まずは動画を見て欲しい
まずはこれを見て欲しい。
これは、私が先日公開した「ローマ字クイズ」PWAアプリの紹介動画を、Codex と HyperFrames を使って生成したものだ。

驚いたのは、キャプチャ画像も、音声ファイルも、動画素材も一切渡していないのに、
完成度の高い動画が作れてしまったこと。
最初に与えたプロンプトは、たったこれだけだった。
URL:
https://b.aries67.com/tool/rome/
目的:
小学生向け学習アプリ紹介
尺:
45秒
雰囲気:
親しみやすい教育系
見せたい点:
3択UI
スマホ対応
無料
PWA
これだけで、Codex は対象URLを解析し、
- 小学生向け
- 3択学習UI
- スマホ向け
- 学習モード
- PWA対応
- 無料で使える
といったアプリの特徴を読み取り、動画の構成を自動で組み始めた。
さらに面白いのは、こちらが指示していない要素まで拾い始めたことだ。
例えば、「練習モード」のような文言はプロンプトに含めていない。しかし Codex は、実際のHTMLやUI構造を確認しながら、
「このアプリはどういう用途なのか」
「どこを見せるべきか」
を推論し、動画用のコピーやナレーションへ反映していった。
つまり今回の生成は、単なる「テキストから動画」ではない。
Codex が、
- Webサイトを読む
- UI構造を理解する
- 特徴を抽出する
- シーン構成を考える
- ナレーションを作る
- タイムラインを構築する
という、“制作工程そのもの” を組み始めた実験だった。
HyperFramesとは何か ─ “動画編集ソフト”ではない
今回使った HyperFrames は、ぱっと見は「AI動画生成ツール」に見える。
しかし、実際に触ってみると、これは従来の動画編集ソフトとはかなり思想が違う。
AfterEffects や Premiere のような既存の動画編集ソフトは、
- レイヤー
- タイムライン
- キーフレーム
- エフェクト
をGUI上で操作しながら映像を作っていく世界だった。
だが、HyperFrames は違う。
本質は、
HTML/CSS/JavaScript をベースに、
“Webそのものを動画へ変換する”
という思想にある。
実際、生成されたプロジェクトの中身を見ると、
- index.html
- SCRIPT.md
- STORYBOARD.md
- narration.wav
- scene別wav
- capture
- manifest
などが並ぶ。
つまり HyperFrames は、「動画ファイル」を直接作っているのではない。
まず、
- Web構造
- シーン設計
- ナレーション
- タイムライン
- モーション
を“構造化された制作データ”として組み上げ、その最終成果物として MP4 をレンダリングしている。
この感覚は、むしろ Web開発 に近い。
実際、HyperFrames Studio の画面を見た瞬間、かなり驚いた。

タイムラインがあり、Scene が並び、音声波形が並び、プレビューが動く。
しかし、その裏側では HTML が動いている。
つまりこれは、
「動画編集ソフト」
というより、
Web Runtime ベースの映像コンパイラ
に近い。
しかも、そこへ Codex のようなエージェントAIが接続されることで、
- URL解析
- シーン設計
- コピー生成
- TTS生成
- scene分割
- タイムライン調整
- レンダリング
までが、半自律的に進行していく。
ここで、Notebook LM を思い出した。
Notebook LM は、
「知識をインフォグラフィックスと音声にするAI」
だ。
一方、HyperFrames は違う。
Web体験そのものを、
映像へ変換し始めている。
この方向性は、かなり大きな変化だと思う。
HTMLの豊かな表現力を動画にしようという意欲的な試みの結晶が、HyperFrames だ。
内部的にはNotebook LM もそうなのかもしれない。
とはいえ、HyperFrames は、AIが操作することを前提にしている。
StudioのGUI画面を触るのは、あなたではなくCodexだ。
現実は「依存地獄」だった
CodexでHyperFrames を使うのはかんたんだ。
プラグインから選ぶだけ。

……とは言え、実際の作業はそんな綺麗な話では終わらなかった。
むしろ最初に待っていたのは、
依存の嵐
だった。
今回の構成は、
- WSL2 Ubuntu
- Node.js(nvm)
- HyperFrames CLI
- ffmpeg
- Chrome headless
- Python
- TTS
- ONNX Runtime
など、多数のコンポーネントが絡む。
つまり実態としては、
「AI動画生成」
というより、
Linux + Web Runtime + AI Orchestration
だった。
最初にハマったのは、HyperFrames の capture。
URLを解析してスクリーンショットを取得する機能だ。
最初は、
capture completed
と表示されるのに、中身が空。
原因を辿ると、
Chrome headless shell 未導入
だった。
さらに、
libnss3.so が無い
で停止。
結局、
sudo apt install libnss3
で復旧した。
ここで見えてきたのは、HyperFrames が単なる動画生成AIではなく、
Browser Automation
を内部で多用していることだ。
つまり、
- Browser capture
- HTML rendering
- CSS animation
- Snapshot generation
を、本物のChrome headlessで動かしている。
だから WebRuntime が必要になる。
さらに、
- pip が無い
- ensurepip が無い
- PEP668
- kokoro-onnx
- voices-v1.0.bin
など、Python周辺でも次々と詰まった。
この辺りから、だんだん気付き始めた。
これは、
「AIが動画を作っている」
というより、
AIが“制作パイプライン”そのものを構築している
のではないか、と。
実際、Codex は途中から、
- scene分割
- wav分離
- speed調整
- token limit回避
- TTS切り替え
などを、自律的に判断し始めていた。
特に面白かったのは、
長い台本を一括合成
↓
Kokoro の token limit に到達
↓
1文ずつ scene分割
↓
FFmpeg で結合
という流れ。
これ、人間の動画編集者が普通にやるワークフローそのものだ。
しかも、Codex はそれを、
- SCRIPT.md
- STORYBOARD.md
- scene wav
- timeline
といった“中間成果物”を維持しながら進めていた。
単なるブラックボックスではない。
かなりソフトウェア開発的な思想で、動画制作が組み上がっていく。
この辺りは、かなり未来感があった。
一番ハマったのは、日本語TTSだった
今回、最も苦労したのは動画生成ではなかった。
日本語TTSだった。
最初は、HyperFrames が推奨していた Kokoro ONNX をそのまま使った。
お馴染みのあの女性の声だ。
構成としてはかなり先進的で、
- ONNX Runtime
- 軽量モデル
- scene別wav生成
- CLIベース
など、ローカルAI時代を強く意識した作りになっている。
最初は、
「これはローカルで全部完結できるのでは?」
と期待した。
しかし、現実はそう甘くなかった。
まず、Kokoro は長文に弱い。
長いナレーションを一括で渡すと、
token limit exceeded
のような形で停止する。
ところが、ここで Codex が面白い動きを始めた。
最初は単純に台本を短縮していたのだが、それでも制限に引っかかると、
scene分割
↓
sentence分割
↓
wav分離
↓
FFmpeg結合
という工程を、自律的に組み始めた。
つまり、
「長いから失敗した」
で止まるのではなく、
“制作工程を変更して問題回避”
し始めたのだ。
これはかなり驚いた。
しかも scene ごとに wav を分けていた。
つまり、
- scene-01.wav
- scene-02.wav
- scene-03.wav
のような構造になっていた。
これは実際の動画制作現場でもよくやる方法だ。
なぜなら、
- リテイクしやすい
- 秒数調整しやすい
- BGMと合わせやすい
- scene差し替えが容易
だからだ。
つまり Codex は、
“動画編集ワークフロー”
そのものを理解しているように見えた。
ところが、問題はまだ終わらない。
ようやく生成された wav を聞いてみると、
日本語なのに英語っぽく読まれる
のである。
例えば、
「ローマ字の練習、楽しく続けたいなら。」
が、
“ローゥマァジィ…”
のような妙な発音になる。
最初は script 側を疑った。
しかし、script 自体は正常だった。
原因は、
voice/lang 指定
だった。
さらに調べると、
- Kokoro ONNX の version
- voices-v1.0.bin
- 日本語voice
- lang=ja
- jf_alpha
などが複雑に絡み始める。
しかも、環境によって動作が微妙に違う。
最終的に、
「これは実験用途としては面白い。
だが、現時点で実用日本語TTSとしては厳しい」
という結論になった。
そこで、Codex は方針転換を始める。
Kokoro を諦め、
Edge TTS
へ切り替えたのだ。
しかも、scene分割構造は維持したまま。
結果として、
- scene別wav
- 日本語自然発音
- 45秒ちょうど
- MP4レンダ成功
まで到達した。
しかも、実際に聞いてみると、
Edge TTS のほうが、
はるかに自然で聞きやすい。
これはかなり印象的だった。
ローカルAIの理想を追って Kokoro に挑み、
最後はクラウド側の Edge TTS に落ち着く。
この流れは、今のAI時代を象徴している気がする。
Kokoro TTS とEdge TTSで生成した音声の比較
どういう感じかは、以下で確かめて欲しい。
Script:
ローマ字クイズ。小学生向けの三択学習アプリです。
Kokoro TTS で生成したおかしな音声
Edge TTS で生成した正しい音声
「動画を作っている」
というより、
「AIプロデューサーと一緒に制作進行している」ような感覚
感覚になっていた。
特に印象的だったのは、
“長いから失敗”
ではなく、
“では、工程を分割しよう”
へ進んだことだ。
ここに、Agent AI 的な匂いを強く感じた。
つまり Codex は、
「命令を実行するAI」
ではなく、
“完成へ到達するための経路”
を探し始めている。
Token消費は重い ─ ただし初回だけだと思う
今回、Codex の 5時間制限枠を初めてかなり意識した。
結果として、使用量は約30%まで到達した。
普段、
- コーディング
- Markdown整形
- ドキュメント生成
程度では、ここまで消費することはあまり無い。
しかし今回は違った。
なぜなら Codex がやっていたのは、
単なるコード生成
ではなかったからだ。
実際には、
- URL解析
- Browser capture
- Scene設計
- 台本生成
- TTS
- wav分割
- タイムライン調整
- render
- validate
- snapshot
- FFmpeg制御
など、かなり大規模な workflow を動かしていた。
しかも途中で、
- lib不足
- TTS失敗
- token limit
- 発音問題
- PEP668
などに遭遇し、そのたびに workflow を組み替えていく。
つまり今回の消費は、
“制作”
ではなく、
“動画制作環境のブートストラップ”
に近かった。
実際、今回かなり時間を食ったのは、
- WSL2
- Node
- nvm
- ffmpeg
- Chrome headless
- Python
- TTS
- ONNX
- Edge TTS
などの環境整備だった。
逆に言えば、ここを一度通してしまえば、次回以降はかなり軽くなる気がする。
実際、途中からは、
「URLを渡す」
↓
「capture」
↓
「scene生成」
↓
「render」
へ近づいていった。
だから今回の30%消費は、
“初回構築コスト”
として見るべきだろう。
【後日追記】
2本目にけいさんクイズアプリのプロモーション動画を、前回環境を引き継いで作成したら、消費率は83%程度に収まった。これがリアルなToken消費量だろうと思う。
とは言え、動画系が重いのは間違いない。
特に今回のように、
- TTS
- Browser automation
- FFmpeg render
- AI orchestration
まで絡むと、普通のコーディングタスクより遥かに Token を使う。
その意味では、Codex はかなり “Agent AI” 寄りだ。
単にコードを書くだけではない。
- 状況確認
- workflow変更
- scene構築
- render調整
など、制作工程全体へ介入してくる。
だから、この用途で本格的に使うなら、Proプラン前提だと思う。
一方で、
「たまに1本、紹介動画を作る」
程度なら、Plusでも十分現実的だろう。
特に今回感じたのは、
AI動画生成の本当のコストは、
GPUではなく“制作工程”側へ移り始めている
ということだった。
結論 ─ Webサイトが、自分で動画になる時代
今回の実験で、一番印象的だったのはここだ。
最終的に私がやったことは、
URLを渡した
だけに近い。
もちろん、その後には、
- WSL
- ffmpeg
- Chrome
- Python
- TTS
- ONNX
- Edge TTS
など、現実的な調整は大量に入った。
だが、本質的には、
「サイトを読ませた」
だけなのである。
すると Codex は、
- UI構造を確認し
- 小学生向けであることを推論し
- PWAであることを理解し
- sceneを組み
- コピーを書き
- ナレーションを生成し
- timelineを構築し
- MP4をレンダリングした
しかも途中で問題が起きると、
workflowそのものを書き換える
ような動きを見せ始めた。
これはかなり衝撃だった。
従来、
「動画制作」
というのは、
- キャプチャ
- 編集
- 音声
- BGM
- タイムライン
- 書き出し
を人間が手作業で組み立てる世界だった。
しかし今回見えたのは、
Web体験
↓
構造解析
↓
Scene化
↓
映像化
という、別の流れだ。
しかも、その中核にあるのは、
- HTML
- CSS
- Browser Runtime
- FFmpeg
- TTS
といった、極めて Web技術的なスタックだった。
これはもう、
「AI動画編集」
というより、
“Web Runtime が映像制作基盤になり始めている”
と表現したほうが近い気がする。
そして、NotebookLM が
「知識をインフォグラフィックスと音声化」
したように、
HyperFrames は、
「Web体験を映像化」
し始めている。
今回の動画は、まだ45秒の小さな紹介動画に過ぎない。
だが、ここから先、
- LP紹介
- SaaSデモ
- PWA紹介
- WebGL演出
- 自動多言語化
- Shorts生成
などへ繋がっていく未来は、かなり見えている。
URLを渡す。
すると AI が、
- サイトを読む
- 特徴を理解する
- sceneを考える
- 台本を書く
- ナレーションを生成する
- timelineを構築する
- renderする
そして、Webサイトが “自分で動画になる”。
そんな時代が、もう始まりかけているのかもしれない。
あなたも今晩、自社のWebサイトで紹介動画を作らせてみるといい。

