を画像にする方法は無数にある。

CPUを2個並べてもいい。

ノイズ波形を描いてもいい。

比較表を作ってもいい。

冷却ファンを描いてもいい。

しかしNano Banana Proは、

左では熱を外へ捨て、右では熱を演算装置へ取り込む

という構図を選んだ。

この選択そのものが、すでに情報編集である。

GPT Imagesは別の選択をした。

左右比較を維持しながら、確率分布、エネルギー効率、用途、具体例まで整理して並べた。

こちらは、

「一目で感じさせる」より「一枚で理解させる」

ことを優先したように見える。

どちらも元のプロンプトには書かれていない。

AI自身が、

「この概念なら、こう見せれば伝わるだろう」

と判断している。

画像生成AIの競争は、画力だけでは測れない領域へ入ってきた。

ただし、格好いい絵ほど疑った方がいい

ここで注意しておきたいこともある。

画像生成AIが文字を書けるようになったことと、その文字が正しいことはまったく別の話である。

今回、Google Slidesに用意されていたサンプルプロンプトも試してみた。

テーマは「世界の気候帯」。

暗い衛星地図を背景に、シアンとマゼンタの半透明オーバーレイを重ね、ナショナル ジオグラフィックのデジタル版を思わせる高品質な地図を作るというものだった。

生成された画像は、文句なく格好いい。

暗い世界地図。

鮮やかな気候帯。

整然と並んだ凡例。

一目見れば、

「プロが作った地理資料」

のように見える。

ところが細部を見ると、怪しい。

たとえば凡例には「湿地 – DESERT」という表記が混ざっている。

気候区分を示す資料として、その分類やラベルをそのまま信用してよいのかは別途確認が必要になる。

ここには、生成AI時代らしい厄介な問題がある。

昔のAI画像なら、文字が崩れていた。

だから人間も、

「これはAIが作ったものだから信用できない」

とすぐ気づけた。

ところが現在は違う。

間違いまで美しく描ける。

フォントも揃っている。

色も整っている。

凡例もある。

地図もそれらしい。

その結果、内容まで正しいように見えてしまう。

これは科学、統計、地図、医療、歴史など、正確性が重要な図解ほど注意しなければならない。

今回の熱力学コンピューティングでも同じである。

インフォグラフィックは理解の入口として非常に強い。

しかし、そこで使われている説明や数値まで無条件に正しいと考えてはいけない。

生成AIに「伝え方」は任せられるようになった。
だからこそ「事実確認」は人間側の仕事として残る。

皮肉な話だが、画像生成AIが上手くなればなるほど、この確認は重要になる。

Google Slidesで使えることに意味がある

そして今回、Nano Banana Pro単体の画像生成能力以上に面白いと感じたのが、Google Slidesとの統合だった。

高性能な画像生成AIそのものは、すでに珍しくない。

GPT Imagesもある。

Nano Banana Proもある。

ほかにも選択肢はいくらでもある。

画像だけを作るなら、専用の画像生成サービスを開けばいい。

しかしプレゼンテーションを作っている最中は、事情が少し違う。

たとえば熱力学コンピューティングについて説明していて、

「ここは文章では伝わりにくい。エネルギー地形の図が一枚欲しい」

と思ったとする。

従来なら、

画像生成AIを開く。

プロンプトを書く。

画像を生成する。

保存する。

Google Slidesへ戻る。

画像をアップロードする。

サイズを調整する。

そんな小さな作業の往復が発生する。

一つ一つは大した手間ではない。

しかし、そのたびにプレゼンテーションを作っていた思考が中断される。

Google Slidesの中にInfographics生成があると、この流れが変わる。

「ここに絵が欲しい」と思った、その場所で作ればいい。

そして今回試した品質なら、単なる飾りではない。

プレゼンテーションの中で、

「この一枚だけは視覚的に強く見せたい」

という場面に投入できる。

全ページを豪華なAI画像で埋める必要もない。

むしろ通常のスライドを進めながら、概念説明や比較、ロードマップなど、ここぞという場面だけ高品質なインフォグラフィックを生成する。

その使い方の方が現実的だろう。

最初にGoogle Slidesへプレゼンテーションそのものを丸投げしたときには、正直かなり面食らった。

構成は考えられる。

一枚のデザインも悪くない。

なのに複数枚を連続生成させようとすると、突然、

For now, I can only create and edit one slide at a time.

と拒絶する。

まだ「テーマだけ渡せば、完成したプレゼンが出てくる」と期待するには早そうだ。

しかし今回使ってみて、その評価だけで終えるのも違うと思った。

「全部作らせるAI」はまだ怪しい。

一方で、

「人間が作っているものを、その場で増幅するAI」は、もうかなり使える。

Google SlidesとNano Banana Proの組み合わせに感じた価値は、むしろこちらだった。